劇場公開日 2018年7月20日

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「【注意】独身中年男性は覚悟を持って観ましょう」未来のミライ おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【注意】独身中年男性は覚悟を持って観ましょう

2018年7月22日
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鑑賞方法:映画館

アニメーション映画を見る醍醐味は、キャラクターの動きがもたらす快感と背景の美しさにあると思う。優れた背景美術は、観客の想像力を喚起して、もう見ることのできない風景を確かに感じさせてくれるのである。麻生久美子が演じる「おかあさん」が子供であった時代の背景美術は本当によくできていた。たしかに昭和の家はあんな感じだった。
キャラクターの動きもさることながら、おもちゃの線路やお菓子がばらばらと動くアニメーションも、見ていて本当に気持ちよかった。とにかく、宮崎駿が言うところの「一年に一回のごちそう」に値する作品であったと思う。
そんなハイクオリティで家族のつながりが描かれたこの作品は、中年独身男性には、いたたまれないのである。ドラえもんから「タイムライト」によって時間の流れを見せられたのび太のように、これまで(だらだらと)過ごしてきた時間を後悔させる可能性が高い。
特に終盤の東京駅のシーン。社会で孤独にさいなまれて、生きる意味を失いそうになった時、誰が自分を救ってくれるのかが、映像で語られる。孤独と恐怖から主人公が助け出されるシーンは本当に良くできていて、それだけにわたくしの気持ちは打ちのめされてしまった。しばらくの間、落ち込むこと必至である。
小説にしても映画にしても、自分でコントロールできないほど感情が動かされる作品こそ評価されるべきだと思う。その意味で劇場で見るべき価値は十分にある。てゆーか、早く観に行け。

おかずはるさめ