劇場公開日 2018年4月28日

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ザ・スクエア 思いやりの聖域 : 映画評論・批評

2018年4月24日更新

2018年4月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

笑いと戦慄の交差で観客を翻弄する、ハネケとトリアーを足して割ったような異才

「現代美術」という言葉を聞くと、どうしても構えてしまう人がいるかもしれない。一見、誰でも作れそうなほどシンプルなのにコンセプトはやたら高尚だったり、社会的メッセージを訴えながら、作品自体は高額で金持ちのコレクションに収まる、といった矛盾と閉じた世界のイメージがある。だから前作「フレンチアルプスで起きたこと」で人間の深層心理をブラックなユーモアであぶり出したリューベン・オストルンド監督が、今回現代美術界を舞台に選んだことは、とても合点が行く。それは本作が人間のエゴと良心、社会的な良識と現実のギャップなど、相反する要素を凝視し、その狭間で右往左往する我々の姿を、この特殊な世界を利用して意地悪くも可笑しく、恐ろしくも的確に描写するからだ。

とはいえ、昨年カンヌのパルムドールを受賞した本作は、美術自体がテーマなわけではない。主人公がストックホルムの現代美術館の有名キュレーターという設定である。クリスティアンの生活は、上辺は華やかだが、その実苦労やプレッシャーが絶えない。そんな彼が次なる企画で提案したのが、スクエアという展示。美術館の敷地を四角に囲い、「誰もが平等な空間」として博愛精神を象徴するという。だがそんな折、道で人助けをしたせいで財布と携帯を盗まれ、「博愛」などとは言っていられない状況に。取り返そうと追跡したら、移民の子供から言いがかりだと付きまとわれ、おまけに新しい展示のキャンペーンはネットで炎上。まさに踏んだり蹴ったり。

あまりにへたれなクリスティアンは決して好感度が高いとは言えないが、彼が気まぐれに見せる善意が不運の倍返しとなって襲ってくるとき、観客はどうにも同情せずにはいられないだろう。さらに究極のクライマックスであるパーティ・シーンにおいて、まるで動物のようなパフォーマーと、それを見物していたセレブたちのパワー・バランスが崩れた暁には、我々ももはや高みの見物を決め込んではいられないほどの衝撃を受ける。監督はあらゆるシチュエーションで観る者の心を手玉に取り、皮肉な笑いから凍りつく戦慄までもたらしながら、世の中のどうしようもない不条理を実感させるのだ。まるでミヒャエル・ハネケラース・フォン・トリアーを足して割ったような才能と言うべきか。

ストーカーになる女性記者に扮するエリザベス・モスの可笑しさも、効果絶大。

佐藤久理子

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