「古き良き、は今面白いと同意ではない」メリー・ポピンズ リターンズ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
古き良き、は今面白いと同意ではない
そもそも64年のオリジナル「メリー・ポピンズ」を観たのも、本作の監督がロブ・マーシャルだったからだ。
「シカゴ」や「SAYURI」のような、情感と外連味にあふれる舞台的な演出を観たいと思ったからだ。
さすがに振り付け師だけあって、点灯人たちのダンスシーンは、彼らしくゴージャスでアクロバティックだった。でも致命的に脚本がつまらないんだよねー。
なにかと比べられるけど、エミリー・ブラントのメリーも可愛いと思うし、歌だって上手い。
ロイヤル・ドルトン・ミュージック・ホールでのダンスも良かったよ。あれも思えば「シカゴ」っぽい振り付けだったな。
でも本当に話がつまらないんだよねー。
細かいところは文句のつけようがないくらいにこだわってるし、ダンス全般素晴らしいんだけど。
前作をリスペクトし過ぎてるのか、現代社会にそぐわない話を繰り返してるのが、本当に観てて辛かった。
子どもが観て大丈夫な内容に、ロブ・マーシャルの持っている魅力が乗せきれてない感じ。
ドロドロした大人の感情の方が、彼の演出と相性が良いんだと思う。
近代家族の幻想が変革期を迎える現代において、その「近代家族」を再生させようとする物語が古臭いのは仕方ないことなのかもしれない。
劇中アニメと実写を融合させた前作へのリスペクトが、わかっちゃいるけど「今更感」なのと同じだ。
ロブ・マーシャル自身は続編に意欲を示してるみたいだけど、彼にはもっとダークなミュージカルとか、サスペンス・ミュージカルとか、違ったジャンルや新しいジャンルのミュージカル映画を撮ってもらいたいなぁ。