「子供にはわからない、[R-33]アニメ(笑)」未来のミライ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
子供にはわからない、[R-33]アニメ(笑)
東宝と日本テレビが期待する"ポスト・ジブリ"のひとり、細田守監督の最新作である。CMタイアップの多さは、オトナ都合のマーケティング戦略のど真ん中にあることを表している。
すでに賛否両論の本作。この作品の評価が分かれるとしたら、それは"子供には分からない作品"ということ。この作品の良さをひしひしと感じることができるのは、唯一"親になった人"である。
"つまらない"という感想になるとしたら、残念ながら"ガキんちょ"だからかも・・・(笑)。
かく言う自分も、10数年前までは、夏休みの満員電車で泣く乳児は苦手だった(恥ずかしながら"怒り"に近いほど・・・)。それがいつの間にか、"親御さん大変だろうな"と気の毒になるし、赤ちゃんの元気な泣き声は、むしろ微笑ましくもなる。
この作品は、親ならわかる"あるある話"の集大成である。
乳児の扱いに泣きそうになったこと、親としての自信のなさ、仕事と育児の両立、みんなうまくこなしているのにという不安・・・過ぎ去ってしまえば、そんなことあったけなという経験。
「おおかみこどもの雨と雪」(2012)で、走馬灯のように過ぎ去る子供の成長を2時間で描き切った親目線の時間軸は、さすが細田監督である。
人生における、偶然としかいいようのないタイミングの数々。"恋愛"や"結婚"という出会い、"命"を授かったことを知る瞬間、親から自分、そして子供へと受け継がれる"つながり"の偶然。
本作は、予告編や作品タイトルで頭をよぎった、"またタイムリープもの?"(「時をかける少女」)という不安を見事に裏切っている。くんちゃんのイマジネーションに現れる"ミライちゃん"をはじめとする"現在・過去・未来"のキャラクターは、命のリレーの象徴であり、ココロのタイムリープである。
いい作品だが、一方で、本作はストーリー性に乏しい。同じ細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」や「時をかける少女」にあった"愛"と"別れ"の要素が弱い。
子育て経験のある人には、涙さえ誘うかもしれないが、夏休みに子供を連れて観に行きたい映画ではない。少しばかり普遍性が足りない。
東京都の第一子出産年齢の平均は32.3歳。とすると、この映画の価値を理解できる鑑賞年齢は、[R-33] となる(笑)。
そういう意味で、大人たちの"そろばんずく"を裏切るかもしれない。
(2018/7/20/ユナイテッドシネマ豊洲/ビスタ)
私は子育て体験者で二回目の鑑賞は24歳になる息子と一緒でした。彼は大絶賛でした!私も二回目の方がじわっと来ました。この作品は速効性はありませんが、心をいつまでも温かく保つ漢方薬のような気がします。