あの日のオルガンのレビュー・感想・評価
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大変なんだね
良かった所 = 当時の疎開は学童疎開でも大変だったのに幼稚園児の疎開は落ち着きもなく他動、集団行動が出来る子は極僅か、親元を離れて夜尿症が何人も 出たりの中で子ども達を守ったのは凄い。 大原櫻子と佐久間由衣のハモりは上手かった。 戸田恵梨香さんは意外と似合っていました、ココリコ田中さんは安定な上手さで頼りにならない園長を上手く演じていました。空襲シーンは迫力があって凄かったかな。子どもたちもリアルだった。 ダメな所= 大原櫻子が戦時中の人間にみえないし衣装が現代っぽい、あとあの歳で幼すぎ悪い意味で。話が点々とし過ぎて感動出来ない、あとココリコ田中は戦争に行ってからどうなったかわからない。保母たちや園児達ののその後をナレーションでも良いから描いて欲しかった。(字幕で交流は続いてると書いてあるならいっそ回想みたいな感じで進めても良かった気がします。健ちゃんは晩年は林家正蔵さんが一人二役で演じれば良いしね)林家正蔵さんは大好きだけど子どもが小さすぎるから息子のたま平さんが演じた方が良かったかな。皆現代口調で戦時中感がなかった。
まるで学芸会!?
タイトルから生き残った児童たちがノスタルジックに当時のエピソードを綴る抒情詩かと思いきや、あの戦時中に保育児童の集団疎開を成し遂げた偉い保母さんがいました。役立たず園長、スタッフは根性なし、子供はおねしょに騒ぎ放題、迫る戦火の中、私は頑張ったんですよと偉人伝的に描いても白けるばかりで引いてしまう。怒りの演技は難しいのは判るが声を裏返らせて罵るのでは人格破綻者にしか見えない。悲惨さの中にもほのぼのとした温かさを求めたいのだが演出不在。映像も子供を追うシーンでは手持ちカメラでブレまくるし途中で極端に彩度を落としたりして不自然、加えてエンディングの主題歌がジャージーなバラードとは無神経にもほどがある。素人集団が作った独りよがり映画、上映期間が短かったわけが判ったような気がした。
子どもにとっての当たり前の日常を守る女性たち
普段気にしない当たり前と思っていることが戦時中は当たり前じゃなくなる。しかし子どもたちにとっては戦時中も自分たちの当たり前の生活の延長線上である。そんな子どもたちの生活を守ろうと奮闘する保母さんたちの生き様は力強い。今でも卒園生と保母さんたちとの交流があることに深い感動を覚えた。
文化的な暮らしが得られない悲惨さ
山田洋次『砂の器(1974 松竹)によると
駅の看板の記載は、「驛川桶」となるはずが、どうであったろう。「桶川駅」なっていませんでしたか。
山田監督の助監督を務めてきた平松監督。良い作品だだなと思った。
群馬の奥地に疎開してきた保母さんと親と別れ別れになってしまった幼き子供たちの交流を優しい目線で描かれている。教師たちは、「文化的なくらし」を常に求め生きている。戸田さんの「いかりの乙女」、最後のさいご思いっきり泣いてしまう場面。自分の考えたことが間違えていなかったという安堵からくるもの。
この映画の題名でもある気持ちを改にオルガンを弾く大原さんの演技が清々しいものであった。題名「オルガン」の意味が際立った。音楽は村松崇継、ラストの歌にも気を緩めない力量。
最後の楓の「火が追いかけてくる。」の独り言。戦争の怖さ、悲惨さを考え直す作品になり得た。キャスティングも良く。素晴らしいものに仕上がっている。
ただ、戸田さんの演技が「既視感ある毅然とした役」と言えばそれまでだが、こんな女優が他に入れば
「コードブルー」かよ。「SPEC」かよと、ついつい思わなかったのだが。
"保育とはなにか"という命題にも迫る戦争映画
第2次世界大戦の日本本土の状況を、女性庶民目線で描いた映画といえば、ロングランヒットを記録したアニメ「この世界の片隅に」(2016)が記憶に新しい。
この映画も、そんな弱者視点の戦争映画。「この世界の片隅に」に共感した人なら、間違いなく泣ける。
個人的には各国の戦争映画を観るにつけ、あえて敗戦国(日本)においてその責任の所在を、"さておく"わけにはいかない。日本人には、"悪いことは水に流す"文化がある。
"水に流す"のは美学でもあるのだが、日本製の戦争ドラマでは、"大変だった"、"悲惨だった"という被害者意識だけが強く、それが他国から反省が足りないと言われる、ゆえんだと思う(謝ったじゃないかと思うのは、日本人だけ)。
しかし、やはり戦争は、いちばん立場の弱い人にしわ寄せがくる。今なおナチスを断罪し続けるドイツ映画においても、紛れもなく国民もその被害者だった事実が描かれる。
本作は、ノンフィクション「あの日のオルガン 疎開保育園物語」(久保つぎこ)を原作とする、"疎開"の話である。
"疎開"といえば、ほぼ"学童疎開"の話である。日本アカデミー賞を受賞した「少年時代」(1990)など、映画やドラマでもよく描かれる。しかし"学童疎開"は、大都市の国民学校初等科(小学生)が対象である。
では、乳幼児などの未就学児はどうなっていたのか。本作は、東京・品川に実在した戸越保育所の保育士たちが幼児を預かり、太平洋戦争の空襲を避けて、自主的に南埼玉の無人寺に集団疎開を実行した史実を描いている。
戦争を認識できない幼児にがまんを強要はできない。泣き出す子供、お腹が減ったという子供、毎朝のようにオネショをしても、替えの寝具や衣服があるわけでもない。もちろん自主疎開なので、食料を差し出す地域住民も少ない。
それでも我が子ではない子供たちを守り、過酷な環境下で、"文化的な保育"を志そうとする保育士たち。
戸田恵梨香がリーダーとなる主人公の保育士長役を演じ、新米保育士役に大原櫻子。ほかの保育士役の女優陣も迫真の演技だ。
大原櫻子は、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(2013)で、天才歌手役として主演デビューした女優・ミュージシャンである。タイトルになっている"オルガン"を弾いて唄う天真爛漫な保育士役は、好キャスティング。
平松恵美子監督は、助監督として参加した山田洋次監督作品で共同脚本にも名を連ねてきた。
印象的なのは、東京大空襲で家族を失ってしまったことを、何も知らない幼児にどう伝えたらいいのか悩む、保育士のエピソード。
"子供たちを守り育てる"、"保育とはなにか"という命題にも迫る歴史的な記録を、見事に再現している。
(2019/3/3/ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/シネスコ)
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