劇場公開日 2018年6月8日

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「こんな事いつまでも 長くは続かない、いい加減明日の事 考えた方がいい。 社会問題に深く切り込んだ姿勢には賛同するが、いかんせんつまんねぇ…😅」万引き家族 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5こんな事いつまでも 長くは続かない、いい加減明日の事 考えた方がいい。 社会問題に深く切り込んだ姿勢には賛同するが、いかんせんつまんねぇ…😅

2023年5月6日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

万引きで生計を立てる「一家」の姿を通じ、貧困や家族の在り方についてを描き出すヒューマン・ドラマ。

監督/脚本/編集は『そして父になる』『海街diary』の、巨匠・是枝裕和。

万引きを繰り返す「家長」、柴田治を演じるのは『海街diary』『バケモノの子』のリリー・フランキー。
治の「妻」、信代を演じるのは『百円の恋』『DESTINY 鎌倉ものがたり』の安藤サクラ。
信代の「妹」、亜紀を演じるのは『悪の教典』『ちはやふる』シリーズの松岡茉優。
亜紀の勤務する風俗店の常連、4番さんを演じるのは『横道世之介』『セトウツミ』の池松壮亮。
柴田家が保護する少女・ゆりの父親、北条保を演じるのは『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『亜人』の山田裕貴。
駄菓子屋の店主、山戸頼次を演じるのは『ウォーターボーイズ』シリーズや『シン・ゴジラ』の、レジェンド俳優・柄本明。
警察官、前園巧を演じるのは『ソラニン』『シン・ゴジラ』の高良健吾。
同じく警察官、宮部希衣を演じるのは『猫の恩返し』『怒り』の池脇千鶴。
治の「母」、初枝を演じるのは『借りぐらしのアリエッティ』『海街diary』の、レジェンド女優・樹木希林。

👑受賞歴👑
第71回 カンヌ国際映画祭…パルム・ドール🌟
第44回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…外国語映画賞!
第44回 セザール賞…外国映画賞!
第13回 アジア・フィルム・アワード…作品賞!
第42回 日本アカデミー賞…最優秀作品賞/最優秀脚本賞/最優秀監督賞!✨✨
第10回 TAMA映画賞…最優秀作品賞!

カンヌで最高賞となるパルム・ドールを受賞するなど、国際的にも高く評価される一作。興行的にも成功しており、国内だけでも40億円を超える大ヒットを記録している。日本を代表する映画監督、是枝裕和の集大成とも言われており、氏の代表作の一つとして名高い名画であります。

そんな本作なんですが…。
自分としては……。うん…。

この映画を鑑賞して、私はこうなんと言うか、超一流の精進料理みたいな映画だなと感じました。
日本中から最高級の食材を取り寄せ、それを最高峰の料理人が調理する。
カボチャの煮付け、茄子の天ぷら、胡麻豆腐、生麩の柚子味噌田楽、五目おこわ、季節の野菜のお味噌汁。そしてデザートはお抹茶と和三盆のお干菓子。
食後は偉いお坊さんが出てきて説法なんかしてもらって。それで食べた人全員、徳が高くなったような気持ちになってお寺を後にする、みたいなね。

んでまぁ、グルメな人はそれで良いのかも知れないけど、自分みたいなバカ舌は「ハンバーガー食いてぇ…😮‍💨」と思う訳です。
肉!🍖魚!🐟卵!🥚にんにく!🧄
うがーー!もっとジャンクなもんを食わせてくれっっ!!

ちょい意地悪な言い方になるけど、これは良くも悪くも「ザ・邦画」って映画。

・「…っぁなや……ゃはまぃった………れはそぅ…けど」ボソボソ。みたいな何言ってんのかよくわかんない上に辛気臭い会話。
・煮詰まった人たちによる「血は繋がってなくても俺たち家族!」な関係性。
・美しい景色のロングショットと、そこを駆け抜ける少年少女。
・貧困/障害/DVなど、社会に蔓延る問題への目配せ。
・汗だくの男と女による、雨の午後の情事。
・ここぞと言うタイミングで流れる、ピアノやストリングスによる陰気な劇伴。

これらの要素がいかにも邦画って感じ。海外作品にはない味わいです。海外の人たちは「YEAH!コノ辛気臭サが邦画ノイイトコロデース!サイコーデース!👨🏼‍🦱」ってなるんだろうか…。
国内でも大ヒットしているんだから、陰々鬱々としたものが観たいと言う観客が多いんだろうけど…。うーん。
この「暗くて深刻で賢そうなもの」のほうが「明るくてハッピーなバカっぽいもの」よりも価値がある、という風潮ってなんなんすかね?どうせ社会問題を扱うなら、コメディにして笑い飛ばした方が絶対良いじゃん。

貧困/格差/家族の問題を取り扱っていると言う点では、『パラサイト 半地下の家族』(2019)や『ジョーカー』(2019)と似ている。
日本、韓国、アメリカで、同じようなタイミングで同じようなことを題材にした映画が誕生しており、しかもそれらが国際的に高い評価と興行成績を叩き出しているというのはなかなかに興味深い事実。
こうした経済格差は日本国内のみならず、世界的な問題となっていると言うことなんだろう。

ただ、本作と『パラサイト』『ジョーカー』の違うところは、後者2作はどちらも社会問題を扱っていながら、エンタメとしても高いレベルの作品であると言う点。
陰鬱な気持ちにさせるだけではなく、娯楽的に楽しめるポイントもちゃんと用意されている。

対して、本作は社会問題を観客に叩きつけることを目的とするあまり、娯楽的な要素は皆無。頭からお尻まで、とにかくドヨ〜ンな気持ちにさせられる。
120分全てがスローテンポな上、スカッと出来る抜きどころは一箇所もない。なんでこんなツラい思いをしながら映画を観なくちゃならんのだ…と何度思ったことか。
映画とは結局のところ娯楽。仕事や勉強じゃないんだから、楽しさこそが至高。そこを忘れた作品を評価する気にはなれない。

第一、現代日本に蔓延る問題を鋭く切り取った問題作!みたいな顔をした映画だけど、あまりにも一つの家族に社会問題を集約させすぎていて、「こんな家族居るわけねーだろっ💦」という気がしてしまい、この映画が提起する問題点を素直に見つめることが出来なかった。
そりゃフィクションなんだからファンタジーでいいんだけど、リアリティラインの引き方は考えて欲しい。

とまぁ、賛否で言うと完全に否。
とはいえ、観終わったら何にも覚えていない無のような映画とは対極に位置する、いつまでも心にドシンと居座り続ける作品であることは確か。
地味で面白みのかけらもないが、観客の心に強い影響を及ぼすとてつもないパワーを持った映画であり、そういう評価軸で判断すれば、本作は日本映画史上に残る名画と言える…のかなぁ?
まぁ一言で言うと「良い映画だけど趣味じゃない」と言うことです😅

全然好きじゃない映画だけど、俳優の演技は素晴らしい!
安藤サクラや樹木希林も良いが、MVPだと思ったのは池松壮亮✨出演時間は1分くらいだと思うんだけど、あの表情の演技は凄いっすねぇ。彼が重宝される理由が初めてわかった気がする。

また、本作は役者の肉体の艶やかさをとてもよく引き出していたように思う。安藤サクラの背中!松岡茉優のお胸!!そしてリリー・フランキーのお尻!!!
監督のインタビューによると、この作品は「肉体」の映画であるとのこと。樹木希林が見せた「老い」と、役者陣の体当たり演技が見せた「性」。対照的な肉体の対比が、「生」と「死」という人間の根源的問題を明明と描き出していたように思う。
…にしても、松岡茉優っておっぱい大きいんすねぇ…。

ぐだぐだ書いてきたことを要約すると、観ていて気が滅入ること間違いなしの一本だっ!ということ。
好き嫌いは別れるだろうが、強烈な映画であることは間違いない。鑑賞にはそれなりの覚悟を持って臨むことをお勧めします!

たなかなかなか
talismanさんのコメント
2024年9月9日

ザ・邦画が苦手であまり好まない理由、色々ありますがたなかなかなかさんのレビューに書かれていたことに同感しました。真面目過ぎ、エッジがない、道徳授業で見せられるような教材みたい、要するに面白くないのだ!も原因なんだとわかりました。すっきりー!

talisman
たなかなかなかさんのコメント
2023年6月7日

ご丁寧にありがとうございます😊
多摩蘭坂を登り切る手前の坂の途中の映画館で観てこようと思います♩

たなかなかなか
Mさんのコメント
2023年6月6日

こちらこそ控えめな表現だったのに、気づいていただきうれしかったです。ぜひ、「仕事をサボって」でも観に行ってください。

M
たなかなかなかさんのコメント
2023年6月6日

Mさん、コメントありがとうございます♪
タイトルの元ネタに気づいていただけたようでとても嬉しいです!キモチE〜笑
是枝作品はほとんど観たことがないのですが、『マイスモールランド』はとっても評判が良いですよね!気になります😄
絶賛公開中の『怪物』も観に行こうと思ってます!

たなかなかなか
Mさんのコメント
2023年6月6日

「いい加減明日の事考えた方がいい」
全くその通りです。こんなこといつまでも続くはずがありません。たなかなかなかさんの感度サイコーです。
個人的には是枝さんの作品では、監督作品ではありませんが「マイスモールランド」が一番好きです。(「誰も知らない」もよかった)

M
たなかなかなかさんのコメント
2023年5月10日

ゆり。さん、コメントありがとうございます♪

めちゃシリアスな作品なので、好き嫌いは分かれますよね💦
評価されている理由もわかるのですが…🌀

たなかなかなか
ゆり。さんのコメント
2023年5月8日

つまらないと言いつつ、面白いレビュー、さすがです。(映画館でも、「どこが良いのかさっぱりわからない」という会話がチラホラありました)

ゆり。
零式五二型さんのコメント
2023年5月8日

相当ストレス溜めましたね😊
ホント、賞を取る作品って単におもしろくないです

零式五二型
CBさんのコメント
2023年5月7日

いろいろな映画があってこそだし、その分、観る側である俺たちは、"自分にとっての当たり外れ" から、逃れられないですよね。

CB