「演技と演出の絶妙なハーモニー」ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
演技と演出の絶妙なハーモニー
ジョー・ライトは光の使い方が上手い。と旦那が言っていた。
窓の光、人物の顔を照らす光、孤独を切り取るような光、緊張感漂う真っ赤な光。
この映画を思い返すとき、なるほど確かに光は雄弁にそのシーンを物語る。
「ウィンストン・チャーチル」は第二次世界大戦中のイギリスが舞台で、チャーチル首相就任からダイナモ作戦前夜までの、短い期間を題材としている。
まとめサイトもポータルニュースもない時代、政治家の演説に皆聞き入って、少しでも戦況を知ろうとしていた。
そんな時代、チャーチルは3本も「名演説」を書いている。言葉こそが彼の武器で、彼の言葉が無ければ世界は今と同じ形では存在しえなかっただろうと、私も思う。
そんなチャーチルが、どのように自らの言葉を昇華させていったのか?
チャーチル自身の言葉を損なう事なく演出する、その手法こそ「光」なのだろう。
老獪なイメージのあるチャーチルだが、置かれた立場は厳しい。そんなチャーチルに「光」はそっと寄り添って、彼の孤独や葛藤や信念を私たちに伝えてくれる。
個人的には「英国王のスピーチ」「ダンケルク」の2本を観ていたので、どこか懐かしい感じすらした。もちろん、チャーチル自身があまりにも有名なので、観ていなくても特に困らない。
第二次世界大戦は今の世界が構築された、重要な分岐点だ。当然作品数も多い。
色々な国が大きな決断を迫られ、そこかしこに大小様々なドラマがあった。その集合体が今の世界なんだと思うと、まだまだ知っておかなければならない事が沢山あると思う。
戦後半世紀以上が過ぎて、もっと多くの映画が作られていくだろうが、「ウィンストン・チャーチル」のような見応えのある映画が増えることを望む。