「ヨーロッパの夏とティモシーシャラメ」君の名前で僕を呼んで hyvaayota26さんの映画レビュー(感想・評価)
ヨーロッパの夏とティモシーシャラメ
夏の光がそそぐヨーロッパの美しさと、ティモシーシャラメの未完成な危うさが魅力的。果物の甘い匂いが充満しているみたい。
英語、イタリア語、フランス語が混在し、ドイツ語の朗読もあり、言語の境界はあいまいだ。アプリコットの語源のように変遷していく。性や自己と他者の境界のように。
エリオの性はまだゆらいでいて、知的な両親の元で育った彼にあるのは、ただまっすぐに欲望をぶつけること。彼はゲイに目覚めたのではなく、心を通じた相手がオリヴァーだっただけ。エリオの心の動きが繊細に表現され、二度とない17歳の夏を閉じ込める。
オリヴァーのマッチョで支配的な振る舞い。肩幅が広くて自信家のアメリカ人。彼はいつでも主導権を握りたがる。
エリオとオリヴァーの思いが通じた後、それまで自信たっぷりだったオリヴァーは常に不安な表情を浮かべるようになる。反対にエリオは生き生きし出す。愛を知った者、その愛を恐れる者。
理解ある素晴らしい両親、美しく優しい女友達、邸宅、秘密の場所、才能、そして別離、描かれているのはこうであったらという理想の10代なのかもしれない。もう若くはない私たち、何かを逃してしまった私たちにあの頃の気持ちのはかなさと永遠さを思い出させてくれる。
蝿が気になるが、蝿はタナトスだろうか。オリヴァーとエリオがキスする場面、マルシアに冷たくする場面、暖炉の場面…。
この映画はアイヴォリーの「モーリス」と呼応している。アイヴォリーが監督だったらとも思うが、それは叶わぬ夢。
個人的にはアーミーハマーがマッチョすぎて苦手だったのと、いつ好きになったのかが今ひとつわからず、前半乗り切れなかった。でもとにかくラストの暖炉の長回しだけで100万点。