葡萄畑に帰ろう
劇場公開日 2018年12月15日
解説
官僚主義を痛烈に笑い飛ばした風刺コメディ「青い山 本当らしくない本当の話」などで知られるジョージア映画界の最長老監督エルダル・シェンゲラヤのヒューマンコメディ。政府の要職に就くギオルギは、故郷に残した母親のことなどすっかり忘れ、大臣の椅子の座り居心地を満喫していた。早くに妻を亡くし、娘との折り合いはあまりよくないものの、新しい恋も手に入れ、順風満帆な日々を送っていた。しかし、ある日突然、大臣をクビになってしまう。ジョージア国会副議長を務めるなど、政界で活躍した監督自身の経験をベースにした権力社会への風刺を、大らかなユーモアで包みこみ、ジョージアの魂とも言える葡萄畑が広がる故郷への愛がつづられる。
2017年製作/99分/ジョージア
原題:The Chair
配給:クレストインターナショナル、ムヴィオラ
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2019年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ジョージア(グルジア)の重鎮監督の久しぶりの映画と聞いたので、どんな重厚な作品なんだろう、と思っていたら皮肉たっぷりに政治コメディだった。旧ソ連から独立した時に政治家も務めた経験のある監督自身の実体験を存分に反映させた作品らしい。
難民追い出し省というすごい名前の省の職員はなぜかローラースケートを履いて仕事しているし、そこの大臣である主人公が買った椅子はなぜかしゃべって人をかどわかす。椅子は権力の象徴で、それが人を狂わせるのだということを面白おかしく描いている。全部実体験から着想を得たらしいが、政治の世界では本当におかしなことばかり起こるのだろう。
主人公は、大臣をクビになった後、人生において大切なことを見つける。故郷のぶどう畑が美しい。ジョージアはワインの産地として有名だが、上手いワインと愛する家族以上に人生に大切なことはないのだと軽やかに謳い上げる作品だ。
2018年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
ジョージアはワイン発祥の地と呼ばれているそう。政治家や家族を題材にした旧ソ構成国の映画と聞くと、固い映画なんじゃないかと敬遠しそうになるが、実際に観るとなかなかどうして、風刺あり、ユーモアと笑いあり、そして感動ありと、実に小粋な良作だった。
日本でも「大臣の椅子」「社長の椅子」などと言うが、椅子を重職や権力の象徴とするのは世界共通なのだろうか。英語でも議長や会長をchairmanと呼ぶし。でも、椅子を単なるメタファーにとどめるのではなく、擬人化して狂言回しに使うという発想に意表を突かれたし、それが80過ぎの高齢監督エルダル・シェンゲラヤの作品というからまたびっくり。
おまけに、アナ役のナタリア・ジュゲリ(監督の孫娘)をはじめ、女優陣が美人揃いなのもポイント。ジョージア映画、もっと日本で観られるようになるといいな。
2021年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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大臣の特注の謎の椅子が狂言回しのヒューマンコメディ。
葡萄畑のある故郷はちょっとしか描かれません、邦題のイメージから汚れた政界を引退して故郷で地道に働いて人生の真の価値を見出すシリアスな感動ドラマを予想していたら見事に覆されてしまいました。
さすがに老練な名監督らしくワインを飲みながら作ったような脱力モードでありながら人生あるあるをコミカルに描いて楽しませてくれます。何より「クレオパトラの涙」と称されたワイン発祥の地ジョージアですからワインはソウル・ドリンク、飲めば憂さも紛れるということなのでしょう。
ただ、主人公は悪人ではないのですが「難民追い出し省」と頂けない肩書や他力本願の性格は今一、窮したと言っても帰れる故郷があり優しい家族にも恵まれているのですから同情する余地も薄いので感情移入は微妙。大人たちのさもしさに壁癖とさせられますが無垢な子供やペット、おかしな小道具を散りばめてファンタジックに脚色、不思議とほのぼの感の残る小品でした。
2019年11月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
私はジョージアの作品が初鑑賞なのですが、地理的にはトルコの上ウクライナの下なんですね。なんとなく作品の雰囲気がクストリッツァに似ていたので気になったのですが、黒海の向こう側が旧ユーゴスラビアなので、雰囲気も似るのかもしれないです。
権力を持つ人間も権力という椅子に振り回されてしまうという皮肉なのでしょうが、どの国も一緒なんですね。官僚国家の旧社会主義国ではその印象が強いですが、今では資本主義国でも変わらない様なそんな事を思いました。
様々な文化が混在してそうなので、ジョージアに行きたくなりました。
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