劇場公開日 2019年6月21日

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「ソフィ・ターナーの魅力を引き出せていない」X-MEN:ダーク・フェニックス うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ソフィ・ターナーの魅力を引き出せていない

2021年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今回、時間の都合で日本語吹き替え版を鑑賞。特に違和感のあるキャスティングばなかったように感じた。マイケル・ファスベンダーを『エレメンタリー』でホームズ役を演じている三木眞一郎さんが担当しておられ、すぐ分かったけど、かなり印象を変えて吹き替えている。

さて、肝心の内容だが、残念ながら満足度が高いとは言えない。今回は豪華なレギュラーメンバーに対峙する悪役としてジェシカ・チャスティンを起用したことで、見る前にはずいぶん期待値が上がってしまった。その割に、期待を超えて内容が充実していたとは言いがたい。

特に、ミュータントの異能力の描き方が新鮮味に欠ける。相変わらずセレブロのビジュアルは初期設定から進化してないし、ミスティークに至っては見た目が青い以外にこれと言って活躍しない。テレ・キネシスの描き方も相変わらず顔をしかめながら手をかざすのみで前時代的。ビジュアルの進歩は、一切感じなかった。

となれば重要なのがストーリーとキャラクターの魅力だろう。ところがこれもまた平均的で、しかも複雑に入り組んでいる。

シンプルな対立軸を描き、魅力的な悪役を作り出せばアクション映画は80%は成功するだろうと思う。感情を揺さぶる名演技があれば何度でも見たくなるし、今回も実力派の俳優が名を連ねているというのに、うまく機能していない一番の理由は、ジーン役でフィーチャーされたソフィー・ターナーにある。

今までは、何らかの形でヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが華を添えていたが、今回跡形もない。ま、シリーズから卒業してしまったので仕方ないとは言え、ジーンの内面の苦悩を見せられても、私の感情は揺さぶられなかった。ウルヴァリンの穴はソフィーでは埋まらなかった。別の俳優さんでもいいので、爪の先ぐらいは出して欲しかったところだ。

それもこれも、多様性を重んじる風潮におもねって、女性を主役に無理矢理ストーリーを展開させたことに敗因があると思う。ミスティークのセリフに、X-メンじゃなくてX-ウィメンにすれば?という皮肉があったが、それも多様性を意識したものだろう。白人男性が主役じゃなくても面白ければ何だっていい。

かたや『キャプテン・マーベル』では、女性を主役に配しておきながら、自分探しを主眼にストーリーを展開したので彼女が何者なのか?を描けばそれで良かった。映画もヒットしたし、強すぎて敵がいない事をクリアすれば続編もイケるだろう。

ダークフェニックスは、内面の葛藤と、魂の浄化がテーマになっており、映画の着地点がボヤけてしまっている。ダークサイドみたいな抽象的な概念を持ち出されても、映画の中で概念を殴り倒すこともできない。カタルシスを感じることが出来ない構成になってしまった。

不満点は他にもある。
ジェニファー・ローレンスの影がずいぶん薄い。それが彼女の実力だと言ってしまえばそれまでか。悪役のジェシカ・チャスティンは、この上ない不気味さで映画を支配していたのに、果たして何の目的でジーンを狙っていたのか最後までよく分からなかった。

今回から、スタン・リーのカメオ出演も無くなったようだ。とにかく、これで最後という触れ込みのX-メン。マーベルスタジオが打ち出してくるリブートに微かな期待をつないで待つことにしよう。

2019.6.24

うそつきカモメ