「パズルのような映画」ビューティフル・デイ るるびっちさんの映画レビュー(感想・評価)
パズルのような映画
北野武監督の「HANA-BI(花火)」を思い出す。
寡黙で孤独。静けさとバイオレンス。孤独な魂のふれあい。
必要最小限の説明しかない。
主人公のトラウマらしき映像はあるが、その説明はない。想像はつくが。
それに台詞があっても真実ではない。議員は、さらわれたのは自分の娘と言っていたが嘘らしい。彼女は生娘ではない。議員も客だったようだ。
パズルのように観客がピースをはめて行く映画。
素材としてのシーンが並んでいる。
ピースを当てはめて、ストーリーを紡ぎだすのは観客の作業になる。
よくは解らないが、主人公と誘拐された少女は実は似たもの同士らしい。
自分と同じ罪を彼女が犯すことを主人公は恐れている。
北野映画で突然の暴力がリアルだったように、映さない部分の暴力が怖い。
監視カメラの片隅に物静かに映る暴力。すでに攻撃は終わり、倒れている人物。それらがリアルを醸し出す。
襲撃者を倒し、一緒に歌を唄ったり手を取ったり、なんだか様子がおかしい。
しかし、死ぬ間際の人間に手を握られる恐怖と、それが自分と同じ生き方しかできなかった同族への理解と悲しみを感じる不思議なシーン。
本来掃いて捨てるほどあるハードボイルドな平凡な話を、説明を極力減らして主人公の痛みや苦しみをダイレクトに映すような主観的な作り込みにしているので、よくわからんが辛さは伝わるという変な映画になっている。
説明過多なせいで平凡に堕している映画が多い中で、新鮮さを放っている。
多感な頃に観ていればそれも一興と思うが、こちらはモノを考えるのが面倒臭いお年頃なので、「むしろ平凡なアクション映画でいいんですけど」と呟いてしまった。この歳でパズルなんか面倒臭い。
脳の柔らかい若者が、描かれない虫食い部分をアレコレ想像して、パズコレしながら観ればいいんじゃないかな。