ナチュラルウーマンのレビュー・感想・評価
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それでも歩き続けることの力強さ
マリーナは歩く。風が吹こうが、雨が降ろうが、彼女は歩き続ける。カメラは彼女を追い続ける。時に後ろから、時に正面から、時には側方から…。
トランスジェンダーに対する、過剰な演出は最低限に抑えているが、遠巻きに彼女を見る世間の人々の姿にリアリティが生まれる。辛辣な言葉も、オブラートに包んだ表現も、主張の本質は変わっていない。どうして世の中は自分と異なる者に対し、これほどまでに排他的なのか?かくいう自分だって価値観の違う人に攻撃的な態度をとってしまうこともある。人とは実に愚かな生き物である。
しかし、どんなに差別的な扱いを受けようと、どんなに酷い言葉を浴びせられようとも、彼女は決して乱暴な言葉で言い返さない。内に秘めた怒りを抑えながら、溢れ出そうな涙をこらえながら、一人の人間として歩き続ける。それが彼女の強さであり、最大の自己主張なのだと思えてくる。
風が強く吹き付ける、雨が強く打ち付ける、けれども、時に暖かな日差しや美しい夕焼けが彼女を照らすからこそ、この物語の向かう結末に一抹の希望を感じられずにいられない。物語の後半、彼女は遂に涙をこぼす。愛する者を失った哀しさか、それとも自分の在り方が正しかったという安堵感か。恐らくは、その両方が入り交じった感情だろう。そのことを表現するかのようなラストの歌唱シーン。穏やかな感情を歌い上げる彼女の声がいつまでも耳に残る。
自分らしく生きる大切さ
あなたはどう向き合うか
自身もトランスジェンダーであるという歌手・女優のダニエラ・ヴェガ主演による、本作。
近年の数々のLGBT映画にはややウンザリしてきたが、トランスジェンダーである彼女による(ある意味、ドキュメンタリー的なリアリティを孕む)この作品の訴えかけるものは、まるで説得力が違う。
彼女の意志は非常にシンプルだ。ただ一人の人間として生きたいという、その純粋な思いが、多くを語らぬ作風に現れている。多くを語らぬというよりむしろ、どうして多くを語る必要があろうか、ということである。
この寡黙に抵抗する作品はLGBTの生き方そのものであり、我々に立場の自由を保障した上で、彼らにどう向き合うべきなのか強く問いかけている。
あなたはどう向き合うか。私はまだ答えが出せない。
全てが融合され迫ってくる
監督の志が高いだけに、主張するところが強い作品。単に主張しているだけにとどまらず、映像や音楽、演出など全てが融合して、何か強烈に伝わってくるものがあった。
最近はLGBTをテーマにした優れた作品が多いと思っているけれど、それは単に物珍しさに興味を抱いているだけなのかもしれない。どんなに理解を持とうと思っても、理解できない怪物だと彼女・彼らたちを見ている自分がいる。差別を受ける当事者も同様のようなことが言えて、自分を卑屈に見て人目を避けているようなところもあるだろうし…。
徐々にLGBTが浸透し、偏見も減って世の中に受け入れられていると思っていたけれど、それはまだまだ幻想で、ここから数十年後・数百年後、こういった問題がどうなっているのか全く想像がつかない…と色々と思うところが多い作品だった。
神の仕打ちに反逆する覚悟
自分らしく生きるのは難しい。
今年の大事な一本。祝アカデミー外国語映画賞受賞!!
トランスジェンダーと本作で語っているテーマに関しては下記の町山智浩さんと鈴木みのりさんのツイッターでのやり取りがとてもわかりやすいので転載いたします。(広く見られる必要があるとのことでしたので。)
映画『ナチュラル・ウーマン』について。同性婚について言及することへの疑問。 - Togetter
https://togetter.com/li/1202626
本作で主人公は自分をトランスジェンダーであるということを匂わせるセリフは一言もいいません。「私は人間よ!」ただこの一言だ。人間であって、人を愛して、普通に生きる。
それを否定する資格なんて誰にあるのだろうか。
主人公が雨に打たれたり、わざとらしいくらいの追い風にさらされたり、親戚から酷い仕打ちを受けたりします。それでも前へ前へ進んでいく、強く生きて行こうとする主人公の姿に自然と涙が。。。
マリーナ役を演じたダニエラ・ベガさん自身もトランスジェンダーでありシンガーでもある。まさにダニエラさんにしか出来ない役柄!今年の大切な一本になりそうです。アカデミー外国語映画賞にもノミネート中。
自分で決めた道を突き進む強さ
今年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品
「ありのままの自分」で生きる主人公が清々しく、ポジティブなパワーをもらえる作品だった
歳の離れたマリーナとオルランドは、強く愛し合うカップルだった
しかし、オルランドが動脈瘤で急死してしまう
そして、その場にいたマリーナは、何もしていないのに疑われてしまう
彼女がトランスジェンダーだという理由だけで
この物語は、愛する人にお別れの言葉を言いたいのに、彼の家族から拒絶されてしまい、愛する人に一目会うために差別や偏見と戦うマリーナの物語である
マリーナは社会からの向かい風にも、どしゃ降りの雨にも屈せず、前に向かっ歩き続ける
彼女に対する差別や偏見が本当に酷い
警察も、病院も、彼の家族も、彼女を化け物扱いする
それでも、何回くじけても、毎回立ち上がる彼女の強さは爽快だった
なぜ、彼女は毎回立ち上がれるのか
その秘密は鏡にあった
くじけそうな時はいつも、鏡が彼女の前に現れる
それは、彼女が鏡に映る自分を見て、現実と向き合うためのものだった
辛いときこそ現実と向き合い、それを受け入れ、ありのままの自分でいるために鏡はあった
そんなマリーナの生き方は「自分らしさ」を見失ってしまった多くの人たちに勇気を与えるに違いない
誰だって、周りから酷いことを言われれば、立ち直れないぐらい落ち込んでしまう
それでも彼女は誰に文句を言われようとも、立ち上がり前を向く
その強さの源は、オルランドへの愛と、自分で決めた道を進む決意にある
自分の人生は自分で決めたもの
だから、周りに何を言われても突き進むだけ
そんな「ありのままの自分」を受け入れたからこそ、彼女は強く生きられるのだと思った
思わず応援したくなる
思わず応援したくなる
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