劇場公開日 2019年3月8日

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シンプル・フェイバー : 映画評論・批評

2019年3月5日更新

2019年3月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

女性同士のスリリングで複雑な愛憎関係。ライブリーの驚くべき新境地に注目!

女性同士の友情は、お互いへの興味と愛情を前提に、実に細やかな気遣いと駆け引きを必要とする、複雑で絶妙なバランスで成り立っている。そのことに、「シンプル・フェイバー」のステファニーとエミリーのスリリングな関係から改めて痛感させられた。

アナ・ケンドリックが演じる未亡人のステファニーは、育児や家事についてのあれこれを動画で発信する明るく健気な主婦ブロガー。一方、ブレイク・ライブリーが演じるエミリーは、華やかなファッション業界で働いているミステリアスな美女。正反対な二人は、クラスメイトの息子たちを通して知り合い、急速に親しくなっていく。

知り合った当初は、ステファニーがエミリーに一目惚れしたのだろう。ハンサムでエレガントなパンツスーツにヒールを合わせてさっそうと歩くエミリーには、誰もが目を奪われずにいられない。知り合って早々にステファニーが自分の“秘密”を打ち明けたのは、エミリーに気に入られたいという潜在意識があったに違いない。また、エミリーの「息子を迎えに行ってほしい」という「ささやかな頼み事(=シンプル・フェイバー)」を、嫌がるどころか嬉々として受け入れたのは、エミリーに頼られて嬉しかったからだろう。

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ところが、エミリーはそのまま行方不明になってしまう。「親友を助けたい」という思いから、エミリーの夫と息子の世話をしながら、ステファニーが独自に調査を開始すると、エミリーの過去が徐々に明らかになってくる。周りの人にも観客にも最後まで本音を掴ませず、調査活動に突き進む、ケンドリックの「周りを油断させる芝居」が絶品だ。また、これまで男性にとって理想の女性像を演じることが多かったライブリーの驚くべき新境地も歓迎したい。

最後の最後までどんでん返しが続く巧妙なストーリーの原作は、ダーシー・ベルの「ささやかな頼み」。監督は、「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」や「ゴーストバスターズ」のリブート版を監督したポール・フェイグ。女性がメインキャラクターのコメディを作ってきたフェイグは、この毒気のあるユーモアが彩るサスペンスでも、男性が入り込めない女性同士の複雑な愛憎関係を描くことに成功した。彼は今、女性をあらゆるステレオタイプから解放して描くことにおいては、もっとも信頼できる監督の1人だろう。

須永貴子

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