劇場公開日 2019年3月8日

  • 予告編を見る

「芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように人間の欲、心の弱さ、学習の難しさ、慈悲などの人間臭さを描いた秀作。」スパイダーマン スパイダーバース eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように人間の欲、心の弱さ、学習の難しさ、慈悲などの人間臭さを描いた秀作。

2025年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

興奮

アメリカの高校生マイルス・モラレスは学校の勉強についていけず悩んでいた。ある日一人のスパイダーマンと出会ったことにより彼の運命が変わる。彼は本当の学びを理解し敵や人生の苦難と戦う術(すべ)を身に着けていく。

点数4.5。お勧めします。ヒーローや悪役に弱さや悩みが描写され物語に深みを与えている。キャラクターの人間臭さが魅力の作品。ただし、純粋に善悪が単純なヒーローや悪役も登場する。セリフが早口でハイスピードな展開が多い。2Dと3Dの中間の癖のある絵柄に最初は戸惑う。慣れてくると面白くなる。

主人公のマイルス・モラレスはスパイダーマンの力を得ても最初は逃げることしかできずダメなヒーローなのだが仲間のスパイダーマンに戦い方を教えてもらいゆっくりと強くなっていく。この過程がすごく人間臭い。誰でも最初は初心者なのでうまくいかないのが当然である。

人間臭さが魅力の話といえば芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」であろう。地獄に落ちた主人公カンダタが生前一度だけ慈悲の心で蜘蛛を助けたことに免じて神様が救いの蜘蛛の糸を地獄に垂らしたが、カンダタは己の欲に負け救われるチャンスを逃してしまった話だ。カンダタは人間そのものを象徴しており慈悲の心も利己的な心も両方持つのが人間の本質であるとこの物語は言っている。

カンダタとは逆に本作の主人公マイルス・モラレスは垂らされた蜘蛛の糸を自分の力として世界の人々を助けようとする。本作は芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」を正統派ヒーロー物語にしたような作品である。スパイダーマンの蜘蛛の糸は人を助けたり仲間との絆を深めたり悪をからめ捕るのでまっすぐで丈夫な人間の正義の心を象徴している。一方で芥川龍之介のほうの蜘蛛の糸は切れやすく人間の心のあやうさを象徴している。

正義の心や心のあやうさなど人間は良い点も悪い点も両方もっている。神が完璧な人間を創造しなかったのはなぜか。なぜ完璧な人などいないのか。私の考えた答えは「変化に富む人生こそ人類の最大の財産である。」というものである。

視聴:液晶テレビ(有料配信NETFLIX) 初視聴日:2025年6月  視聴回数:1(早送りあり)  視聴人員:1(一人で見た)

コメントする
eigazuki
PR U-NEXTで本編を観る