ピッチ・パーフェクト ラストステージ : 映画評論・批評
2018年10月16日更新
2018年10月19日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
アカペラの可能性は無限大!ラストステージで魅せる多種多様な音とのコラボ
ミュージカル・コメディというジャンルで映画史上1位の興収を挙げた「ピッチ・パーフェクト2」(15)から3年。副題を「ラストステージ」に決めて再び炸裂する女性アカペラグループによる文字通り“最後の”パフォーマンスは、「まだまだやるわよ」という意気込み充分。それはアカペラの限界を超えていこうとする音楽シークエンスに特に顕著だ。
恐れ知らずの女子大時代も今は昔。“ベラーズ”の面々は各々社会の洗礼を受けて冴えない日々を送っていた。そこに、USO(米軍慰問団)が行うヨーロッパツアー参加という願ってもないチャンス到来。こうして、マリリン・モンローやグレン・ミラー等、過去に名だたるセレブ約4万人が参加した伝説のステージで"ベラーズ"の歌声が響くことに。
ツアー直前の格納庫で繰り広げられるのは、イベントでホストを務める人気DJのオープニングアクトの座を互いに競い合うライバルグループとのリフ・オフ(歌のしりとり)合戦。しかし、相手はパンキーな美女がリードを務める女性ロック・バンドだったり、アコースティックギターの爪弾きが耳に心地よい男性ユニットだったりで、“ベラーズ”は楽器が持つ迫力と意外な協調性に疎外感を味わう。それは、ツアー中にベッカ(アナ・ケンドリック)が地声にデジタルサウンドを自分でミキシングするシーンも然り。極め付きは、ラストに用意されたUSOの晴れ舞台で、ベッカが足下にセットしたループ・ペダルを踏んで音を増幅させる場面。エド・シーランもステージで使っている魔法のサウンドマシーンが、最後の「ピッチ・パーフェクト」に登場するなんて思ってもみなかった。まさにアカペラはアカペラに止まらず。多種多様な音とコラボしながら可能性は無限大なのだ。
ストーリーそのものはどうかと言えば、父親、恋人、パートナー等々、女性にとって多少面倒臭くても付き合っていくしかない対象物を容認する余裕も。勿論、#MeToo時代を牽引するシリーズ立ち上げの張本人で、今作では製作と出演を兼任するエリザベス・バンクスは、ラストショットを痛烈で笑える名演で締め括っている。それは、観てのお楽しみということで、ひとつ。
(清藤秀人)