「その人次第の受け取り幅」君の名前で僕を呼んで こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
その人次第の受け取り幅
ザックリまとめてしまうと、ゲイカップルのひと夏の恋、なのだが
それがなぜこれほどまでにまぶしく切なさを伴うのか。
彼らはバイでもあり、もしかするとそれは世間の目から逃れるためのものであるかもしれない。
それについては言及されていないが
友人とのやりとりなどから、やはりおおっぴらには
言えないものであったろうとわかる。
とはいえ、主人公の少年エリオの両親は
知的階級で理解のある環境だ。
それゆえ自身にとまどいつつも青年に思いをぶつけることができたともいえる。
一方青年のほうは、同性愛がどうみられるかもよく知っていて
だからこそ本心から大事な彼に対して
気楽に行動に出ることはできなかったのではなかろうか。
そんな状況で結ばれて、互いに一つの半身と感じ
幸福な時間を過ごす。
しかし青年にはわかっている。
この幸せな時間はいつまでも続きはしないし、
なんなら誰にもこの時間のことを話すことも許されないと。
少年のほうも終わりが来るとはわかってはいるけど
青年のほうほどはつかめていない。
目の前の喪失に悲しむ少年に語り掛ける父親の言葉が
大切な子供、若い者へ
いまはわからないかもしれないが、と
含蓄のある内容で素晴らしい。
全ての愛に悩む若者へこの父の言葉は響くのではなかろうか。
ほかに作中に登場する曲や文学、ギリシャ美術に
暗喩されるものも多々あるそうで
浅学な私にはとてもすべてはつかみかねず。
あらすじを追うだけでも楽しめるのだが、
さらにどこまで理解を深められるかはその人次第。
感動の深さも異なる作品だ。