「「物語の道具」扱いされない「人間で天才」」響 HIBIKI hachiさんの映画レビュー(感想・評価)
「物語の道具」扱いされない「人間で天才」
『主人公の鮎喰響は15歳の女子高生ながら芥川賞・直木賞に同時ノミネートされた天才小説家。
しかし彼女は自分の信じる生き方を絶対に曲げず、暴力的な手段も辞さない』
これだけをきくと、「天才だ」と人々が熱狂する様子やその才能に圧倒される秀才たちが生き生きと描かれて、主人公は「天才」「破天荒」という属性だけを割り振られた道具になりかねないと思う。
しかし、違う。
この映画では15歳の鮎喰響が毎日を生きている。
作中に響のモノローグは一切ないのに、響のことを目で追っているだけで、鮎喰響が非常に豊かな感性で世界をみつめていること・何を大切にして生きているのかが深く自分の中に入ってくる。
主演の平手友梨奈は様々な媒体で「鮎喰響の生き様を届けたい」と話しているが、その言葉通り、1秒たりとも逃さず鮎喰響として生きていた。
嘘がなくてまっすぐ世界と向き合う人間の強さと危うさを、とんでもない存在感をともなって感じられる映画だと思う。
自分はこの先、「しょうがないじゃん」とごまかしそうになった時、鮎喰響のことをふと思いだす気がする。
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