十年 Ten Years Japanのレビュー・感想・評価
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日本の10年後の重苦しい空気感
香港映画に端を発するアジア各国による10年後を考えるプロジェクトの日本版だが、良くも悪くも今の日本らしさが出ている作品になった。
それぞれの物語が掲げたテーマはどれも今日的だが、そこに明るい展望はない。若い監督は多く参加しているのだが、日本の未来に対して悲観的な展望ばかりなのは気になる。そして問題解決に向けたパワーも感じない。それよりもそれぞれの諸問題に対しての無力感やどうすればよいのかという戸惑いが強く出ている。
個人的には超高齢化社会が日本の最優先課題だと思っているので、早川千絵監督の「PLAN75」が最も重い課題を投げていると思う。全体のために一部を切り捨てねばならない時、いかなる倫理観でそれを実行するのか、経済規模も縮小し続ける日本においては、高齢化以外の問題でもこうした取捨選択を次々と迫られることだろう。そんな時、我々はどうすればいいのか。民主主義はそれを解決できるのか、そこまで描ける題材だと思う。
10年後のリアルさも感じられて興味深い
是枝裕和監督プロデュース:
・75歳で安楽死が選択できる社会<安楽死プランを推奨する公務員と老人>
・情報テクによる道徳管理をされている小学校<小学生と殺処分される馬、小学生の友だち>
・母親のデジタルデータをみた娘とその父親<母の知られざる一面をみる娘>
・原発による大気汚染のため地下生活を送る社会<母と娘>
・徴兵制が敷かれた日本<広告代理店の男性と徴兵制のポスターを描いたデザイナー>
脚本で選んだというから、設定自体がおもしろいものだと判断されたのだろうか。どれも時事に沿った、あり得るかも?というリアルさが含んでいて、興味ある。
未来の設定でSFでもないリアルさがあって、考えさせられる。どれもが少し重たい感じのものがそろってしまった感あって、ひとつくらいコメディタッチが欲しかったかなー
でも、メジャーではないこれからの監督たちが壇上でご挨拶されたのを観れたのはよかった。もっと、自主映画的な映画をみたい!
今の日本の課題を具現化した作品
・命と経済(お金)の問題
・感情と機械の問題
・自由と管理の問題
・自然と科学の問題
・戦争と平和の問題
どれも実に暗い。
亡くなった大林宣彦監督が戦後75年ではなく、今は戦前かもしれないと言ってたのを思い出しました。
実に暗く、怖い時代にいるのだと、感じるに余りある映画です。
やばい10年後
1.「PLAN75」 早川千絵監督
75歳以上の高齢者に安楽死を奨励する国の制度。どことなく『ソイレント・グリーン』(1973)のような世界観。主人公と、妻の徘徊する母親の物語。暗いイメージの中にも命の尊厳を描こうとしていたが、もっと続きが見たくなる内容。
ちなみにソイレント・グリーンは2022年の設定であり、今のコロナ禍による経済ダメージや社会不安をも予測したような世界観だ。75歳になるのが怖くなるのですが、自分としては「75で認知症になっていたら安楽死させてくれ」とメッセージを残しておきたいな・・・
2.「いたずら同盟」 木下雄介監督
AIにより道徳教育が行われているIT特区の小学校。國村隼が世話している老馬の殺処分が決まったとき、生徒たちは・・・という物語。馬の件よりも、顔認証システムやら、逸脱した行動には額に取り付けられた器具によってメッセージと大音響の音楽が流れる仕組み。小学生のうちから管理されすぎるとどうなるのか?もう、大人になるまでロボットになってしまいそうな怖さがある。
3.「DATA」 津野愛監督
母の生前のデータが入った「デジタル遺産カード」を手に入れ、杉咲花が亡き母の思い出の写真や、ひょっとしたら浮気して、自分の出生の秘密も知りたくなった。スマホを使っているためか、それほど未来感がないし、結局は父親の愛情を確かめるだけのストーリーだった。面白くない。
4.「その空気は見えない」 藤村明世監督
原発による大気汚染から逃れるために地下世界に住むミズキたちの物語。ちょっとお姉さんのカエデから地上の話を聞き、太陽とは?雨とは?と好奇心旺盛になっていく。
未来は地下生活!なんてのは結構あるSF作品をコンパクトにまとめていた。最初はダンゴ虫とかの虫が中心となっているため気持ち悪いが、知らない地上のことに興味を持つ初々しさが心地よい。ウォークマンのイヤホンを鼻に入れるシーンが好き♪
5.「美しい国」 石川慶監督
広告代理店の太賀が地下にポスターを貼っている金髪の若者職人に色々指示をしている。星座を模したような柄に「11月から徴兵制が始まります」と書かれたポスター。しかし上司は古臭いからボツだとデザイナーに伝えるよう太賀に指示。木野花演ずるデザイナーのもとへと渋々うかがうのだが・・・
反戦メッセージが強く伝わってくる作品。美しいポスターであっても、戦争になれば国民は大勢死んでいく。「落とさないでね、バトン」という言葉が印象的。最後はちょっと泣ける。
10年後の日本
AIが小学生を管理する、死んだ人の思い出が「デジタル遺産カード」というたった一枚のカードで保管出来る、地上が放射能で汚染されて人々の生活が地下になる、防衛省よる徴兵制のスタート。
そして私が一番気になったのが、厚生省人口管理局による「プラン75」。75歳を過ぎたら、希望者に安楽死を認め、死んだ後の葬儀までセットで販売する。本当の目的は高齢者の人口削減。
5つのオムニバス。あまりおもしろい映画ではなかったけど、考えさせられる。どれも起こり得る話のようで恐ろしい。10年前に比べて、携帯電話を例にあげても凄まじい進化を遂げている。10年後、日本はどうなっているのだろう。
どうひいき目に見ても、今年のワースト邦画
脚本が、どれもこれも酷い。
「PLAN75」は低所得者や健康毀損者を「姥捨てる」話。陳腐感しかなくて×。川口覚の演技だけは〇。
「いたずら同盟」はIT管理特区と言う名のもとに行動・心理を管理する実験材料となっている子供達が、システムアップデートの隙を利用し、管理の届かない特区外へ抜け出る、偶々。と言う話。國村隼の壮絶な無駄使い。×。
「DATA」だけは許容範囲。嘘をつく才能を、母親から遺伝された娘の話。杉咲花の愛らしさに免じて△。脚本自体は、書き足せば結構面白くなると思う。
「その空気は見えない」。原発爆発の放射能汚染から地下へ逃れた人々の中に、その母娘がいる。娘は「外の世界を見たことのない年長の少女」の後を追って地上へ出ていき、放射能で破壊された外界を目にする(多分)。もう、漫画の同人誌レベルのシナリオ。この尺の中では精一杯にやった方かとも思うが△。
「美しい国」。徴兵制が始まった日本で、政府広報ポスターのデザイナーと代理店の若者を使って、9条保護をソフトに訴えかける話。太賀と木野花さんの演技に免じて△。
政治的な話はしたくないので、ここまで。一つだけ言わせてもらうと、「物事の一辺だけを切り取り、全体説明をあえて避け、偏った価値観をすり込もうとしている、ソフトイメージアジテーション映画」。全力回避した方が良いよ、って言います。
『PLAN75』 監督 早坂千絵 75歳になると安楽死を選べる社会...
『PLAN75』 監督 早坂千絵
75歳になると安楽死を選べる社会。
『いたずら同盟』 監督 木下雄介
第1話の途中で落ちる(-_-)zzz
気が付いた時は第2話が終わったところだった。
情け無い(p_-)
『DATA』 監督 津野愛
☆☆☆★
杉咲花ちゃんの、少女でも無い。でも大人とも違う無垢な魅力。
ここに、最近絶好調の田中哲司の父親。
母親の秘密を盗み見た娘。娘の振る舞いに、妻の姿を投影する父親。この2人の微妙な親子関係。
『その空気は見えない』 監督 藤村明世
☆☆★★★
原発汚染のその後、人間は地下へ逃げる。
『美しい国』 監督 石川慶
☆☆☆★★★
『愚行録』がとても良かった石川監督だけに、注目したが。それが間違いでは無かった嬉しさ。
徴兵制度が施行された近未来日本。制度を広めるべき、日本政府から宣伝を任された広告代理店の社員が太賀で、広告ポスターの作者が木野花。
あ?この2人って、先日観た『母さんがどんなに僕をきらいでも』のコンビじゃないか!
いや〜!このコンビが凄〜く良いんだなぁ〜これが!
「こんな時に不謹慎ですね!」と言うが。「◯ー◯は死なないから良いのよ!」と返す。
如何にもといった感じの、代理店社員の太賀も良いが(ここ数年、彼は何を演じても良い)本心では若者たちの未来を憂いている木野花が良い。
もう今年の助演女優賞は、『愛しのアイリーン』と併せて木野花で決まりだ!
そして何よりも、石川監督の次回作『蜜蜂と遠雷』への期待が高まる。
高齢者対策として、75歳になると安楽死が選べる社会。「早く死んで下さいね!」と思われ。
他人の記憶はデータ化され、それを盗み見する。
原発汚染の近未来。
徴兵制度が始まり、若者たちは戦場へと散って行く。
何だか、日本の未来をこんな風に切り取る作品ばかりで鬱になって来そうだ!
明るい社会へと向かう希望の光は無いものだろうか。
今、世界的に拡がりを見せ蔓延っている【民主的独裁政治】の世の中では、とても難しいのか?…と。
2018年11月20日 キネマ旬報シアター/スクリーン1
子供達の未来
五つのショートストーリーで構成されている作品群である。五つそれぞれは繋がりはないが、それぞれが日本に於けるディストピアを描いていて非常にヒリヒリする内容である。とはいえ、キチンとした結末があるわけではなく、匂わせてもいない作品もあって、かなりの想像力を働かせなくてはならないものもある。その辺りが『世にも奇妙な物語』よりも上級者向なのかと思ったりする。
特に自分が注目したのが『DATA』。多分、他作品よりも有名な俳優が出ていることが主因かと思うから、知ってる人が出演しているということはとても大事なのだと改めて強く感じる。今作品のみ、ある程度のハッピーエンドを予感させる内容も手伝って、幸福感を覚えた。
少々、説教臭い内容もあるのだがとはいえ、そこまで偏った方向制ではないのりしろの部分もあるので、それぞれ鑑賞した人に委ねている作りである。但し、一番大事な“イマジネーション”をきちんと働かせることができるかどうかが、今作品のテーマであろう事は間違いない。
十年後の日本という設定で5人の新人監督が撮ったオムニバス映画。 そ...
十年後の日本という設定で5人の新人監督が撮ったオムニバス映画。
その最初の早川千絵監督作品「PLAN 75」
この作品を観た時、とても強い衝撃を受けた。
なぜなら、こんなにもド直球な社会派映画を久しくみていなかったからだ。
ある意味、映像体験としても新鮮だった。
超高齢化が進んだ十年後の日本社会。そこに生きる老人を通じて、命の価値、生きることの意義、意味とは何か?という重いテーマに果敢に挑んでいる。
昨今の個別的な尊厳が軽視される社会風潮に対して、鋭い一石を投じる作品だったと思う。
映画のラストシーン。
殺伐とした広い空間に整然と並ぶベッド。
ゆらゆらとたなびく吊るされた白いカーテン。
その背後で唸る不気味なモーター音。
崩壊した旧ソ連の全体主義、或は、ナチズムの連想を呼び起こす。不気味でもあり、かつ美しくもあるシーン。
このラストを撮った早川千絵監督に、ただならぬ才能とセンスを感じた。
「PLAN 75」の長編を期待したい。
期待していたが…
#是枝裕和監督 が監修の日本版「 #十年 」ということで、とても面白そうだと期待しておりました。
日本の10年後という自由度の高いテーマで若手監督を起用しているのに、どの作品も似たようなインスタントで誰もが思いつくような内容、想像力やセンスが欠如しているんですかね。
それでも作品の中に1シーンでもこれぞと思わせてくれるわくわくするような絵があれば映画館に観に行った価値もあるのですが、とても残念です。
ほめるとしたら、どの監督もそれなりに小器用といったところでしょうか。企業PVなどはうまくとれるんじゃないという感想。ただし、映画の器ではない。
映画は監督が色濃く反映され、時には監督そのものであったりします。
昨日は、たまたま #早川千絵監督 が舞台挨拶に登壇されておりました。
あっ、この監督だからこの程度の作品しか撮れないんだなと妙に納得致しました。
映画監督そのものが魅力的でないから、作品もそうなんだと。
なぜ、この5人の監督が選ばれたのでしょうか?
他に若手で面白いもっと適任な監督はいなかったのでしょうか?
とても疑問です。
この作品を楽しみにしていたので、とにかく残念です。
時間とお金を無駄にしました。
ただ役者さんは、 #牧口元美さん と #太賀さん は良かったです。
十年後の未来は、明るいのか?
十年前でも、十年間でもなく、十年後に起こりえる未来予想図のオムニバス。
好きなシーンは「DATA」の二人でラーメンをすするところ。この、親子をさらにきつく結びつける素敵な会話はなんだろう!もちろん、田中哲司と杉咲花の演技が素晴らしいんだろうけど、やり取りする言葉はありきたりなのに、涙があふれてきた。いつだって娘を信じる男親であり、ちゃんと寄り添っていながら、べたつかないちょうどいい距離感だった。
「PLAN75」や「美しい国」の、それを我が身に置き換えてみなよ、ってメッセージは強烈。所詮、他人事には無関心のくせに自分の身近な話になってはじめて事態の重大さに気付く。そんな人間に、自分もなっていやしないか?って自問しながら映画館を出た。
太賀はいい役者だな、と最後に付け加えておく。
僕たちの未来
「十年」……後、たとえ、映画の物語のような世界が待っているとしても、きっと変わらないものがある。
家族を思う気持ち。子供の無鉄砲とも思える勇気、無垢な優しさ。好奇心や希望、想像力、探究心。思春期を迎えた少女の葛藤も。そして、大人が願う平和や、命の大切さも。
ここに描かれた未来は、ちょっと荒唐無稽な未来かもしれない。でも、同時に描かれた「変わらないもの」は、荒唐無稽ではない。
そして、もう一つ、変わらないものは、未来は、僕たちの手の中にあるということだ。
佳作なショートフィルムだ。もっとたくさんの人に観てもらいたい。
たった十年されど十年
今から十年後の世情を想像しつくられたオムニバス作品の2018年(2028)日本Ver.
PLAN75
75歳を超えると本人若しくは医者と家族の同意で安楽死出来るという世界。
役人の公私の葛藤とか、長生きは恥とか、家族の有無や生活環境で種々考えはあるだろうけど自分毎と考えた時に非常にハマった。
DATE
デジタル遺産カードで画像や動画、メールまで故人の情報を閲覧出来る世界。
幼い頃に亡くなった母親の過去が、父親や自身に繋がる話で、悪くはないけれど今現在でも出来る話でコンセプトのズレが引っかかる。
いたずら同盟
頭につけられたセンサー兼レシーバーと監視カメラによりプロミスというオペレーションシステムが子供達を型に嵌めて育てようとする世界。
これなら学校に行く意味もなくないか?という中途半端な未来像で、オチは悪くないけれど在り来たりだし物足りない。
その空気は見えない
汚染により地上では暮らせなくなり地下のシェルターで育った少女が年上の少女に影響され、地上に興味を持つ話。
具体的に何も示さずただ、危険としか教えない親に違和感。結局結論も完全に委ねられていて残念。
美しい国
日本で徴兵制が始まり、その広告を作る作家と担当編集者の話。
話としては非常に面白い。しかしながら「十年」というこの作品のコンセプトからしたら、所謂アンチ与党の人間が、野党の的外れな上っ面な見解を丸呑みして自己主張の為につくった様にしか感じられなかった。(別に自分は与党指示者ではありません)
たった十年と考えると飛躍し過ぎではあるけれど、まあファンタジーだからと考えると中々面白かった。
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