「THEエンターテイメント・ホテル」マスカレード・ホテル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
THEエンターテイメント・ホテル
原作は東野圭吾のベストセラー。
超一流ホテルを舞台にしたミステリー。
木村拓哉、長澤まさみを始め超豪華キャスト。
製作はフジテレビ。
これだけ話題性あると公開前から見もしないでアンチキムタクやアンチフジテレビの輩がボロクソ叩いてるが、そんな偏見を無視すれば、普通に楽しめる。
まるで三谷幸喜作品を見てるような、『THE有頂天ホテル』にミステリーをプラスしたような、ザッツ・エンターテイメント!
都内で3件の連続殺人事件が発生し、現場に残された手掛かりから、4番目の犯行現場が“ホテル・コルテシア東京”である事を突き止める。
ホテル側の協力を得、潜入捜査するが…。
どうせ派手なだけのエンターテイメントでミステリー要素はおざなり…と思うなかれ。
そこは東野圭吾ミステリー。ミステリーの醍醐味もなかなか。
事件の真相や人間関係は結構込み入り、ボケ~ッと見てるとちと複雑でもある。
ある人物が語るエピソードや台詞が事件や犯人のヒントにも。
思ってた以上に頭を使った。
でも、2時間強がっつりミステリーって程ではない。
東野圭吾ミステリーの醍醐味である犯人の哀しきドラマも全くと言っていいくらい無い。
これらに期待すると、少々肩透かし。
それを補うのが、ホテルにいらっしゃるお客様と対応するホテルマンが織り成す群像劇。
もうとにかく、いらっしゃるわいらっしゃるわの、訳アリのお客様たち。
盲目(?)で霊媒師のような怪しい老婦人。
ムカつくほどの要求をしてくるクレーマー。
ホテルの備品を盗む常習犯。
ストーカーに付きまとわれてる女性と、そのストーカー男。
ホテルで結婚式を挙げる若い女性と、こちらにもストーカーの影…。
「お客様は神様です」なんて言ってられないくらい。「姉さん、事件です!」レベル。
しかし、ひと度お客様の事情が分かれば…。
中には、いいエピソードも。
ホテルにいらっしゃるお客様は、仮面を被っている方々も多い。
素顔を隠したまま繰り広げられる、さながら“仮面舞踏会”。
どんなお客様や事情であれ、誠心誠意おもてなしする。
それが、ホテルマン。
当ホテルでそんなお客様たちをおもてなしするのが、キムタクと長澤まさみ。
キムタクはホテルマンに成り済まして潜入捜査をする刑事。
長澤まさみはその教育係を担当する事になったフロントクラーク。
片や人を疑うのが仕事、片やお客様第一の仕事。
言うまでもなく、衝突の連続。
しかし、何度も何度もぶつかり合いながら、次第に各々の仕事の理解を深めていく。
刑事は公共の平和や人命を守る。
ホテルマンはお客様を信用し、尽くす。
仕事内容も立場も考え方も全く違うが、何かの為に…という思いは同じ。
終盤、各々仕事生命を懸ける。
熱く、強い、仕事への誇り。
キムタクと長澤まさみの掛け合い、コンビネーションは絶妙。
本作でのキムタクはTHEキムタク。今回の役柄に合っていると思う。いちいち客の顔色を窺うホテルマンの仕事が理解出来なかった彼の、少しずつ成長していくホテルマンぶりはベタだけどいい。
丁寧で笑顔が魅力的な長澤まさみのフロントクラークはパーフェクト。私がこのホテルの客だったら何度も利用する事だろう。間違った対応をし、逆恨みされる事などまず無い(筈)。
衝突し合い、信頼し合い、仕事への誇りを懸けて、いよいよ事件の真相に迫る。
かなり脱線してしまったが、犯人は誰か…?
犯人は間違いなく、お客様の中に…居る。
先にも述べた通り、超豪華お客様がいらっしゃるいらっしゃる。
あの人とこの人はあの映画でこの映画でとか、こちらではこの役だけどあちらの映画ではあの役とか、実生活では結婚した二人が…とか、色々想像して見るのも面白い。
長年TVドラマでホテルマンだった弟の方じゃなく兄の方だったのが残念だが、さすがにそれだと狙い過ぎか…。
話題になっている某大御所お笑い芸人のカメオ出演。何処に出てた?…と一回見ただけじゃ分からないみたいだが、自分は分かった。ネタバレで確認してみたら、合ってた。いやん、見っかっちゃった!…と、探してるのもお楽しみの一つ。
ホテルを舞台にした映画と言うと、ホテル自体も主役。
ゴージャスな内装は贅沢な気分に浸らせてくれる。
見た人それぞれ難点/不満点はあるかもしれないけど、普通に素直に楽しめる。
新年最初を飾るエンターテイメントとしても上々。
当“THEエンターテイメント・ホテル”は、お客様の来訪を心よりお待ちしております。