「ゴッド・アンド・モンスターズ 【追記修正3】」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴッド・アンド・モンスターズ 【追記修正3】
※いつも以上の長文注意です
2014年にハリウッドで復活を遂げたゴジラ、
その続編が遂に登場! しかも今回は往年の
大怪獣、モスラ・ラドン・キングギドラまで復活!
6歳の頃からゴジラファンで、そこから映画ファン
となった自分としては、その情報を聞いただけで
興奮し過ぎて鼻血が出そうになってた訳ですね。
おまけに監督マイケル・ドハティが度を越えたゴジラ
ファンであることや、実際に公開された壮大な予告編
にも益々期待を煽られていた。
だが……どれだけ期待している映画だろうと、
気持ちをフラットな状態にして冷静に評価すべき
というのがレビューする上での個人的信条である。
ここから先は冷静に努めて評価していこうと思う。
まずは前作からのテーマの進化についてだが、
...
はい、冷静なんてムリですねッ!
テーマ? そんなもん後回しだよッ!
ド単純にメッチャクッチャ燃えましたよ、ええ!!
いや、最初はほんとに冷静な気持ちで評価しようと
フラットな気持ちで観ていたつもりなのだが
(序盤30分くらいはエモーションがついて来なかった)、
これでもかと盛り込まれた過去作へのリスペクト、
想像以上に『ゴジラ』的なテーマと人間ドラマ、
そして天井知らずの怒濤の怪獣バトルにじんじん
ボルテージが上がっていった感じでした。
...
映像もドラマも見せ場見せ場の連続で、もはや
見せ場のみで構成されていると言って良いほどの
ノンストップぶりなのだが、まずはリスペクト
たっぷりに"タイタン(巨神)"と名付けられた
怪獣たちのド迫力について書く。
今回の目玉・キングギドラは、間違いなく歴代最強!
羽を拡げた時の猛々しいデザインも悶絶するカッコ良さ!
前半いきなりゴジラに首を噛み千切られちゃうので
「え、ここからどうすんの?(メカ首付けちゃう?)」
と思ったら、首もげても生え替わるってマジかよお前!
単純なパワーでもゴジラと互角以上なのに、空は翔ぶわ
手数(首だけど)は多いわゴジラの熱線をかわすわ
台風を引き連れてるわ電力吸収してブートアップ
するわラドンが護衛に付いてるわ(裏切り者!)、
王様欲張り過ぎやろ!
ところで”モンスター・ゼロ”という呼称は『怪獣大戦争』
でも使われてましたね。そこ拾うのはスゴい。
モスラも、繭から孵るシーンや暗雲を散らして空から
舞い降りるシーンの美しさときたら神々しいほどで、
そこであの“モスラの唄”まで奏でてくれた時には
もう訳もなく泣きたくなってしまった。
ラドンとの空中戦やゴジラを庇っての最期も良いです。
ゴジラと共生する“女王”という設定もニクいし、モスラを
味方と信じるチェン博士が双子の家系という設定もニヤリ。
次、ラドン! 燃える溶岩を撒き散らして山頂に
立つ登場シーンの恐ろしさといったら。ただ翔ぶ
だけで無数の被害を巻き起こす様はまさに“巨神”。
モナークとのドッグファイトでも巨躯に似合わぬ
急上昇&回旋飛行で戦闘機を羽虫のように薙ぎ払う。
ギドラとの正面衝突は『三大怪獣地球最大の決戦』
を想起させるし、そこからの空中格闘戦もスゲェ!
これは今の技術じゃなきゃ実現不可能な戦闘シーン。
(ギドラにノされてからは“子分”感が凄かったけど……)
それでもやっぱり主役はゴジラです。
仇敵キングギドラや人間側の妨害
(まさかのオキシジェン・デストロイヤー!)
で傷付いても、何度でも立ち上がる"真の王"。
最後、天に吠える立ち居姿はゾクゾクするほどの風格!
序盤からギドラとの野獣のようなバトルを見せて
くれるし、今回は放射熱線も惜しみ無く使うし、
終盤では『ゴジラVSデストロイア』を彷彿
とさせる、熱核反応による赤熱形態も披露!
本作のゴジラは前作のデザインを踏襲しつつ
'54年度版の要素も追加されているそうだが、
デザインだけでなく威嚇の発光やエネルギー源など
その生態もより深く描かれ、また人間との距離感も
VSシリーズのゴジラっぽさが増したと感じた。
怪獣同士が闘う理由もしっかり詰められている。
世界中に分散する怪獣たちを狼の群れに例え、群れの王
=アルファが全ての怪獣を統制するという設定が秀逸。
ギドラが宇宙怪獣という元の設定もきっちり拾い、
地球の生態系を作り替えようとする偽の王
対 元来の生態系を護る真の王という構図で
ギドラ対ゴジラの対決に必然性を持たせている。
...
ドラマとテーマについても書く。
環境テロリストの首謀者だったエマの目的は、
人類による環境汚染や戦争により激変してしまった
生態系を、”巨神”たちによってリセットすること。
言うなれば審判の日を自らの手で起こそうという
神をも畏れぬ所業だが、彼女は"オルカ"があれば
人的被害は最小限に防げるとタカを括っていた訳だ。
だが、人間が自然を制御することなどできない。
エマが解放したギドラの能力は彼女の予測を遥かに越え、
世界規模での無差別な大破壊を引き起こしてしまった。
息子の死の遠因となった生態系の乱れを元に
戻したいという執念に取り憑かれていた彼女。
それ自体は立派な大義かもしれない。だが
"大義"という言葉も結局は一握りの人間の、
あるいはひとつの方向の正義でしかない。
文明の発展のための環境汚染。
自国の利益を守るための民族虐殺。
戦争を終わらせるための核兵器開発。
自らの都合で好き勝手に世界を作り変えようとする
我々人間こそが最大の怪物(モンスター)なのだと、
この物語は訴えているのだと思う。
エマの最後の決断に涙。世界中を滅茶苦茶にした
事実は消せないけどーーあれはきっとせめてもの
罪滅ぼしだったんだろうし、夫と娘を守りたいと
いうシンプルな愛情ゆえだったんだと思う。
エマと相反する考えを持っていたのが芹沢博士。
彼の最期にはもう嗚咽を堪えるのに必死だった。
「さらば、友よ」で、それまでどうにか
持ち堪えていた涙腺が一気に瓦解した。
彼が前作から肌身離さず手にしていた時計は、
1945年8月6日、ヒロシマで原爆に襲われた父の形見だ。
放射能を糧とし、時に人類の脅威となるゴジラに複雑な
心境を抱きながらも、最期に芹沢博士は彼を"友"と呼んだ。
恐れ憎むべき敵ではなく、共に歩む“友”として彼に触れた。
台風や地震など、ことあるごとに猛威を振るう
自然に対してしばしば我々は恐怖や憎しみを抱くが、
自然は決して人間がコントロールできるものではない。
我々は自然の猛威を畏れ敬い、共生していくしかない。
ゴジラは、時に怪物と化す我々人類の過ちを
厳しく諌(いさ)め、道を示す友なのだ。
...
序盤のテンポや、激しいアクションシーンで寄りの
画が多くやや見辛いと感じたシーンはあったりする。
サリー・ホーキンス演じる博士の呆気無い最期や、
若干気になる程度の中国推しなど、細かな不満点はある。
だけど、正統派VSゴジラシリーズを現代ハリウッド
の技術でウルトラアップグレードして観せてくれた
点は感謝しかないし、映画全編から常に並々ならぬ
気合と畏敬の念が伝わる出来だった。最後にはあの
"伊福部マーチ"やオリジナルスタッフへの弔辞までーー。
マイケル・ドハティ監督ならびにスタッフの皆さん、
ゴジラをこんなにも壮大な形で、そしてこんなにも
リスペクトしてくれた形で映画化してくれて有難う。
傑作だと思います。4.5判定です。
<2019.05.31鑑賞>
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余談1:
ギドラの生首お買い上げ!
けど次回作は『Godzilla vs Kong』でしょ?
まさか……いやいや、今から期待するのは早過ぎかね。
余談2:
映画後半、ゴジラ復活に核兵器を使うなんて!と
思われた向きも居られるかもだが、キングギドラ
と闘わせる為に核兵器でゴジラを復活させようと
する流れはくしくも『ゴジラVSキングギドラ』
と同じである。
追記修正:ただし実際には核兵器は使用されず、
世界中が海中に廃棄した核物質の影響で復活する流れ。
余談3:
3度鑑賞してやっと気付いた小ネタなのだけど……
モナーク基地54 = 『ゴジラ』公開年1954年
モナーク基地56 = 『空の大怪獣ラドン』公開年1956年
モナーク基地61 = 『モスラ』公開年1961年
モナーク基地32 = ギドラの首3本尾2本が由来?
それとも倍数にして
『三大怪獣地球最大の決戦』公開年1964年?
と思ったら、敬愛する映画評論家・清水節氏が
とっくにtwitterでこの内容に言及してました。
ギドラのいた南極のモナーク第32基地は、
同じく南極が舞台で地球外生命体を発見する
『遊星からの物体X』のアメリカ第31基地の後に
新設されたという説。なんだ、ただの天才か。
あと、フェンウェイ・パークにギドラが降り立つ
直前、微かに昭和ギドラの飛行音のような音が……
他場面で似た音は無かったし、ギドラ着陸直前
のタイミングだし、これも監督の仕込んだネタ??
先日はご丁寧な返信ありがとうございました。
レビューを拝見し大変勉強になりました!
本作は知識ほぼゼロで楽しみましたが、色々と作り込まれて奥深いんですね!歴史を感じます。
浮遊きびなごさんへ
モナークの基地番号の件、全く気が付きませんでした。浮遊きびなごさん、凄すぎます!今、鳥肌もんで感動してます。皆さんを、怪獣マスターと呼ばせていただきます、心の中で!
【注:コメント内にややネタバレ含みます】
カミツレさん、浮遊きびなごです。
コメントありがとうございます!
返信遅くなってしまいすみません……。
お言葉に甘えて今回は自分のレビューに
コメントする形で返信させていただきますね。
(そちらの『スパイダーバース』のコメント欄
が大量になっちゃいますしね……)
カミツレさんも遂にご覧になりましたか……
しかも日本最大のIMAXシアター?……
羨ましいを通り越して恨めしい!(恨むな)
巨大スクリーン&大音量で本作を観られた
だなんて贅沢過ぎますね。
こっちも遠出して名古屋のIMAXで再鑑賞
してみようかなあ。それでも最大サイズ
と比べると縦横10mも違うらしいですね!
ホントに怪獣サイズ! 恨めしい!
>あえて本来の意味合いや役割を反転させているところが面白いなと感じました。
成程です。確かにアレを復活させる為に
アレを使うとか、クライマックスのアレ
の形態も日本版のアレとは死/再生の
意味合いで逆でしたね(アレばっか)。
形だけのオマージュに留まらず、今まで
培われてきたゴジラや他怪獣の立ち位置、
シリーズ全体のテーマについてまできっちり
大事にしてくれている感じで、ゴジラファン
のはしくれとして感無量でしたよ……。
返信お気になさらず! ではではまた!
【※このコメントには作品のネタバレが含まれています。未見の方はご注意ください。】
浮遊きびなごさん、こんばんは! 日本最大のIMAXシアターでゴジラ鑑賞してきました!
怪獣たちの唸り声は、もはや“音”というより“空気の振動”としてダイレクトに伝わってきましたし、
巨大なスクリーンが視界をほぼ埋め尽くし、まさに目の前で怪獣たちが大暴れしているようで最高でした!
(興奮冷めやらぬ内に感想を書き記しておきたいと思い、取り急ぎコメントさせていただきました。すみません……(^-^;))
ストーリーの中で個人的にいいなと思ったのが、中盤に登場する“例の兵器”と、芹沢博士の決断と、ラストバトルでの〇〇〇〇〇ゴジラです。
これらはいずれも、オリジナルの作品にオマージュを捧げながら、あえて本来の意味合いや役割を反転させているところが面白いなと感じました。
「そのまんま同じことやるなんて、いかにも“オマージュ捧げてます”って感じでダサくない?」というような、マイケル・ドハティ監督のオタクとしての矜持を感じます(笑)
※このコメントへの返信は、こちらの(きびなごさんのレビューの)コメント欄に書き込んでくださって構いませんよ。
私の方はレビューの投稿がしばらく途絶えていますし、『スパイダーバース』の方にいただいたコメントには、またあらためて返信させていただきたいと考えておりますので。
あっ、もちろんスルーしてくださっても構いませんよ(^-^;)
お久しぶりです!
コメントありがとうございました!
もう本当にお詳しい!
同意です!
最高のゴジラでした!
あと、コメントの消し方わからないのですが、僕のレビュー自体がネタバレの奴なのでたぶん大丈夫でしょう!!
長文の、熱のこもった文章ありがとうございます。
私見ながら、ギドラの生首の件ですが…次回作、ゴジラとコングのテッペンバトル中にギドラ復活→タイマン邪魔するな→計らずも共闘(誰に付こうか迷うラドン)的なものを妄想しながら期待してます。
早速ご覧になられましたね。
仰る通り、見る前も見てからも、冷静になれというのが無理なくらいの激アツゴジラ映画でした!
マイケル・ドハティ監督、素晴らしいゴジラ愛でした。
ここまでやってくれたら何も言う事ナシ! 語り尽くせぬほどです。
この興奮、『ゴジラvsコング』は超える事が出来るか!?…でもやっぱり期待しちゃいます♪(^^)
過去作にむちゃくちゃ詳しいですね!
改めて自分のレビューを読み直してしまいました~(笑)
ギドラの生首は気になりますね
コング一人じゃゴジラには勝てそうもないし、
やっぱりギドラの応援待ちなんじゃないでしょうかね♪
※手違いでコメント消去してしまいました。以下、巫女雷男さんからのコメントです。巫女雷男さん、コメントありがとうございました。
>テーマ? そんなもん後回しだよッ!
>ですよね〜w