「永く続く友情はいつもそばにいないこと」シュガー・ラッシュ オンライン 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
永く続く友情はいつもそばにいないこと
ゲームのキャラが実は意志を持って生きているという設定に無理があるのは前作の時点でも分かっていたし、その辺はもちろん大目に見てファンタジーとして楽しむつもりではいたのだけれど、その世界がゲームセンターの内側からインターネットの世界(私はてっきりネットゲームの世界が舞台になるかと思ったら、本当にインターネットそのものが舞台になっていて驚いた)へと飛び出すと、その設定の無理が各所に出てきているのが否めないところ。それらを強引に別の設定で補っているような感じて、この映画の世界観がいよいよ継ぎ接ぎだらけになりはじめている。そもそも実体のないものを擬人化し続けるのは無茶の多い難題だし、正直これ以上のシリーズ化はやめておいた方がいいのでは?と私は勝手に危惧してしまった。
そういったことを一生懸命大目に見て見逃しながら映画を観ていたが、私は今回の作品では、そのジョークというか笑いにおいても、些か不満が残った。歴代のプリンセスが出てきてセルフパロディのようなシーンや台詞を描いたり、インターネットにおける「あるある」をジョークにして取り上げたりと言った部分がこの映画では是とされて取り上げられ評価されている部分でもあると思うのだけれど、個人的にはディズニーもなんだか浅はかな手を使ったなと言う感じがしてならない。ディズニーはたまにこういうメタ的なジョークを使ってくることがあって、それが最高に面白くなることもあるのだけれど、今回に関してはそれらがことごとく小手先のギャグに見えてしまって全くツボに入らなかった。なんか、ズルい笑いの取り方だなと思って。
一方で、この映画の絵の綺麗さには本当に感嘆した。特に「スローターレース」のシャンクなんて実写と見紛うほどの精密な絵。髪のなびきから来ている服の皺から、話をするときの体の動かし方まで全てが精密。せいぜい顔が「ディズニー顔」なくらいで、本当に綺麗な絵で描かれたイケメンな美女にずっと見惚れてしまっていた。
いろいろ首を傾げながら観ていた部分もあったけれど、ラストではぐっとハートを掴まれたのも事実だった。今までと同じでいたいラルフと、変わっていきたいヴァネロペが見出す友情の回答に、私は大いに納得し感動を覚えた。二人は友情を永く続けるために「離れる」という決断をする。そばにいるだけが友情ではないと答えを出したこの映画を素敵だなと思ったし、実際その通りだと思う。お互いの姿が見えなくなる最後の瞬間まで手を振り合う二人を観ながら、結局私はこの映画を好きになってしまった。
細かい設定に粗は目立つものの、物語が描き出した大きな根幹となるテーマに曇りはなかった。