「どうするのが正しかったのかを視聴者に考えさせる作品」万引き家族 olk kalさんの映画レビュー(感想・評価)
どうするのが正しかったのかを視聴者に考えさせる作品
家族の愛に飢えた者たちが集まって、自分たちの家族を形成した物語。
血の繋がった本当の家族ではないが、たしかにそこには愛があり、皆そこでの生活に満足していた。
男の子の祥太もそこでの生活に満足していたと思う。ただ、祥太は思慮深く、賢い。
この家族には問題があった。万引きを日常的に行い、家族もそれを知ったうえで当たり前のように流している。生まれて間もない頃からこの環境にいる祥太も万引きを行っていたが、徐々にこの万引きという行為に疑問を抱くようになる。
祥太は「お父さん、お母さん」と呼ばなかったことから、子供を万引きという形で形成された家族が正しいのかという疑問も抱いていたのかもしれない。現状の家族には満足しているが、自分がその家族に入る過程から心の底から「お父さん、お母さん」と呼んでいいのか分からなかったと思う。
祥太はある日万引きをわざと店員に見つかるように行う。それは妹のように可愛がっているゆりが万引きをしようとしたときである。祥太は自分が大好きな家族が万引きという悪い行いをすることが耐えられなくなっていたのだと思う。
祥太の行いによって家族は捕まり、ばらばらになるが祥太の気持ちは軽くなったように見えた。家族が好きだからこそ、その家族が悪い行いをしてるのに平気で過ごしてしまうことが祥太にとって辛かったからであると思う。
子供を万引きをした夫婦は愛はあったがやり方が間違っていた。
対照的に祥太は正しく生きる子供であった。今ある家族がどれだけ幸せなものであったとしても万引きを繰り返していた家族は一度捕まるべきであったし、「誘拐」という形で形成された家族は一度ばらばらになるべきだったと思う。
そして一度ばらばらになった上で「自分にとっての家族」について考え、これからそれぞれがどうするかを考えるべきであったのだと思う。最後の祥太、ゆり、亜紀の描写から視聴者は想像力を働かせてられた。