「初めての恋と最後の恋」君の名前で僕を呼んで ダコタさんの映画レビュー(感想・評価)
初めての恋と最後の恋
ひと夏の燃え上がるような恋の思い出。
永遠を前提とした恋の話ではなく、一瞬を煌くように燃えて散る儚い青春の思い出すべてを凝縮したような、ただただ綺麗な映画。
北イタリアの美しい夏、歴史芸術の美、ピアノの美しい音
これでもかという映像美で視界を埋め尽くしてくる。
細かい部分まで意図して仕組まれた雰囲気に呑まれてしまう。
ひとつひとつの映像、しぐさ、小物、言葉、音楽が、見ている人の官能を引き出そうとしているとひしひし感じた。
そして長身でいい体をしていてハンサムで性格もさわやか、すべてが男として完璧なアーミー・ハマーを見せつけられて、やられたなあと感じた。
こんな人物と出会ってしまったらそりゃあ惚れずにはいられない。
本当に美しくて、切なくて、見た後も数日間余韻が抜けきらない。そんな中、あまり高評価をつけたくないのは、共感できない部分と狙いすぎな部分があるからかもしれない。
主人公エリオは繊細で女性的な感性を持つ少年に感じたが、それにしてはオリヴァーに自分の気持ちを明かしたいと行動する辺りはやや積極的すぎて自己中心的に感じてしまったし、その他の様々なシーンでもめんどくさい女のような性格がひっかかってしまった。
恋の経験が少ない少年のリアルな青春なのかもしれないけどもう少し男性的にしてもよかったのではと思う。
こういう点が、あえて同性愛でなくても…女性でも成り立った話なのでは?と感じてしまう。
そしてオリヴァーは、エリオにいつ惚れたのかが分からない。「ビーチバレーをしているシーン」でと本人は言っていたけれどそうならばそれなりの予兆をもっと映像で表現してほしかったし、結局のところ、プレイボーイが若気の至りで火遊びしたけど人生をささげるリスクを冒すほどの恋じゃなかったし、満足したから故郷に帰って元の彼女と結婚するよみたいな感じに捉えてしまえなくもないので、オリヴァーの誠実さをもっと見せてほしかった。
オリヴァー、結局雰囲気とかに流されてただけじゃないのかな…
エリオにとっては初恋だったけど、オリヴァーにとっては最後の遊びの恋だったのかな、と。
あと両親の視線がいたたまれない…。恋愛事を両親にはオープンにしない日本人だからだろうか。
見ていて羞恥心を感じてしまうのはつらい。
誰の視点で見るかによって評価は分かれると思う。
父親の告白は非常によかった。むしろ、この映画のすべてをかっさらっていくようなシーンだった。
だがここでも、こんなに主人公の周囲に同性愛者が溢れているという点で違和感。
綺麗すぎる世界。
セックスシーンもそこそこあからさまなので、DVDを買っても見返せるかどうかわからないけど、映像シーンの美しさは遠い昔に失った美しい青春そのものなので機会があればもう一度見たいような気もする。