君の名前で僕を呼んで : 映画評論・批評

君の名前で僕を呼んで

劇場公開日 2018年4月27日
2018年4月17日更新 2018年4月27日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

ティモシー・シャラメの輝かしい魅力に満ちた主演デビュー作

君の名前で僕を呼んで」を観て、この映画の脚本を手がけたジェームズ・アイヴォリーの監督作品「眺めのいい部屋」(1986)を思い出した。あの映画の舞台は20世紀初頭。イギリスの上流階級の少女がフィレンツェの陽光のもと、頑なだった自分を捨てて恋に落ちる物語だった。今回は80年代の北イタリアが舞台。そこで両親と長いヴァカンスを過ごす少年エリオが出会ったのは、年上の青年オリヴァーだ。

熟れた果物に歯を当てた時に飛び散る汁のように、夏の光が二人に降り注ぐ。青い湖のせせらぎが、風が、ピアノの音が、エリオを官能へと誘う。我を忘れるような最初の恋の感覚が観る側の身体になだれ込んでくるような、センシュアルな映像が素晴らしい。そしてこの恋の描写はとてもデリケートだ。オリヴァーはエリオの思慕を利用して、彼を支配するようなことはしない。ゆっくりとエリオの真意を確かめるように、彼の無垢を慈しむように、青年は少年に近づいていく。だからこそ、二人が結ばれるシーンは美しいのだ。十代が年上の人間とひと夏の恋を経験して、大人になっていくというプロットの映画は沢山ある。だけど、この映画のエリオほど大事にされた主人公はいない。このデリカシーは「君の名前で僕を呼んで」が普遍的でありながらモダンな作品である証のひとつになっている。

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溶け合うように肉体的に結ばれた時、オリヴァーはエリオに「君の名前で僕を呼んで」と囁く。今やエリオはオリヴァーで、オリヴァーはエリオである。夏が終わる頃、エリオは永遠に自分の一部だったものを失い、新しい彼になっていく。そのエリオを包む父親のパールマン教授を演じたマイケル・スタールバーグがいい。彼はエリオの恋を裁くような真似はしない。パールマンが最後にエリオに話すシーンは感動的だ。これはどのような初恋も祝福されるべきだという、ジェームズ・アイヴォリーから若い世代へのメッセージなのだ。そして劇中のエリオと同等に、この作品ではティモシー・シャラメという新しい才能がとても大事にされている。たった今しか観られない彼の輝かしい魅力に満ちた、主演デビュー作だ。

山崎まどか

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平均評価
3.8 3.8 (全178件)
  • 恋愛不感症でも、胸キュン 予告編でピンときた通り、大変好みの映像でした。 自然光でフィルム撮影、素晴らしいです。 レンズも一本しか使用していないとは(観直しに行こうかな??) 父ちゃん加点が0.5、車加点が0.5。 恋... ...続きを読む

    凪 さん  2018年8月9日 01:06  評価:4.5
    このレビューに共感した/0人
  • 難解だが美しく。 美しい風景や心安らぐ音楽が素晴らしいが、なにより難しい…。今まで見た中でも5本の指に入るほどの難解さ。しかしこの難解さの訳を考えれば考えるほど人間本来の姿が浮かび上がってくる。 人間の感情は単純... ...続きを読む

    ジョーカー ジョーカーさん  2018年8月5日 16:42  評価:4.5
    このレビューに共感した/0人
  • 最後に... いや、お父さん全部持っていくんか~~~い! ...続きを読む

    lenovo lenovoさん  2018年7月27日 17:16  評価:3.5
    このレビューに共感した/0人
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