万引き家族のレビュー・感想・評価
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「三度目の殺人」が恋しい。
2018年のカンヌ映画祭パルムドール受賞、さらには樹木希林死去という、いろいろな要因があって、本作を素直に観られない自分がいた。
是枝裕和監督が描いてきた家族の肖像は「誰も知らない」でひとつの頂点を見た気がしている。それ以降の「花よりもなほ」以外の作品は同工異曲ではないか。
「三度目の殺人」で新境地を見せたのに、と忸怩たる思いをいだいてもいる。
カンヌで、ケイト・ブランシェットをはじめとする審査員たちは、本作のどこが引っかかったのだろうか。日本で是枝裕和作品に親しんでいる者からしたら、本作は格別なものだったのか。
疑問ばかりが浮かんでくる。
池脇千鶴、高良健吾の圧倒的な違和感は映画にスパイスを利かせていてよかった。
是枝裕和の次作はカトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュ主演という。是枝裕和はどこへ行ってしまうのだろうか。
捨てた絆で紡いだ絆
かれこれ4か月前に鑑賞し、今更のレビューになってしまったけれどどうかひとつ。
単なる“感動作”とは決して呼べない、深くて重い映画だった。
レビュー内容もかなり長め重めなので、読みたくない人は読み飛ばしてください。
様々な要素が絡む映画なのでどこから書いたものかと途方に暮れたが――
まずは映画レビューとしてシンプルに、各キャラクターについて綴ろうと思う。
…
安藤サクラ演じる〝お母さん”・信代。
どれだけ優しくても、最後まで〝お母さん”と呼んでもらえなかった彼女。
「何なんだろうね」と自問するように何度も呟き続ける場面は胸が苦しかった。
本当の親以上に親身になってくれる人がいても、
心のどこかで血の絆を求めてしまうのは本能なのだろうか。
愛してくれない親でも、顔すら知らない親でも、初めの初めは自分を
そのお腹の中でしっかり包んで守ってくれていたはずで、その頃の
温かさと安らぎをどうしても人は忘れられないのかもしれない。
決して〝お母さん”にはなれないと悟った彼女が祥太に向けた、
明るいけれどどこか他人行儀な笑顔が悲しかった。
リリー・フランキー演じる〝お父さん”・治。
彼は一家の長と呼ぶにはずいぶんと情けないし、
そもそも子どもに万引きを教える時点でアウトだし、
自分可愛さに子どもを見捨てて逃げ出そうとしたりもする。
それでも憎めないのは、ふつうなら躊躇してしまうような時でも、
赤の他人に救いの手を差し伸べることができる人だからである。
誰よりも優しいけど、その優しさの責任をとれない弱い人。
城桧吏くん演じる祥太と、佐々木みゆちゃん演じるリン。
2人の自然な演技が素晴らしい。(是枝監督作品の子役の演技には毎度舌を巻く)
特に、妹ができたのをきっかけに自分たちの“稼業”に疑問を抱き始める祥太。
自分のせいで駄菓子屋が潰れてしまったのではと怯える場面をはじめ、
彼の迷いや戸惑いがしっかり表情から伝わってきた。
松岡茉優演じる亜紀。
彼女と〝4番さん”との関係が寓話的過ぎると感じてしまったのが
自分の中での本作における一番の不満点ではあるのだが、
家族の中でも大人びて見えた亜紀が、幼児帰りしたような声で冷たくなった祖母を
揺らす場面は未だに忘れ難い。泣き叫ぶよりもずっと彼女の悲しみが伝わってきた。
ああいった仕事をしていた彼女にとって、祖母の隣は、
無邪気な子どもに戻れる大切な場所だったんだと思う。
祖母を演じた樹木希林。
いつもおどけているように見えたり、嘘を並べて小銭を稼いだりするけれど、
「あたしはあんたを選んだんだよぉ」と、時々冗談のように本音のようなことを呟く。
海辺で“家族”を眺める彼女の、あの満ち足りたような表情――。
…
主人公たちはみな、家族や世間から“捨てられた”、
あるいはそう感じて生きてきた人々だった。
人間誰しも親は選べないし、育つ環境も、才能も、性格も選べない。
そうして世の中との折り合いがつかず爪弾きにされたとしても、
人はどうにか生きようとする。時にはモラルをかなぐり捨ててでも。
無論、万引きで店を潰されたり、置引きで大事な金を失ったりして人生を
狂わされる人もいるわけなので、そういった犯罪は断じて肯定できない。
だが肯定できないことと、それが現実に存在することは別だ。
捨てられたものでも生きていかねばならない。
信代が吐き捨てるように語った言葉。
「拾ったんです。捨てた人ってのは他にいるんじゃないですか?」
…
彼女たちがリンや祥太や亜紀を“拾った”のは何故だったのだろう。
映画の刑事が言う通り、お金の為というのも理由だったと思う。
だけど、それが一番の理由では無かったとも思う。
それはきっと、ただただ単純に、
ひとりぼっちでいるその子が可哀想に思えたから。
そして一緒なら、自分もひとりぼっちでいなくて済むから。
捨てられたものを拾い集めて、拙い手で繋ぎ合わせてできたのは、
不格好で脆いし、所詮は偽物だけれども、
ずっと夢見ていた、温かい家族。
…
映画を観たほんの数日後だったと記憶しているが、
親から虐待を受けて亡くなった5歳の少女のニュースを聞いた。
本作の最後のシーンが脳裏に蘇ったのは言うまでもない。
どんなにむごい仕打ちを受けようと、幼い子にとって親は親でしかない。
助けも逃げ道もなく、乞う必要も無い許しを乞い続けた彼女を思うと涙が出る。
政府の偉い人たちが言うには、景気は上昇傾向なんだそうだが、どうなんだろうか。
物質的にも、精神的にも、この国はどんどん貧しい方向に向かって行っている気がする。
貧しいから心が荒むのか、心が荒むから貧しいのか。鶏が先か卵が先かは分からないが、
ただ分かるのは、怒ったり苛立ったりするのは物凄く疲れる。他人も、自分も。
みんなで怒っているよりは、みんなで笑っているほうが良い。それなら、
せめてもう少しだけ、自分以外の人に優しくできる自分になれないものか。
夢見た家族のようにとまではいかなくても、せめてもう少しだけ。
<2018.06.02鑑賞>
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余談:
樹木希林が亡くなった。
本作はこれまでの是枝監督作品以上にたくさんの方が
鑑賞・レビューされていたし、考察も随分為されていたと思うので、
もう別に自分はレビューを書かなくてもいいかな、と思っていた。
けれど、彼女の訃報を聞いて気が変わった。きちんと記録を残さねばと。
どの作品でも、年老いた小さなあなたが映像の中に佇むだけで、
どうして映画に生命力が漲るのだろうと、いつも不思議に思っていた。
『海よりもまだ深く』で、階段の上から手を振り微笑むあなたを覚えている。
『わが母の記』で、暗闇から真っ直ぐこちらを見つめるあなたを覚えている。
たとえ亡くなっても俳優は映画の中で生き続ける、だなんて
気休めを口にしてみても、おどけたような、達観したような、
あの飄々とした言葉の数々があなたの口からもう紡がれない
というのは、とてもとても寂しいです。
長い間お疲れ様でした。ありがとう。ゆっくりお休みください。
家族とは
血が繋がっていることだけが家族なのか。家族とは何かを考えさせられた。
一家一人ひとりが抱えた事情が重たく深刻な内容で表現しがたい気持ちになる。
実感が湧かないし身近にはないことだから難しい問題だけど、実際こういう生活をしている人がいる現実は受けとめなければいけないと思った。
私と同い年くらいの女の子が自分の体を売りにしてお金を稼いだり、小さい子供が大人から万引きのやり方を教わったり、”こうしなければ生きていけない”というのを目の当たりにした。
「万引きはいけない」、「夜の仕事は世間体からして良くない」と思っていたが、そう思えたのは自分が幸せだからで、他人事に考えていたのに気づいた。
終わり方がハッピーエンドとは言えない感じで、バラバラになった一家それぞれの今後の行方が気になる。子供たちが笑って過ごせる日は来るのか、大人たちは罪と過去を背負って前に進めるのか心配だ。結末がはっきりしないだけに、なんともいえない感情で、後味は微妙。
映画ですので、最高でした。
少し恥ずかしい程のみっともない大人と、拾われた子供達のお話。
常識的には完全アウトな家族。
子供が万引きするシーンは胸が痛む。
以上は現実的な意見。
ただし、映画ですので。
二時間緊張感もあり、何より役者さんの演技が素晴らしかった。子役も生き生きと子供らしくそこに居て、素晴らしかった。
特に安藤サクラさんは凄い。
松岡茉優ちゃんも体当たり演技で一皮剥けた感じがした。
監督の意図がしっかりと感じられる映画が好きなので、私はとても好きな映画です。
あの家族が、今も何処かで恥ずかしいほどたくましく存在している様な気がしてならない。
その後をあれこれと想像してしまいます。
いろいろ考えさせられました
こんなギリギリの生活をしている家庭もあるんだ…と思うと、お金を払って映画館で映画を観ている自分は恵まれているんだなと感じました。
犯罪はもちろんいけないことだけど、同情というか、とても複雑な気持ちになりました…
演技もみなさんすごくよかったです
もし自分で子供を産んだら、もう一度観たいです
家族を失った男の物語
この映画は、優しいだけで父親としての資格はあるのか?という思考実験なのかもしれない。
そして、その答えとして、優しいだけの男は家族を失った。
以下激しくネタバレ
この映画は、今の日本にありそうもない不思議な家庭が舞台になっている。開始5分で、松岡茉優演じる女性のような聡明そうでいくらでも金の稼げそうな女性がこんな家族の一員に留まって、さらに何もしていないのはおかしい、と思ったが、開始20分での展開が腑に落ちると同時にショックを受けてしまった。この映画は、そんななさそうであるリアリティがしみ込んでいるような映画だ。
男は、社会的には最底辺ともいえるような存在だ。
仕事に対しては、放棄しない最低限の責任感はあるが情熱も何もないし、題名の通り、万引きを子供に教え込んでいるような倫理観のゆがんだ人間だ。
しかし、拾ってきた子供に対する優しさ・愛情は本当に見える。
わが子を虐待するような子供の元の両親とは対照的に描かれているが、男は極めて貧しい環境にあるにもかかわらず子供たちを飢えさせるようなことはしないし、可愛い服を着せ、拙い手品で子供たちを楽しませようとするようなシーンも印象的に描かれている。
ではなぜ男は家族を失ってしまったのか。
男の生き方が、社会の標準的な生き方と乖離してしまったため、
育つにつれて自我が確立してきた少年と相容れないものが生じてきたということもあるだろう。
しかし、少年は男に万引きをやめさせようと思っても、家族の一員でなくなろうとはしなかったのだと思う。
少年が最終的に彼をあきらめてしまったのは、男が、入院した彼を簡単に見捨てて逃げてしまったことだ。
男にとってみれば、逮捕されるかもしれない自分より、警察と病院のお世話になっていたほうがいいという気持ちもあったと思うが、
あそこで少年を見捨てたことが、拠り所のある家というものを家族が信じることができなくなり、家庭が崩壊する最終的な契機となってしまった。
優しいだけでは家庭は維持できなかった、のだ。
社会で生き抜く力、我慢する心…そういった自己犠牲のようなものが必要なのではないかと、
この思考実験は結論付けているような気がしてしまう。
最終的にバラバラになった家族の印象が強烈であればあるほど、
家族で海水浴に行った幸せな思い出が、より幸せに感じられてしまう。
色々問いが残る、考えさせる良作
最後のシーンで女の子は何を見ていたのか、男の子はバスに乗って何処へ行ったのかなどなど、問いが残る。単純に言えば、「血縁より人情のつながり」がテーマかと思えるが、色々なメッセージを込めているのだろう。
是枝監督が問う善悪の彼岸…安藤サクラが!
安藤サクラの存在感がすごい。善悪の彼岸を問う今作で真実の語り部となった。彼女こそが善だとさえ思ってしまう。ぜひ女優賞を総ナメにして欲しい。
邦画のベストワン候補に一番乗りだ。
凛ちゃんが最後に見たものは?
パルムドール受賞、おめでとう 🎊
是枝監督が、日蔭に寄り添う血の繋がりのない家族をテーマにした新たな挑戦。痛く、切ない物語でした。
格差社会や児童虐待の問題が根底に流れているだけに、カンヌでは、日本のこうした社会問題がどのように映ったのかな…❓
でも、安藤サクラが凛ちゃんを、ぎゅーと抱きしめる場面こそが、世界共通の愛の証なのかもしれませんね。
子役の2人をはじめ、リリーさん、安藤さん、希林さん、演技と思えない、素の表情は素晴らしかった。松岡さんも、ひと皮剥けました。
最後に凛ちゃんが、覗いた先には何が見えたのかな…?
社会問題詰め込みすぎ問題
今世間をにぎわせてる社会問題を詰め込んだだけ
少年だけがこの作品の良心
それ以外は全員社会のはみ出し者
性描写があるため家族というタイトルがついているが家族と見に行くと気まずくなるので気を付けて
キャスティングが神
生まれ変わったら安藤サクラになりたい。物語の終わり方、大々的でなくて逆にハッとさせられた。子役たちが神。池松壮亮の贅沢使い。あの「家族」の空気感。生活感。なんなんだ。松岡茉優もよかった。樹木希林のような往年になりたい。それでも生活は続いていく。
キャスティングが完璧!
この家族は、もうありえんめちゃくちゃな生活してる家族で、家汚くて、血の繋がりもなくて心配事は山盛りなんだけど、なんだろぅ、あったかい家族で… 子供たちも可愛くて…
おばあちゃんの年金を頼りに居候し、ロクな収入もない、まぁだらしない大人たちが悪いんですが、それでも、なんか愛がいっぱいで。
あの女の子を元の家庭に戻して大丈夫なのか?と心配で…
色々考えさせられました。
キャスティングは完璧。中でもとにかく安藤サクラさんが上手かった!母オーラでてた〜
リリーさんも手堅いし、樹木希林さんの柔らかな演技も素晴らしいし、子役の子も上手かったですね。特に城くん、これからが楽しみです。
この是枝(これえだ)監督の作品には「そして父になる」で泣かされて。「潮街diary』も観ましたが、あえて家族のコアな部分にまっすぐに触れるテーマが得意ですね。どれも見応えありますね。
重過ぎて消化し切れない
もっと気軽に感動できる映画かと思ったが、なにやらメッセージが込められており、しかも重たくて…メッセージも読み取れない。
普段から考えごとしがちな自分にとっては、考えごとが増えそうで思いを馳せるのも面倒くさい。
明るい映画。映画は、こうでなくちゃ!
感想は最高です。
是枝作品は今回が3作目という是枝弱者ですが…。
「誰も知らない」で柳楽優弥君の名演技を引き出した是枝監督は、今回も最高の子役使いでしたね。
祥太役の城カイリくん、リン役の佐々木みゆちゃん、最高です。
ラストの安藤サクラの泣きの演技。
ダメ男、適当男を演じさせたら右に出るものなしのリリー・フランキー。
食べ方が凄い樹木希林。
松岡茉優は、「桐島部活…」の時も絶妙の嫌な奴を演じきりましたが、今回もいい子なんだけど褒めれない子、でも、可哀想、という微妙なキャラクターを演じてましたね。
リンに「私も名前が2つあるの。」は、「お前、その話五才の子にする??」とかね。
ファンになりました。
貧困問題、社会保障問題を取りあげて、「こんな恥ずかしい日本の姿を海外に見せるな!」だの、「文化庁から助成金を受けて日本批判をしている。」とか叩いてる人がいるみたいですね。
まず、是枝監督は元々テレビのドキュメンタリー番組を作られていた方だそうで、その時から一貫してテーマは「貧困・社会保障問題」だったそうです。
そして、日本の恥ずかしい姿を見せるなって、事実を隠して良く見せる事を日本がやってしまっては、北の方の国みたいになっちゃいます。
映画や音楽と言った芸術が政治批判しなくなると、つまらないし。(今作品に、その意図があるかは、さておき)
この映画お涙頂戴の感動映画ではないです。
割と笑えたり、明るかったり、幸せを感じるシーンの多いので、それがまた不思議な感じ。
絶対観るべき映画です。
リアル
貧困の描き方もリアルではあるのですが(カップラーメンなど、その場しのぎのような炭水化物が増えていく)、あの世界に生きている、登場人物の空気感が非常にリアルだった。
演者の人々の実力が際立つ一本。
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