劇場公開日 2019年2月15日

「半人前のレビューですが…」半世界 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0半人前のレビューですが…

2019年2月18日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

ちょっと考え事してたら聞き逃してしまいそうな自衛隊の話。海外に赴任したとか、子供が銃で撃ってきたら撃ち返すしかないとか、最もシリアスだったのは海外派兵から帰国した際に起こりがちなPTSDの一種コンバット・ストレスといった話が盛り込まれている。

全体からすればかなり控え目な表現なのですが、これがタイトルの意味に繋がっているという面白さ。更には憲法第九条に自衛隊を認めようという画策がある中、PTSDや自殺者が多いことを公表しない政治家にも憤りを感じてしまう。

「世界」と「世間」という言葉が使い分けられていて、元自衛官を演ずる長谷川博己の言う海外派兵をも含めたグローバルな見識が「世界」と言うが、炭焼き職人を演ずる稲垣吾郎もまた反論せずに自分たちの住むこの田舎だって「世界」だと言う。

伊勢の田舎町に平凡で淡々と生きている人たち。亡き父は継がせたくなかったのに意地で炭焼き職人となった稲垣、普通に父の中古車店で働く渋川清彦、そして突如実家に戻ってきた長谷川のアラフォー同級生3人組。二等辺三角形という伏線も最後には氷解するのですが、正三角形じゃないところもいいし、誰が底辺なのかと答え合わせをする楽しみも残してくれた。

そんな平凡の中にも息子のイジメ問題や、池脇千鶴の内助の功など、いい話が盛り込まれている。

残念なのは竹内郁子の話が笑えなかった点や、長谷川の部下だった早乙女誉くんが全く登場しなかったことだろうか…せめてお母さんの姿があればなぁ…

稲垣吾郎はもちろん良かったし、池脇千鶴も良かった。個人的には石橋蓮司の酔っ払い演技が真に迫っていたと思う(笑)

【追記】(2月21日)読む人によってはネタバレになるかもしれないので読まないでください。

2回目鑑賞してきました。
突如入ってくるカットが凄く意味あるものに思えてきました。
閉じこもった長谷川に襲い掛かるキーンというノイズ。
居眠りした稲垣が見た幻想的な夢(これは2回出てきます)。
半世界を表す半月が大写しになったり、それが大きくなったり。
さらに竹林が風にざわめくカット。
きつねの嫁入りと、サングラスの転校生。
ボクシングでも明とライバル関係になるのかもしれないと予感させてくれる。
こうして全てが半世界に絡んでくる。
ラストシーンの脇にチラッと出てくる、「竹とんぼ」への想いも感じられた。

最初に書いた二等辺三角形は渋川の気持ちの現れだったんですね。
常に正三角形を目指したのに、中学生ながら自分が控えめな気持ちで二人を支えていたという写真。映画そのものも、二人の人生を陰ながら支えていた渋川の位置にも納得しました。

なぜだか2回目のほうが泣けました。
「私も一緒に入る!」の台詞には、恥ずかしながら嗚咽が漏れてしまいました・・・

kossy
しろくろぱんださんのコメント
2022年11月5日

今回、稲垣吾郎さんの窓辺にてを観てこの作品を思い出しました。
私の評価は少し低めでしたが印象に残っている作品です。
kossy さんのレビューを読んで細かなところまで見ていてレビューに感動してしまいました。

しろくろぱんだ
talismanさんのコメント
2021年1月23日

kossyさんのレビュー、すごくいいですー!

talisman
近大さんのコメント
2020年2月10日

国内の年間興行はここ数年洋低邦高ですが、その内訳は、アニメやそれに該当するものばかり。
今年の日本映画の“話題作”も然り。
中には面白い作品もありますが、そのほとんどが…。
一昨年の『万引き家族』や『カメ止め』は本当に異例だったんだなぁ…と思ってしまいます。

日本映画全体もですが、ああいう変化を受け入れる米アカデミー賞を見ちゃうと、日本バカデミーのショボさは…。
これも大問題!

近大
くりさんのコメント
2019年2月21日

こんばんは。
コメントを
丁寧に書かれているので見にいく際の、参考にさせていただいてます!

通夜のシーンは、
くるものがありましたね。

くり