ナチュラルウーマンのレビュー・感想・評価
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自分らしく生きればいい
大きな喪失と偏見、差別に
自信を失いそうになりながらも
自分らしく生きようとする主人公、
自分の常識や定規の外だからと差別する人たち、
主人公を思いやり、支える人たちの姿を観ながら
普通って何だろう、
人間の尊厳って何だろうということを
考えました。
性より大事なこと
女性である前に
男性である前に、自分は人間であるということ。
それをまっすぐに抱きながらも、周りからの根強い差別に折れかけるマリーナ。愛しい人を失った喪失感を受け止め癒す機会すら与えられず、恋人の家族からはバケモノ呼ばわり。イグアスの滝を夢見ながら、オルランドの遺した鍵でサウナのロッカーを開けるも中身は空っぽ…そこで何かが吹っ切れたのか。
凄く辛い映画だし、正直ラストまで観たところで救いがあるとは思わない。けどマリーナの折れそうで折れない強さ、いつまでも街の色んな場所に愛するオルランドの影を見ては目に涙を浮かべる姿に引き込まれる2時間だった。
アレサ・フランクリンのご冥福をお祈りします
トランスジェンダー女優による一途な愛の物語。
心地良く甘美な木陰のような人との出逢いはかけがえなく、永遠に心の拠り所となるんだなぁ...
ヘンデル/オンブラ・マイ・フ、アラン・パーソンズ・プロジェクト/TIMEが美しく使われている。
性同一性障害の主人公が受ける差別ということ以外に、葬儀に愛人が参列...
性同一性障害の主人公が受ける差別ということ以外に、葬儀に愛人が参列することに対しての妻の抵抗があり、それを差別と言うのかどうか。いずれにしても、主人公が自分の意思を貫こうと挑む姿は、逞しく美しいが。
主人公が、マイケル・シャノンに見えて仕方なかった(^^;
みんなで克服しよう
病気ではなく、一つの生き方と認められるようになったLHBT(本作ではトランスジェンダー)。常識だったことが偏見・差別と言われる辛さはあるが、本人はもっと苦悩し辛い。本作はその問題を直視している。
本人も周囲も、克服の努力が必要。
人がいなくなるということ
トランスジェンダーの話なんだけどね、観終わったときには「人が一人いなくなるって大変なことなんだな」と思ったよ。
主人公はどうにかこうにか折り合い付けて乗り越えてね。でも主人公の恋人の家族達も大変だったと思う。夫/父親に同性の愛人がいて、最後を愛人のところで迎えてるんだから。
主人公は愛人の死とその葬儀あるいは相続の関係で酷い目に遭ってくの。「そんな酷いことしないでよ!」とは思うんだけど、相手の感覚も解らないではない。
相手がトランスジェンダーでもそうでなくても、他人には優しくした方がいいなと思ったね。
あと「人間って理解できないものに出会うと拒絶するんだ」と思った。これ本能なんだろうな。原始の時代に理解できないものに「なにこれ?面白そう!」って近付いてく遺伝子は、死滅する可能性高いもんね。
脚本がんばれ。
LGBTがテーマの映画はよく見に行っている方ですが、この映画はそのジャンルの中では評価が低いかな。
どうしても見なきゃっていうほどのものではない。
主演の人の体当たりの演技、話題性はとてもよかったと思います。
自分らしく強く美しい最上の女性の生きざまを見ました
自分らしく生きるとは何なのか。人とのつながり、人間らしくとは何なのか、考えさせられる映画でした。
トランスジェンダー、性愛、友愛、マイノリティへの差別、偏見を受けてなお、ただただ自分を貫き、女性として愛し愛された喜びと誇り、不躾で無遠慮な偏見に立ち向かう主人公に奮え、応援したくなりました。
なぜこれほど美しい人がさげすまれなければならないのか。
自分と違うところを見つけ嫌い攻撃しさげすむ狭窄的な人間性と、最愛の人と向き合うことを真摯に望む愚かしいほどの情の深さ、人間の2面のありようを真っ向からぶつけてくる映画でした。
見ていて苦しいところも多々ありますが、見てよかったと、見るべき映画だと感じました。
邦題の由来が素晴らしい忘れ得ぬ傑作
昼はウェイトレス、夜はナイトクラブでボーカルをやっているトランスジェンダーのマリーナは年上の恋人オルランドと同棲中。中華料理屋で自分の誕生日を祝っている時にオルランドはイグアスの滝を見に行こうと提案、喜ぶマリーナ。しかしその夜、オルランドは体調の異変を訴え、慌てて病院に搬送するが亡くなってしまう。動揺するマリーナはオルランドの弟ガボに事情を告げるがオルランドとマリーナの事情を知るガボはこの件はまだ誰にも知らせるなと告げる。そしてマリーナはオルランドの死に事件性があると疑う刑事、オルランドの家族から偏見に満ちた仕打ちを受けることになる。
オルランドが亡くなった瞬間から自分を待ち受ける様々な困難に自覚的なマリーナが、傷つきながらも愛する人のために何を為すべきかを見つめ行動する姿が痛々しくも美しい。オスカーの外国語映画賞ほか数多の賞レースを制したのも当然の、実に力強く美しい作品でした。マリーナが車の中で聴いているアレサ・フランクリンの曲タイトルがこの邦題の由来ですが、歌詞がさりげなくマリーナの心情を代弁する見事な選曲。そこからタイトルをつける計らいもまた美しいです。
57歳
LGBT映画のブエノスアイレスの登場人物ももイグアスの滝を目指していた。この主人公もLGBTに対する偏見などを圧倒的な力で無きものにする滝に憧れたのだろうか。そして、その具象化である白い封筒を探していたのだろうか。
自分の55歳の誕生日の翌日に見に行った。主人公の相手は57歳の設定。キチンと人間ドック受けようっと。
ヒトを思いやれる人間か。シンプルにそこなのかな、と。
トランスジェンダーの女優がトランスジェンダーの役を演じている。
LGBT作品はあまり足が向かないのだけれども、ここのレビューにあった「女性として扱ってほしいとは言わない。ただ人間だと主張するだけ」という記述に惹かれて観賞。
正直、主人公を含め登場人物の思惑がわからない行動が多々で…うーむ。
本人の意思の強さ、より周りの人の接し方が印象に残ってる。
LGBTに理解がある、関係性が私的/公的か…でなくヒトを思いやれる人間か。シンプルにそこなのかな、と。
悲しかった。
マリーナという女性がとてもひたむきで素敵で優しい女性だっただけに、マリーナの受ける扱いが終始酷くて辛くて悲しいものだった。トランスジェンダーの方って、実際の女性よりも女性らしく、内面が素敵な方ばかりですよ?まだまだ、これが現実なのか?と思うととても悲しかった。
社会は自分を映す鏡
LGBTというテーマが映画で頻繁に扱われるようになって久しいが、ここ数年はさらにその傾向に拍車がかかっているかのように感じる。少々食傷気味ではあるが、いわゆるストレートな人々を通して描くものには限界を感じている映画製作者たちの事情も伺える。
つまり、映画を量産するような経済的に豊かな国々においては、人々の生活は満たされきっており、観客や映画祭の審査員たちの心をつかむような物語や世界の切り取り方は難しい。
もちろん、政治の世界だけでなく、教育や職場でもLGBTへの偏見や差別をなくそうという機運は世界的に高まっており、これが現在最も人間社会を語るうえで外せないテーマであることは間違いない。しかしこのこととて、物質的に何の不自由もない世界であるからこそ議論される問題なのではないだろうか。
この作品もそんなLGBT映画である。原題の直訳は「素敵な一人の女性」。このような素朴な自意識を持つに至るまでの苦悩が描かれる。
人間は自己の有様を、他人の目を通じてしか意識することができない。とは、社会学の本に書いてあったこと。
差別や偏見に苦しむとは、まさにこのことであることをこの映画は語っている。しかも、鏡という映画ではとてもオーソドックスな道具を使用して表現しているのだ。
自分を映し出す鏡面の状態によって、そこに映る自分の姿は変容する。業者が運ぶ鏡がゆらゆらとゆがむことで、鏡の中の自分が現実とは似つかない姿になるのを見つめるシーンはその象徴である。
そして、膝を抱えてベッドに座るラスト近く。マリーナは股間に置いた鏡に映る自分の顔を見つめる。鏡の下に隠れたものが何であろうと、自分は自分でしかない。
「オンブラマイフ」の歌詞の意味を知り、その言葉を噛みしめるようにこの歌を聴いた。
それでも歩き続けることの力強さ
マリーナは歩く。風が吹こうが、雨が降ろうが、彼女は歩き続ける。カメラは彼女を追い続ける。時に後ろから、時に正面から、時には側方から…。
トランスジェンダーに対する、過剰な演出は最低限に抑えているが、遠巻きに彼女を見る世間の人々の姿にリアリティが生まれる。辛辣な言葉も、オブラートに包んだ表現も、主張の本質は変わっていない。どうして世の中は自分と異なる者に対し、これほどまでに排他的なのか?かくいう自分だって価値観の違う人に攻撃的な態度をとってしまうこともある。人とは実に愚かな生き物である。
しかし、どんなに差別的な扱いを受けようと、どんなに酷い言葉を浴びせられようとも、彼女は決して乱暴な言葉で言い返さない。内に秘めた怒りを抑えながら、溢れ出そうな涙をこらえながら、一人の人間として歩き続ける。それが彼女の強さであり、最大の自己主張なのだと思えてくる。
風が強く吹き付ける、雨が強く打ち付ける、けれども、時に暖かな日差しや美しい夕焼けが彼女を照らすからこそ、この物語の向かう結末に一抹の希望を感じられずにいられない。物語の後半、彼女は遂に涙をこぼす。愛する者を失った哀しさか、それとも自分の在り方が正しかったという安堵感か。恐らくは、その両方が入り交じった感情だろう。そのことを表現するかのようなラストの歌唱シーン。穏やかな感情を歌い上げる彼女の声がいつまでも耳に残る。
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