「こういう作品は、どんな言葉より音楽!特にコルトレーンの場合は!!」ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
こういう作品は、どんな言葉より音楽!特にコルトレーンの場合は!!
なんか既視感があるタイトルだと思ってたら、もう4年も前にNetflixで配信してたヤツだった。
結論から言うとワザワザ映画館まで行って観るモノでもなかった。
この手のドキュメンタリーでホント有りがちだが、全編コメントだらけで音楽が少なすぎる。
せっかくスクリーンで、コルトレーンが観られる貴重な機会なのに音楽が始まるたび、直ぐにインタビューのフッテージがインサートされてしまう。
ホントわかってねえ〜なあ
まるでコルトレーンの音楽をBGMに延々と映像チャットでも見せられているような気分だった。
それも殆どありきたりなコメント。
ホント今更ああいうの別にいらんよ。
中には印象に残る良いコメントもあったが、インタビューに関しては当時の現場を知っているミュージシャン(ライブの客だったドアーズのドラマー、ジョン・デンズモアも含む)と、ちょっと合間に家族たちのコメント入れる程度で充分だった(マルサリスも別にいらんよ)
出自が黒人教会だった件や、あの当時の公民権運動に対する反応、そして最初で最後の来日における長崎の件も、とても重要な要素であったと思うが、それ以上に重要だったのは、音楽それ自体、演奏それ自体に決まってる!
今やYouTube全盛で簡単にライブ映像にアクセスできる時代とはいえ、映画館のスクリーン上で、コルトレーンの演奏を体験できる機会となれば、白熱のライブは、どうしたって期待せずにはいられない。
せめて、”My Favourite Things”と”A Love Supreme”くらいはフルで観せて欲しかった。どっちも長いけど、大して面白くもないコメントなど、カットしてしまえば、全体の尺を少し伸ばす程度で済んだはず。
あの寿命を縮めたであろう、来日公演における、殆ど狂気の沙汰とも言えた強行スケジュールは何を意味していたのか?なども取り上げようともせず(まあ長崎の件でマニアは類推できるが、あの蒸し暑い最中での過酷な日程自体を伝えていない)
ドキュメンタリー作品として、何か斬新な新しい切り口など殆ど無かった以上、とにかくフィーチャーすべきだったのはライブ!ライブ演奏!!
あの汗ダクダク涎ダラダラの熱いライブたっぷり観たかったぞ!
それに強い影響を与えたはずのモンクも直ぐにスルーするし、なんといっても、あの”A Love Supreme”のライナーにも書いてあった"spiritual awakening"の件を取り上げないなんて、全くもって本当に有り得ない。
冴えない田舎者だった男が“いかにして”稀代の演奏者&作曲家として覚醒するに至ったのか?を本来なら深く掘り下げるべきなのに、まるでわかってない。
あのカッコいいエリック・ドルフィとの共演なんて完全にスッ飛ばしていたし。
あと、コルトレーン自身がモノローグを語る設定で、デンゼル・ワシントンが声を担当したが、これといって声に特徴が無いため、インタビューの音声とのメリハリが弱く、コルトレーンのモノローグなのか?別の誰かのコメントが始まったのか?直ぐに分かりにくい編集となっていた。とてもではないが、コルトレーン本人の天からの声には聞こえなかった。
あれはフツーにナレーションで「かつてコルトレーンは◯◯◯◯◯と語った」で良かったと思う。
とまあ以上、なんともモヤモヤ中途半端な内容ではあった。
やると決めた以上、コルトレーン同様、完全燃焼しなきゃアカンがな。
演奏シーンの素材自体は素晴らしかったので、なんとも、もったいない事をしたもんだ。