「声高に主張しないのもリアル」ナチュラルウーマン こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
声高に主張しないのもリアル
トランスジェンダーの女性が、同棲していた恋人が死んだことで
さらされる社会の差別。
恋人の家族にとっては、彼女は愛人なのだから
基本的に酷い対応はまあするだろうなってとこではあるものの、
それもトランスジェンダーだということで
より一層見下して人間とも思わない扱いである。
あまりにも酷い。
また、頭では理解しているつもりのものもいて
それも結局は彼女に屈辱的な思いを味あわせる。
しかし彼女は声高には主張しない。
ヘタな脚本なら彼女自身の口から叫ばせそうなとこだ。
彼女が反論しないのは、彼女がこれまでの人生で
聞く気のない相手に何を言ったって無駄だということを
嫌というほど体験してきているからなんだろう。
ヘタな理解を示すでもなく敵視するでも面白がるでもなく、
そう、ただ、普通に、人間の女性として
「あ、そう」くらいの反応でいられるのが一番楽なんじゃないだろうか?
彼女は多くを望んでいるわけじゃない。
普通に、愛してた人の死を悼みたいし、
思い出の品があるならそれを手に取りたかったんじゃなかろうか。
だから彼女には一番いやなサウナの男湯にまで行った。
そこに何もなく、でも最終的に亡骸と別れができたのは
過去の思い出にばかりとらわれずに
前を向いて生きていける、というあらわれだろうと思う。
トランスジェンダーというのも含めつつ
恋人との別れを乗り越えて強く進もうとする
一人の女性の決意の物語だと私は感じた。
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