「ハリポタファンの支持を食いつぶす駄作」ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 MADAKIさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリポタファンの支持を食いつぶす駄作
とにかく、観客の求めているものを制作陣が全く理解していない。
前作がウケたのは、個性的な魔法動物の活き活きとした動きを最新鋭のVFXで描き出したこと、逃げ出した魔法動物を主人公と狂言回しの非・魔法使いの凸凹コンビが追うというシンプルながらしっかりとした話の筋があったためだと思うのだが、今作はそうした作品の魅力がほとんど失われている。というより、最早「ファンタビ」のタイトルで繰り広げるべき物語とはとても思えない。
・前作のラストどこいった!?
前作のネタバレになるが、主人公たちが巻き込まれたNYを揺るがす大騒動の結果、大規模な忘却術で相方役のノーマジ(非魔法族)ジェイコブも魔法に関する記憶を忘れ日常生活に戻る。ニュートによる置き土産で念願のパン屋を開業し、そこで良い仲だった魔法使いのクイニーと再会する…辺りで物語が終わる。個人的にはこのラストがとても秀逸だと思っていたので、今作でその辺り何もなかったようにジェイコブが登場して一端の顔で今回の事件にも首を突っ込んでいくのに違和感しかなかった。というかクイニー、魔法族と非魔法族は結婚できない→なんか革命的なこと言ってるめちゃめちゃ怪しいグリンデルバルト陣営につく、ってちょっとバカすぎないか。リアルにいたら何の役にも立たないマイナスイオンが出るペンダントとか買ってそうだ。
・魔法動物どこいった!?
ファンタビの最大の魅力は、最新鋭のビジュアルエフェクトで活き活きとキャストと共演する魔法動物だと思うのだが、今作はその影が薄い。薄すぎる。ケルピーや(おそらくオリジナルの)ズーウーなどところどころ魅力的な動きをするシーンはあるものの、本筋に絡んで活躍したのはカモノハシの変種のようなニフラーぐらいのもの。ニュート、トランクどこかに預けといた方がよかったんじゃない?
・クリーデンス君の話、いる!?
前作に登場したなんかよくわからんヤバいエネルギーを持つ悩める少年クリーデンス君。見世物小屋で蛇に変身できる少女と仲良くなったり、自分をアメリカに送った親を探したりと自らの出生の秘密を探るのが今作の筋の一つになっているが、こんなぽっと出のキャラの掘り下げをされてもなんだかなあ…という感じ。結末でクリーデンス君が実はダンブルドアの系譜に連なるものであるというネタバレがなされるが、唐突すぎるうえに無理やり重要なポジションにしたかった感じしかしないので「ふーん」としかならなかった。
・過去の遺産を食いつぶすダメ息子
今作はジュード・ロウ演じる若き日のダンブルドアや、その因縁の相手で、ジョニー・デップがキャスティングされたグリンデルバルトにスポットが当たった作品となっている。単品で見れば2人のベテラン俳優の共演は魅力的なのだが、やはり「ファンタビ」の枠でその物語やる必要なくない?これ以外にもハリポタ本作で闇の魔法使いを輩出する一族レストレンジ家、「賢者の石」でほぼ名前だけ登場したニコラス・フラメルなども登場するが、正直それだけでオールドファンは大喜びすると思っている制作陣の思惑が透けて見えてしまう(興業成績を見る限り成功したようだが)。
あと邦題、「黒い魔法使いの誕生」って何?せめて原題「The Crimes of Grindelwald」に寄せる努力をしろよ。だいたい黒い魔法使いってグリンデルバルトなのかクリーデンスなのか意味不明だし、どっちももう誕生してるんだからこのサブタイトルはマジで理屈が通らない。こんなセンスのないサブタイつけちゃうあたり、配給陣もどこまでやる気があるのか怪しいものだ。