「『未来のミライ』好きくなくない!」未来のミライ カミツレさんの映画レビュー(感想・評価)
『未来のミライ』好きくなくない!
本作『未来のミライ』には、例えば『サマーウォーズ』のような分かりやすい面白さはないですし、つまらないと感じる理由も分からないではないですが、決して悪い作品ではないです。
今回、細田監督が表現しようとしていることはなかなか面白いですよ。
本作は、
➀主人公のくんちゃんが駄々をこねて、お父さん・お母さんを困らせる。
↓
➁家の中庭からファンタジーの世界に誘われ、過去あるいは未来の家族の誰か(未来のみらいちゃん、過去のお母さんなど)に出会い、何かを教わったり、体験したりする。
↓
➂現実の世界に帰って来た時には、くんちゃんはほんの少し成長している。
……という流れのくり返しで構成されています。
本作を読み解くヒントになるのが、
・予告編でも出てくるお父さんのセリフ
「子どもってすごいね。突然ポンッと出来るようになるんだからさ」と、
・テレビのインタビューで監督が話されていた、
自分の子に今日どんな夢を見たか聞いて、そこから脚本を考えていった、ということ。
本作は、いつの間にか成長している子どもたちが、大人が知らないところで体験しているかもしれない不思議な出来事(空想や夢)を、アニメーションで表現(可視化)しようという試みなのだと思います。
監督の試みはユニークだと思いますし、それは少なからず成功しています。
凝りに凝った背景美術やファンタジー表現は監督の面目躍如といったところ。特に物語終盤に登場する少し恐ろしげな未来の駅のイメージなどは、本当に素晴らしいです。
また、ファンタジーの中の出来事から、家族の見えないつながりや秘めた思いが浮かび上がってくるというところも、監督の家族観が窺えてなかなか興味深いです。
惜しむらくは、各エピソード間のつながりが希薄で、ただ並列的にならんでいるだけなので、話がプツプツと途切れるように感じられ、ストーリー全体に起伏がありません。
おそらく細田監督作品の中でも、最も物語終盤の盛り上がりに欠ける作品になってしまっていると思います。
本作が多くの人に「つまらない」と評される最大の原因はこの点にあるのではないでしょうか。
以上をまとめると、『未来のミライ』は、監督が描こうとしていることはユニークですし、表現の面でも目を見張るものがありますが、エピソード間のつながりが弱く、物語に起伏がないため、傑作になり損ねた作品といったところ。観る価値は十分にあると思います。
ヤスさん、コメントありがとうございます。
小さい子どもって、遊びの中などでごく自然にファンタジーの世界をもっていますよね。
そのイメージと、細田監督のお子さんの話から考えたことなのですが、これはあくまで解釈の一つに過ぎません。
ただ、こんな風に考えて作品を観ると面白くなるんじゃないかなと思い、レビューを書かせていただきました。
あぁ、なるほど、この投稿を読んで分かりました。いつの間にか成長している子どもたちが、大人の知らないところで体験しているかもしれない不可思議な出来事、なんですねー。鑑賞直後には分からなくて、ややネガティヴでした。良い解説ありがとうございます。
巫女雷男さん、Keikoさん、コメントどうも。
タイトルに反応してくださってありがとうございます。
くんちゃんの「ミライちゃん、好きくない!」の言い回し、いいですよね。