「2018年」君の名前で僕を呼んで Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
2018年
君の名前で僕を呼んで “Call Me by Your Name (2017)”
アカデミー賞で色々とノミネートされ、脚色賞では受賞を果たした、最新作品。
さて、第90回アカデミー賞シリーズですが、今作はまさに2018年を着飾るような作品でした。
最近よくアカデミー賞で言われていることは、みなさんご存知”多様性”。
人種やLGBTQのような言葉をよく耳にすることが多くなりましたが、映画業界もそれを追い風にするように、映画の多様性にはかなり拍車がかかっていると思います。
今作品で取り上げられるテーマは、男性同士の恋愛です。
主人公エリオが男性への感情を自分の中に見出して、それをどう表現すればいいのかという新鮮な初恋のような物語です。
改めて考えてみると、初恋を描く作品というのは映画業界ではアニメーションやファミリー映画のようなものとして捉えられることが多いですね。
高校生になって初恋なんて言われても、視聴者からすれば少し信じがたいものがあるのかもしれません。
だからこそ、こういうテーマは新鮮で新しい風を感じます。
みなさんに受け入れられる理由もそれかもしれません。
音楽や小説では実際に映像を描写するのは聴く側、読む側だから、彩よく描くことができますが、映画となると、実際に役者がいて映像を描写するのは作り手側。
その違いを乗り越えるきっかけが時代であったということのような気がします。
時間の経過とともに、感情が変化していく様子は脚本で美しく描かれていたと思います。ヨーロッパの映画ということもあり、またハリウッド映画とは違った、芸術性も感じることができますね。
けど、正直にいうと、ちょっと評価しがたい作品。
まずテーマからいうと、自分の美的感覚がまだ2018年の風に追いついていないのかもしれない。
なぜかというと、どうしても自分の感覚と違いすぎて、キャラクターを信じることができない。尊いとか、美しいとかいう感覚はわからなくはないけど、感情移入することは全くできない。
そこに、家族が入ってきたり、友情が入ってくると、さらにジェネラルになって、感情移入ができるのではないのかなと思う。
だからこそ、Xavier Dolanの作品には120%感情移入できる。テーマは家族、キャラクターの個性として同性愛者を取り入れていいる。その小さそうで大きな違いが、自分の中では映画として楽しむことができるのかどうかということにつながってくる。
そして、映画制作的な面からいうと、脚本は美しいということは、なんとなくわかる。撮影もヨーロッパの手法をつかい、さらにはフィルムの良さも街並みとうまくかみ合っていた。
いちばんの問題は、編集。
低予算だからカバレッジが少ないのはわかるけど、本当にもったいない魔の使い方をしてるなーと思った。前半はそれほど感じなかった。それは二人が自転車で湧き水の湖的なところに行くシーンのワイドの長さは絶妙だった。
しかし、それ以降、何が起こったのかワイドからクロースアップに行くタイミングに違和感を感じまくり、さらには、シーンとシーンのトランジションも急に雑になって。全くストーリーやキャラクターと関係ないのりづけのようなものが、かなり気に障った。
後半のお父さんとの素晴らしいシーンも、絶対あのタイミングじゃないと思う。これが、プロダクション側の責任だとも考えられるけど、それはそれでそこに問題がある。
あとは、音楽。出だしのピアノとストリングスのクラシック音楽はとてもキャラクターとマッチしていたし、ストーリーをかなり後押ししていたと思う。しかし、中盤、クラシックではなくなり、急に楽曲になった瞬間に、そこまでに作り上げてきたものが崩れた印象。それが意図的であったならいいが、それでも、崩す理由には当てはまらない場所だったと思う。
そういう意味で、全体を通していうと、理解できていない自分なのか、それともこの映画自体なのか、そこがまだうまく分析できずに終わってしまったような感じ。
とにかく、後半が本当に好きじゃなかった。