「そこに友達がいてくれるだけで世界はまばゆく変わる」志乃ちゃんは自分の名前が言えない ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
そこに友達がいてくれるだけで世界はまばゆく変わる
高校生活が始まる。出かける前に鏡の前で繰り返した自己紹介が、みんなの前だと何故かスムーズに言えない。志乃ちゃんは吃音を抱えた女の子。冒頭の5分間、彼女の胸につかえた思いが痛いほど伝わってきたのは、かくいう私も学生時代に軽く吃音っぽかったからだろうか。
だが、本作は決して吃音だけに特化した映画ではない。そこから見えてくるのは、誰もが何かしら悩みや苦しみを抱えて生きている、ということ。そして、そこに友達が静かに寄り添ってくれるだけで、人生の見え方は180度変わる。
現に冒頭のシークエンスを抜けると、不思議なほど温かみのある映像に包まれる。そしてこれまで一人で奏でていた単音の人生にもう一つの音が加わり、映画の色調も「表現すること」をめぐる和音へと変わっていく。その神々しさ。類い稀なる青春映画を真摯に奏でた演出に敬意を表すると共に、主演の二人はもちろん、いい味を醸し出した男の子も高く評したい。
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