「現代的で大人なテーマな友情」シュガー・ラッシュ オンライン ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
現代的で大人なテーマな友情
インターネットでのあるあるや、可視化されたネットの世界は見てて楽しい。
見知ったキャラがさり気なく出てきて小ネタが見れるのもうれしい。
プリンセスのくだりがとても好きだった。
途中まではポップで楽しいけどまあまあかな…と思ってたら、後半になって二人の友情がテーマになった途端グッと引きこまれた。
ラルフにとってはたった1人の大切な友達でも、ヴァネロペにとってはそうじゃない。
ラルフにとっては自分を変えてくれた唯一の人で、自分にはヴァネロペがいればそれが自分の存在価値なのに、ヴァネロペにとってはラルフに肯定されるだけで満足はできなくて自分の生き方や居場所について外へ意識が向いている。
その序盤の二人の考えの違いが後半大きくズレを産んでいく。
これって仕事に生きがいを感じる人と恋人がいればいい人の価値観の違いみたいなものに似てて。
自分にとって一番なのに相手がいるだけで幸せなのに、相手はそうじゃない。ラルフは自分と同じ気もちが返ってこないなら、同じになるように相手の足を引っ張って同じ場所に降りてきてもらうという一番間違った選択をしてしまう。
これって自分達でもうっかりしてしまう行為だと思うからすごく共感できると思った。
絶対の親友だと思ってても、環境が変われば、新しいものに触れれば、価値観は変わっていく、すると関わり方も変わっていく。
永遠に同じようにいることはできない。その中で、それでも形を変えて、ずっとそばにいなくても相手の幸せを想えなきゃ関係は続けられない。
これすごく現代的だなって思った。
普通なら変わらない友情をテーマにしがちなのに、人によって友情の形や求めるものは違うこと、変わっていく中で新しい関係を作ってく、永遠なんてない中で大切にするにはどうしたらいいかを説いていく。
ラルフが自分を客観視して、「あんなんならたしかに粘着質で気持ち悪いわ」と言うくだりや、自分の分身(本音の欲求、さみしさや好きの気もち)に自分が語りかけて説得するシーンもエンタメとして盛り上がる描写でラルフが成長するシーンが表現されててすごいなぁと思った。
ラストの二人が階段で別れてずっと笑顔で手を降り続けるシーンはずるいって〜〜泣いちゃうよ。
前に進む側より見送る側の方が圧倒的にさみしいよね。でもそれでも自分は相手を想う手段を選べる人間でありたいよね。
友情の形は一種類でも、永遠でもない。
形を変えながら大事にできるよう、自分も変わっていかなきゃいけないんだ。
ゆっこさん、はじめまして。レビューに共感いただき、ありがとうございます。
ゆっこさんのレビューも読ませていただきましたが、共感する部分がとても多かったです。
特に「普通なら変わらない友情をテーマにしがちなのに、人によって友情の形や求めるものは違うこと、変わっていく中で新しい関係を作っていく、永遠なんてない中で大切にするにはどうしたらいいかを説いていく。」という部分の記述が、本作の核心にあたる点を的確に文章化されていて、素晴らしいなと思いました。
友情を「いつまでも変わらないもの」ではなく、年月の経過や周りの環境の変化とともに「変わりゆくもの」として捉えるのは、すごくしんどいですけど、現実的で、現代的ですよね。
このような友情の形を提示したことが、本作の中で最も(ディズニーアニメとして)革新的な部分なのではないかなと思っています。