「負の連鎖、唯一の救いはそこから抜け出せるかもしれない子供、若者」万引き家族 Evelynさんの映画レビュー(感想・評価)
負の連鎖、唯一の救いはそこから抜け出せるかもしれない子供、若者
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この映画にメッセージがあるとすればこれだと思う。私はそう受け取った。
複雑な現代社会の中で身を寄せ合って生きる擬似家族、その絆が素晴らしいとかそんなことではない。子供の時に教育を受けられなかったり、愛を与えられなかったりするなどの事情があり、彼らなりのやり方で生きてゆくしかない不器用な大人たち。正直、見ていて辛くなるし、後味も悪く、見なければよかったとさえ思った。しかしこういうことは現実にあるのだ。
幼い時に、十分に愛されないということは、決定的に大きなハンディキャップである。それを自分の努力で埋めることはとてつもなく難しい。治は正統な努力の仕方がわからなかった。もう変わることは難しいオジサンだ。オジサンは難しい。信代は母になることで変われるかも、と思っていたのかもしれない。でも、「ウチらには無理だった」と言う。亜紀はまだ若い。似た境遇の青年と出会ったことは彼女にとって良いことかどうか?必要な経験だろうか。希望の星は祥太。賢く、学ぶ力もあり、自ら別の環境に行くことができた。りんはひと夏の想い出を胸に、ここではないどこかへ行きたいと思いながら育つのだろうか。
信代が、りんのおねしょを臭い、というところからの下りが一番キツく、胸が痛んだ。幼少期に虐待を受け、過去に正当防衛で人を殺しそれを悪いと思っていないということで彼女が少し解った気がした。常に生きるか死ぬか、やらなければやられる、という環境で生きてきて、他人への思いやりや愛の表し方を知らない。しかし彼女には生きる力があり、全ての罪を自分がかぶるという選択をした。彼女にもまだ前途があると信じたい。
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