万引き家族のレビュー・感想・評価
全928件中、681~700件目を表示
ある夏の日々
夏の縁側で父ちゃんと母ちゃんと子供たち、ばあちゃんが花火見物に興じる。昔の日本の家族にはあった夏の一日。ところが彼らが見上げる夜空に花火は見えない。彼らの家はそびえ立つ巨大マンションの谷間にあるから。彼らが楽しそうに夜空を見上げる様を俯瞰で捉えたこのシーンが素晴らしい。良い映画には象徴的なシーンが必ずある。観客はそれを忘れない。
夏のシークエンスは他にもある。電車に乗って皆んなで海水浴。これも昔の日本の家族にあった夏の一日だろう。それから兄妹が蝉の抜け殻を取りに行って夕立に遭うところ。ずぶ濡れで家に帰ったら、父ちゃんと母ちゃんも濡れていた…
この夏の日々が彼ら家族にとっても観客にとっても宝石のように見える。
物語は冬から始まる。最初はこの奇妙な家族にイライラさせられる。皆んなグータラで家は汚い。汁飛ばしてメシ食うなよ、ばあちゃん。それでもスクリーンから目が離せない。俳優陣の演技の深さ、濃厚さに圧倒されるから。是枝監督はこのキャスト、家族に全幅の信頼を置いている。カメラは彼らを追うだけ。そして観客はこの家族を愛おしく思うようになる。
彼らにとっても観客にとっても幸福な夏の海岸でばあちゃんがボソッと云う。こんなのは長く続かないよ、と。実際ばあちゃんはその後死んでしまう。そしてこの家族は崩壊していく。やがて物語は秋から冬へ。
彼らは本当の家族でなかった。映画はいちばん下の娘だけが血縁ではないと知らせるだけで、父ちゃんも母ちゃんもばあちゃんも皆んな家族だと思わせて進行する。やがて彼ら各々の素性が明らかになっていく。
生きる術を多くは持たず、社会の隅に追いやられた家族の物語。生きるためには犯罪にすら手を出す。私が今年の傑作と思う「フロリダ・プロジェクト」も同じような境遇の母娘を描いていた。彼女たちは本当の母娘だったが。日本とアメリカで同じような傑作が生まれたのは偶然ではないだろう。タイトルから万引きをファミリービジネスにしているひと達の映画と思っている方も多いと思うが、そういう映画ではない。
リリー・フランキーの父ちゃんが、万引き以外子供たちに教えられる事が何もないと云うシーン、安藤サクラの母ちゃんがウチらじゃダメなんだよと子供たちを手放す事を告げるシーン。ここで涙腺が緩んでしまった。父ちゃんと息子の別れのシーンでは涙腺決壊。泣かせる映画じゃないんだが。あの父ちゃんと母ちゃんがいなくなってあの子たちはどうなるんだろう。
リリー・フランキーの父ちゃんの憎めないクズっぷり。安藤サクラの母ちゃんの母性、菩薩にすら見える。そしてあの子供たち。忘れがたい映画だ。
是枝風味
平日朝イチ上映の客席は中高年ばかり。
先輩に対して申し訳ないけど、今回も上映中に携帯を見る、メールの着信が鳴る、おしゃべりする、食べ物を音を立てて食べるというのは、決まって中高年のお客なのだ。
もちろんごくごく一部の人なんだけど、本当に腹立たしかった。
まあ、いいでしょう。
物語は比較的淡々と進む。
大袈裟な演出は皆無。
それでも深くメッセージを我々の胸に刻みつけて、驚くほどサラッと終わっていく。
世の中で皆が普通に持っていると思われているものさえ、悪事に手を染めなければ手に入れられない人々がいる。
弱い者同士、身を寄せ合わなければ生きていけない人々がいる。
そうして手に入れたものも、決して永遠ではない。
全てはかりそめである事を皆感じている。
それでもそこには確実に「居場所」があった。
建物に阻まれて見えない花火を全員で見上げる姿のなんと幸せそうなことか。
正しく生きるってどういう事だろう。
家族ってなんだろう。
あの不協和音の様な音楽もあいまって、目の前に展開されているものが正しいのかどうかさえ、分からなくなってしまう。
安藤サクラの圧倒的な演技。
若手人気女優でありながら、松岡茉優の思い切った役どころも素晴らしい。
子供達の演技もすごい。
一部、批判的なツイートとかしてる奴らがいるが、おそらく映画を見てないか、まったく物語を読み取る力のない人なんだろうなと納得した。
松浦慎一郎さん、凄い映画に出たんだね!
映画と現実の絆なのかも
この劇中の家族は、もちろん架空ではあるが一つ一つの要素が実際の事件を反映しているので、まるで現実の場面を覗いているようだった。
身につまされてつらい場面もあったが、目をそらす訳にいかない力がこの映画にはあった。
盗みはする、不正受給はする、しかも血のつながりも無い、とんでもないこの“家族”の元に親に虐待され逃げて来た女の子がやってくる。
厄介な事になったと最初は帰そうとするが、結局女の子は住み着く。この事が引き金となって、やがて家族は崩壊することになる。
終盤、高良健吾扮する捜査員(検事?)が女の子に「君たちの絆は本物じゃない」というようなことを言っていた。
(本当か?)と思った。絆がつながりという意味なら、太い細いはあるかも知れないが本物、偽物はないだろう。「本当の家族の絆が本物だ」というなら、実の親に虐待されたこの女の子をこの偽装家族は迷惑に思いながらも決して追い出さなかった。そして手を上げることもなかった。弱い者がさらに弱い者を叩く構図が、この貧しい家族には不思議とない。
リリー・フランキー扮する父は、取り調べで「なぜ子どもに万引きをやらせていたか?」の問いに「他に教えられるものが何もないんです…」と答えた。
(そうか、彼は父になりたかったんだ!)自分の唯一の技術を教えることで彼は父になった(気がした)のだ。それが端から見ればいかに愚かしく見えようとも彼は父になったんだ。
エンディングで男の子が乗るバスを名前を呼びながら追いかける偽父親。ちょっと見はベタに見えるこの場面が、深く切ない場面として胸に迫った。リリー・フランキーは素晴らしい。
結局親の元に戻った女の子は、また母娘とも虐待を受ける日々に。
母の顔の傷を案じて手をやって、母にキレられ「ごめんなさいは!?」と強要されるが、女の子は決して謝らない。昔はきっとすぐ謝ったのだろう。あの家族と生活したことで彼女も成長したのだろう。
アパートの廊下で一人遊ぶ女の子で唐突に終わるラストも映画的な大団円などにせずよかった。この映画は現実と続いている。
細野晴臣の音楽は、ドップラー効果を模したような不思議な音楽だったが、とてもこの映画に合っていた。
様々な音源(人)がやって来て、つかの間協和して、またそれぞれ遠ざかって行く。それがこの映画を体現しているように感じた。
つかの間の協和(特に海水浴のシーン)の何と美しく柔らかいことか。
観た後、時間が経つにつれどんどん気持ちが溢れ出す映画だった。
雰囲気映画
こうしたことが…
万引き家族 リアリズム映画の傑作
とてもよかった
海外映画賞の評価基準とは?
漢字の読めない外国人に意味がわかったのだろうか?
少年が絶対の自信と誇りを持っている万引きの技術を見破った柄本明、おそらく柄本明はずっと前から知っていたのであろう、その商店が閉店、閉まったシャッターには「忌中」の文字、「忌中」の文字が読めない少年は自分が万引きしまくったせいで商店は潰れたと思い、話が次のステージに進む。
もし「忌中」が読めたら、柄本明が亡くなったが故に商店は潰れた、また家族に死んじゃったんだから仕方ない、私たちのせいではないと言われたかもしれない。
字幕になんと出すのだろう?
「葬式」的なニュアンスで人が死んでいることを伝えたら、少年の心の変化の説明が、父ちゃんの発言の矛盾への疑問しかなく、自責の念からであると伝わらないのではないだろうか?
海外の映画賞ってあんまあてにならないと思った
本当の家族の絆を考えさせられる作品
是枝監督作品の素晴らしい集大成。
この終わり方がカンヌではうけるのだな
文句無し
家族とは何か、正しいとは何か。
凛ちゃんが辛い…一度も本当には幸せそうに見えなかった。
まだ手探りで「あなたは生まれてきて良かったんだよ」のメッセージを貰いたくて必死になってる最中だったのに。
祥太は悲しい。愛のようなものに慣れれば慣れるほど、善悪に冷静になっていく成長する彼が自らの手で壊さなくてはならなかったものが、悲しい。
池脇の刑事役が放つ不妊に対する台詞が私には厳しかった。誘拐はしないまでも、虐待する親から貰いたくなる気持ちには共感。
安藤サクラ、樹木希林をはじめ、子役も全員素晴らしい演技でした。
温かく、優しく、でも間違いが悲しい映画でした。
テーマが広くて、自分自身では回収しきれなかったからきっと観終わった...
テーマが広くて、自分自身では回収しきれなかったからきっと観終わった後にモヤモヤするんだと思う
倫理とか、愛とか、嘘とか、現実とか
こうした風刺を目の当たりにして、自分なりに受け止めて、どう考えれるかが是枝監督の作品の真髄かなって思う
産みたくて産んだんじゃないと、産まれたくて産まれたわけじゃない子供に言う大人
他人だけど、むしろ他人だからこそ愛を教えることのできる大人、でもその愛ですらも、どこから来たどういった形の愛なのかはっきりしない
嘘を隠して生活する家族、嘘があるから愛することのできた家族
愛ってなんだ、嘘ってなんだ
ただ、見たくないもの聞きたくないものを、常識とか当たり前、倫理観という概念で覆い隠す、それが現実なら、アウトローな場所で暮らす人たちの居場所はないんだろうな、それが正しくても
全928件中、681~700件目を表示