劇場公開日 2018年7月20日

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「おそらく前例がない画期的なアニメーション」未来のミライ うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 おそらく前例がない画期的なアニメーション

2025年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

この映画に関しては、レビューを当てにしないで見たほうがよさそうです。酷評が目立つから、つい目にしてしまう。すると、必然的に「どうしてだろう?」とか「何か意味があるのではないか?」などと気にしながら映画を追いかけていくことになります。

代表的な感想で、目についたのは
・普通につまらない
・男の子の声が合ってない
・細田作品にしては日常過ぎて話に飛躍がない
といったところでしょうか。

私自身、この映画の強烈なビジュアルは、あの高校生のミライちゃんがくんちゃんを空に引っ張るあの絵にあると感じ、非常に好奇心をくすぐられたのです。これほど期待して出かけたこともずいぶん久しぶりでした。

そして事前の情報から得られたお話は、まるで『君の名は。』を予感させるような時空トリップもの。きっと感情を揺さぶる名作に違いない!と、勝手な想像を膨らませていたのでした。

ところがこの映画は、boy meets girlを期待させておきながら実際には、
boy meets himselfだったという「裏切り」があったのです。これが、面白ければいい意味に受け取られたでしょうが、抑揚がなく淡々と日常を描いていく構成に退屈を感じる人にとっては「まったくの裏切り」に映ったのでしょう。

通常であれば、プロデューサーが介入し、ストーリーラインの大幅な増補に走るところですが、過去作で着実に実績を積み上げてきた細田監督の「作家性」として許され、あとは受け取り方しだいで、面白くも、つまらなくもなり得るという丸投げ状態になったのではないかと思います。

比べるのもどうかと思いますが、宮崎駿作品の『崖の上のポニョ』なんか、後半収拾つかなくなって意味不明。あれが人生を変えてくれたベストムービーなんて言う人にもちろん会ったこともなく、正直駄作にしか思えません。それでも「作家性」のひと言で許されてしまうほど、実績を積み重ねていってからの『ポニョ』だったので、それほど酷い風評も聴きません。きっといろんな人が忖度しまくって「実はこんな風にも読み取れる」「あのシーンに隠された本当の意味」なんて勝手な自説をこねくり回して、ジブリに駄作なしという無茶な論説を突き通したいのでしょう。

さて、話を映画に戻せば、この作品、非常に直球で、美彩な表現を使って幼児期の男の子の成長、自我の目覚めを描いた画期的なアニメーションです。おそらく前例がない。前例はないけど類似の作品は非常によく見かけます。いわゆる「中二病」を主人公にしたあらゆるドラマツルギーを取り上げたものです。

そして、多くの人が共感できる「あるある」を、恣意的に抑揚なく繋げただけのようにも見えます。反応を見ることが出来ないので想像でしか言えませんが、Eテレにくぎ付けになる男の子のような反応が起きるのではないかと思います。途中から、画面に目を取られたら最後まで目が離せない。それでいて、どこかにいっぽん大きなスジが通っていて、見えるときにだけそのことを考えるヒントをくれるような。そんな作品作りを目指したのではないでしょうか。

それゆえに「声が合ってない」とか、「日常過ぎてつまらん」なんていう感想は、始めから気にしなくていい作りの映画です。きっと子供が見てつまらなそうにしているのを見て、「そうか、つまらないのか」子供が夢中になっているのを横目に見て、「おお、面白いのか」なんてボーっとしているのがいちばん幸せな鑑賞法なんじゃないかと思います。汗だくになって泥団子をこさえている子供を全否定する大人なんていないでしょう。

うそつきかもめ
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