「全編美しい…」君の名前で僕を呼んで ジンジャー・ベイカーさんの映画レビュー(感想・評価)
全編美しい…
LGBT映画が割と好きなことに加え、前年度の各賞にてノミネート、受賞した本作にはかなり期待していたが、その期待を全く裏切らなかった。
ストーリーは80年代の北イタリアを舞台に、主人公と、主人公の父親が教授であることから6週間滞在することになった大学生の恋物語である。
LGBT映画において、その性的な生々しさを演出によって中和してほしいというのが個人的な願望ではあるが、本作の場合、情景の美しさ、映像美によってそれがなされている。
全体を通してキャラクターの心情描写は繊細なものではあるが「ムーンライト」や「キャロル」で見られたようなシリアスな雰囲気は無い。80sにおいて世間的に同性愛はタブーであったと思われるが、主人公エリオと大学生オリヴァーの同性愛に対しての葛藤は比較的薄いものに思える。しかし、その軽快さが北イタリアの風景に、主人公を含めた家族の優雅な生活空間に、ピアノを基調とした音楽に完璧にマッチし、男二人の恋愛模様は美しいものであり続けた。
主人公を演じたティモシー・シャラメは完璧な演技だった。ピアノも自身が弾いていたり、涙ぐんだり、寂しがる表情は素晴らしかった。アーミー・ハマーもイケメンな好青年を見事に演じていた。
本作の素晴らしい点はやはりLGBT映画だと感じさせない純粋な愛とこだわった演出である。同性愛の物語や起伏が無いストーリーに退屈してしまう人にはオススメできない映画ではあるが、エンドロールを使わない稀有なクレジットまで含めて全編、一つ一つのシーンが美しくナチュラルで、その世界に飛び込みたくなる。
"Call Me By Your Name" ラストシーンでは涙が止まらなかった。