「もはやLGBT映画はマイノリティではない」君の名前で僕を呼んで Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
もはやLGBT映画はマイノリティではない
イタリアの避暑地で、24歳と17歳の若いイケメンの2人がひと夏の恋に落ちる。美しい風景と美しいお顔と、美しい身体…なんとも甘酸っぱくすがすがしい。
本作は、バイセクシャルを描いたLGBT(セクシャル・マイノリティ)映画であり、第90回アカデミー賞では作品賞にもノミネートされ、脚色賞を受賞した。
アカデミー賞では、昨年も同性愛が描かれた「ムーンライト」(2017)が"最優秀作品賞"を受賞し、2016年にもやはり「リリーのすべて」や、「キャロル」があった。すでにLGBT映画はメジャーで、"マイノリティ"ではない。
今どきといえば、FACEBOOKのユーザー基本設定にしたって、ジェンダー(性別)のカスタムは58種類も用意されている。"あの人が好き・・・"という好意にも異性・同性を問わず深度があるように、確かに恋愛の形が無限にあることは理解できる。
個人的には、かつて教育評論家の尾木ママ(尾木直樹)のセクシャル・マイノリティについての発言が印象に残っている。
"もともと人間の性っていうのは、例えば一億三千万人いたら一億三千通りある。その原点に、(社会が)いま気付き始めてきたかなっていう段階ですね"。
それでも"マイノリティ"と呼ばれるのは、今なお隠さなければならない現実が存在するから。そして本作のように"LGBT映画"とくくる作品が存在することにほかならない。
監督は、前作「胸騒ぎのシチリア」(2016)でアラン・ドロンの「太陽が知っている」のリメイクを撮ったルカ・グァダニーノ。美しい風景もさることながら、色彩力豊かだ。映像をエリオ(ティモシー・シャラメ)とオリヴァー(アーミー・ハマー)の美しいラブストーリーに昇華させている。
画期的なのは、17歳のエリオを支える両親の先進性である。2人の交際を認めてしまうばかりか、アドバイスまでする。母親のアネラは、息子のエリオに古いフランスの小説を読んできかせる。父親のパールマン教授は、"人を好きになることを自制してしまう"ことによって、失うものの大きさを諭す。性教育を超えた人間教育をわかっている両親の凄さに、感銘を受ける。
(2018/5/12 /TOHOシネマズシャンテ/ビスタ/字幕:松浦美奈)