聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのレビュー・感想・評価

全103件中、1~20件目を表示

4.5聖なる“鹿殺し”ではなく、“聖なる鹿”殺し

2018年2月27日
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鑑賞方法:試写会

笑える

怖い

興奮

邦題がややミスリード。メインビジュアルの題字も「鹿殺し」が赤、「聖なる」が黒なので、鹿殺しという行為が神聖であると誤読しそうだが、原題「The Killing of a Sacred Deer」をよく見よう。形容詞SacredはKillingではなくDeerにかかっている。Sacredには「聖なる」の意味もあるが、「生け贄として捧げられる」というニュアンスを含む。本作はいろんな解釈の余地があるタイプの映画だろうが、他の方の自己流解釈の助けになればと思い記しておく。

作品自体は滅法面白い。同じ監督の「ロブスター」は奇天烈な設定に引き込まれたが、本作は一見まとも。しかし、「目には目を」式の呪いをかけられて、家族の関係がじわじわ変容していく様にゾクゾクする。「トゥモローランド」の美少女、ラフィー・キャシディの成長した姿も見ることができて嬉しい。

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高森 郁哉

2.5好みが分かれる作品だと思います。

2024年12月19日
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自分はあんまりハマれなかったです。

序盤の異変が起こっているあたりは不気味さがあって良かった。

けど、中盤あたりからあまり引き込まれなかった。

ラストも結局なんなの?みたいになっちゃってハマれなかったです。

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たいやき

4.5呪い??

2024年10月12日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

とにかく奇妙というか不気味
どんどんホラー染みていく

最初はホモセクシュアルを匂わすようなシーンが多々あり
そういう話か?と思いきや、話は全く違う方向へ

ネタバレになるので何も書けないが
ある意味復讐劇なのかも?
でも、どうやったのかが不明?
呪いでもかけたのか?
そこら辺が明かされないのでモヤモヤする

あと、音楽の使い方が大袈裟というか煩いと感じました。

そして父親の最後にとった選択行動が酷いというか・・・
誰も報われず、虚しいまま物語は終わります

この監督はクセが強いので好き嫌いが分かれると思う。
因みに俺は大好きです。

バリー・コーガン
こういう不気味な役をやらせたら最高ですね!
というか、こういう役ばっかりな気もする(苦笑)
いつかオスカー俳優になる匂いがする

コリン・ファレル
彼もとても良い俳優でアメリカでは評価されているけど
日本での知名度が低いのが残念
もっと評価されてもいい俳優だと思う

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おじ

4.0「掟に従属する人々」という、ランティモス作品に共通した主題を明確に理解できる一作

2024年8月25日
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カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作、脚本はヨルゴス・ランティモス監督とエフティミス・フィリップの共同執筆です。フィリップは『ロブスター』(2016)でも共同脚本を務めるなど、ランティモス作品の世界観に大きな影響を与えた人物の一人と見て間違いありません。

ランティモス作品は、時として理不尽に思えるような掟に従属する人々を繰り返し描いているんだけど、本作は主題理解という点では非常に明確な作品であるといえます。確かに主人公の医師・スティーブン(コリン・ファレル)には罰を受けて然るべき過失があったとはいえ、マーティン(バリー・キオガン)が課した掟は非現実的かつ不条理です。だがその掟は実際に発動し、マーティンの家族は徐々に追い詰められていきます。

追い詰められているとはいえ、どことなく掟を従順に受け入れているかのような家族の振る舞いが、まさに儀礼に供される犠牲であるかのような印象を強めています。

フィリップは数作の空白期間ののち、『憐みの3章』(2024)で再びランティモス監督と組んで本作の世界観を蘇らせています。そのため、『憐みの3章』の予習としては、『女王陛下のお気に入り』(2019)や『哀れなるものたち』(2024)などの有名どころの近作以上に、本作が最適かも!

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yui

3.0神々しいドロドロ感

2024年7月4日
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「ロブスター」でヨルゴス・ランティモス監督を知り、特別面白かったというほどでもないが独特な雰囲気がとても印象に残り、本作も鑑賞。
タイトルからして神話をモチーフにしているようだが、さすがはヨルゴス・ランティモス監督、やっぱり訳わからん…(汗)
序盤の思いのほかきれいな影像は本作を大いに期待させたが、終始流れるやたらと怖い効果音とともに結局すぐに薄気味悪い展開に。そしてそのままドロドロしながらエンディングへ。
本作は映画としてはとても良くできていると思うし、バリー・コーガンの鬼気迫る演技は背筋が凍るほどインパクト大だが、個人的にはちょっとついていけない世界観といったところが正直な感想かな。

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いけい

2.0登場人物の言動にいまいち共感できない

2024年6月2日
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鑑賞方法:VOD

呪い?の方法やその世界観についての説明が全くといってないことについては、
この映画に関してはそこに触れるのは無粋のようなのでそれは置いとくとして・・・。

海外映画はこういうトロッコ問題をテーマに取り扱ってるものに触れることが多いが、
いまいち深く描き切れてないように感じる・・・。
国が違うと国民性や感性が違うから共感できないんでしょうか・・・?

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Kuyan

3.5何ともいやらしいクライマックス

2024年4月26日
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鑑賞方法:VOD

「何だったんだこれは!」

観賞後そう思ったのは私だけだろうか?
しかし、不思議と嫌な気分はない
爽快なエンタメとは真逆だが、理解できない映画ともまた違う

主人公は大病院の心臓外科医
妻と二人の子どもと広い一軒家(植物用の温室なんかもある!)に暮らしている
どう見ても幸せな家族の風景

しかし映画は冒頭から一貫して不穏な空気をまとっている
中心にいるのは主人公と何かしらの関係があると思われる一人の青年

「彼は何者なのか?」

そこが明かされるまでにそれなりに長い時間が費やされるが、二人の関係が明かされると物語は一気に動き始める

イメージとしては"呪い"が近いか?
家族に不幸が降りかかり、主人公はあるルールに従って決断を迫られることになる

クライマックスはその決断のシーンなのだが、それが何ともいやらしい
どう「いやらしい」のか、ぜひ自身で確かめてみてほしい

調べてみると監督はギリシャ産まれギリシャ育ち
そしてギリシャ神話には鹿が聖獣として登場するとのこと
タイトルはそのまま解釈するのが正解だろうか

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作務衣もん

4.5バスには勝者も敗者も乗ってるんだよ

2024年4月8日
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鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

興奮

映像とカメラワークに感動した。圧倒的に白が勝っている病院の廊下やガラスのカンファレンス・ルームが広角で映し出され、人間が無機質な建築物に同化している。ボブとアナ(キッドマン)だけが乗っている長い下りエスカレーターと無人の上りエスカレーターを遥か上から映しているカメラ。下まで降りた途端にボブが倒れ込む。マーティンが上から覗き込んで確認したかのように。スティーブン(コリン・ファレル)とマーティンの散歩。雲が浮かんでいる空の青も雲の大きさもどこか不自然。怖くもあり書き割りのようで可笑しくもあり。

アナもスティーブンも酒を飲まないが(スティーブンは4年前から酒を飲んでいないとパーティーの場で言っていた)タバコは頻繁に吸っている。マーティンの影響か娘のキムも吸うようになった。インテリ富裕層が酒を飲まないのはわかる、と思ったがスティーブンが飲まないのは別の理由だろう。

「死」が目前に迫っているのに家族間の会話に日常と深刻がごちゃまぜになっていて居心地の悪さを感じつつ笑っていいのか?と思った。キムはボブに「自分のプレイヤーが壊れちゃったからあなたが死んだら頂戴ね」と言う。スティーブンは二人の子どもが通う学校に行き、どちらか一人選ぶとしたらどっちでしょうかと校長に尋ねる。アナは、死ぬなら子どもね、私達はまだ若いから子ども作れるし場合によっては体外受精も可能、と言う。寝室でのスティーブンとアナ夫婦も変だ。アナは「全身麻酔?」と尋ねOKを出したスティーブン。ランジェリー姿のアナはベッドに仰向けに横たわる。スティーブンは室内の照明を全灯にしてアナを見ながら・・・。変~?笑っていいのか悩んだ。ボブは自分が死ぬんだってわかってたから一番健気だった。パパに叱られていた長い髪を自分でカットしてパパに見せた。眼科医になりたいというのはママの手前であってパパみたいな心臓外科医になりたい、本当だよとパパに言った。スティーブンはその晩、初めて泣いた。

マーティンは好きなものを一番最後に食べるからポテトは最後。キムはケチャップを真っ赤に垂らしながらポテトから食べた。3人家族のテーブルの様子をカウンター席のマーティンは正確に観察したに違いない。

音楽は知らない曲ばかり。オープニングとエンディングは教会音楽だろうとクレジットをガン見してわかった。最初はシューベルトで磔刑のイエスを悲しむ母マリア、最後はバッハのヨハネ受難曲。

おまけ
1)ランティモス監督は目に執着がある。「ロブスター」では近視同士カップル、一方は両目とも見えなくされてしまう。「女王陛下のお気に入り」でアン女王は左目悪くサラも左目を黒のレース布で隠してた。そしてこの映画で妻は眼科医(仕事シーンは無し)。目から血が溢れ出たらステージ4。
2)ランティモス監督の映画に沢山仕掛けられている笑いに毛深いコリン・ファレルは大いに貢献している。「イニシェリン」での彼の困ったちゃん眉毛を思い出す。
3)「哀れなるものたち」も含めてランティモス監督はmasturbationを話題(またはシーン)に必ず入れる。昔、セックスする頻度だか時間が一番なのはギリシャという調査結果を読んだ。当時はギリシャの金融危機、一方で公務員の定年が早いだか給与が高いなどEUの中で可哀想(?)なポジションだった記憶がある。

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talisman

2.0誰も救われず

2024年3月26日
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勧められてみた映画ですが、うーん…
誰しも持っているダークな一面を、見せつけられた感じ。
冷たーいロボットのように会話する4人の家族、どの人も救われず、地獄に落ちた感。
奇妙な出来事の論理的説明がないまま終わるので、オカルト的な話なんだろうけれど、私の好みとしては、なんらかの説明が最後に出てくる方が、むしろ怖い気がしますが。

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Camme

1.0「鹿」に何か宗教的な意味合いが込められているのか・・・私の知識不足...

2024年2月27日
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「鹿」に何か宗教的な意味合いが込められているのか・・・私の知識不足がこの映画の評価を下げてしまっているのでしょうか?

一方で、冷徹な構図とLooks、不安を煽る不協和音、それら演出には優れた点が十分にあるかと思います。

何でもアリが映画、それが映画のいいところだとも思いますが、
しかし腑に落ちないこの映画については、個人的には高評価する気が起きない
(カンヌで脚本賞?)

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スパチカ

3.5哀れなる…より好きです

2024年2月20日
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家族関係と言っても他者の集まりですから、いつ何時その関係が狂い始めるかわかりません。

「深淵に臨んで薄氷を踏むが如し」ということで、私はいつもビクビクしています(笑)

この映画は「表面上うまくいっていた家族」もあっという間に狂い始めますよ、という示唆もあり、あながち荒唐無稽な話でもない気がして興味深かったです。

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ほりもぐ

4.5一神教の世界観

Kさん
2024年2月11日
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ランティモス監督の一連の作品の中で、現代社会を舞台としているのが印象的であった。最初のうちは少年の精神疾患やサイコパスを疑っていたのだが、物語の後半で登場人物たちが神の存在を受け入れているように見えるようになって、これは私にはわからない一神教の世界観であり、つまり少年は神であり、彼らにとってこのような神への畏怖は寓話的なものではなく本物なのだろうと思い直した。その視座から眺めると、死を突きつけられる登場人物たちの悩みがとてもリアルなものに感じられた。
一方神の怒り鎮める役である、父であり家長である主人公は、物語を通じて解決に導くようなことを何もできていない。自己中心的な償いで少年を家庭に迎え入れて事態を複雑にし、ついに生贄が避けられないことを認識しても、自ら贄を選ぶことをしない。このような姿を通じて、この作品はキリスト教的な父権や男性中心の社会に対する疑問を表現しようとしているのではないかと思った。

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K

3.5始終不穏な空気

2024年2月8日
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流れる感じ。全く意味は分からん。呪いなのか結局何も不明。最後は生贄の為にロシアンルーレット。バリーコーガンの映画は同じように映画に不穏な空気流れる。ソルトバーンもおなじ。当分バリーコーガンお腹一杯で見たくない。まぁそれだけ見事な演技なのか。

コリンファレルも上手い、最近の映画で沢山活躍してるコリンファレルをもっともっと評価するべき。今回の映画は寡黙ながらそれが怖さをます。

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ken

2.5不協和音

2024年2月6日
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鑑賞方法:VOD

怖い

難しい

哀れなるものたちの監督
ヨルゴス・ランティモスの
ロブスターからの三作めです
…怖かったです
何というか
この監督は不協和音の音が
特徴的に使われています
普通に暮らしていても
不穏な音で怖さを醸し出しています
音の使い方が上手いです
この監督の世界観には必要なアイテム
グロさとかエロさもその一つ

聖なる鹿殺しは
心臓手術で失敗して患者を死なせた事に
よってその子供からの報復。

心臓外科医
穏やかな主人公が
段々と追いつめられて
徐々に変わっていく精神状態が
見所です

分からないのは
父を心臓手術で亡くして
主人公をとことん追い込んで
家族を巻き込みながら復習していく少年
どうして…
少年の言った通りになっていく
状況がわからない
ラストのオチもいま一つ

これら二作品を見て
今回の映画[哀れなるものたち]は
ファンタジーな作りになっている
と思いました
ベラが可愛いくて愛しい。

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しろくろぱんだ

4.5ファンタジーとリアリティの狭間、緊張感を切り取る力には脱帽

2024年2月6日
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鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

『ロブスター』とともにずっと観たくてマイリストに入れつつ無意識に避けていた作品。連続で観ました。
事前にあらすじは目に入っていたが、序盤から嫌な雰囲気に手に汗握る
"ある提案"をするシーンや噛みつきのシーンにはゾクゾクさせられた
そもそもの話、何が病の原因なのかは作中でも専門家から繰り返されていた様にやはり心因性の何かなのだと思う。明言を避けているのは監督の作風であり手癖というか「そこは重要ではない」ということなのだろう。仮に催眠術なのであれば終盤の場面でアナを歩けるようにしたはずだ。そこをはっきりさせないことで得体の知れなさによる恐怖は何倍にもなるし本作のスリラーとしての純度を高めている
一方でその荒唐無稽な要素はある種の悪ふざけのようにもなっており、ホラーとコメディの二面性が見え隠れし笑いも誘う場面もある。とはいえそれは恐怖を薄めるわけではないし、なんなら"そこで笑ってしまう自分"も俯瞰して見せられているようで恐ろしさまである

あとなんと言ってもマーティンの狂気
「バリー・コーガンは素でこうなんじゃないか!?」と思うほどの名演。"怪演"という言葉にずっと腑に落ちない感覚があったが、これを観せられるとこれがまさにだなと思った

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ezio

2.5等価交換

2024年2月5日
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押しつぶされるような罪悪感と、淡々とやってくる等価交換の罰。
復讐のグロテスクさを描いているとは思うけど
見えざる力を持ち出すなら、それは本当に等価なのか?と。
命は命、ひとつはひとつ。それは分かるような分からないような。
説明に頼らない姿勢は素晴らしいけど、
分かりにくさが単にテーマの掘り下げが足りない制のような印象だった。

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mar

4.5◇不穏、不可解、不条理なる鹿殺し🦌

2024年1月25日
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怖い

 古の奈良では、鹿が『神獣』とされて手厚く保護されていました。もし殺してしまうようなことがあれば、その人は死罪。奈良の人は朝起きたら、まず家の前を見てシカが死んでいないか確かめなければならないので「早起きが奈良名物」という言葉まで生まれたと伝えられています。鹿殺しについては、『鹿政談』という古典落語の演目もあります。聖なる鹿🦌を殺してしまったところから始まる顛末噺です。

 この物語は、そんな長閑な語り口でもなく、鹿も登場しません。心臓外科医の男が抱く「罪悪感」、その薄暗く重苦しい圧迫感が物語の底に沈澱していることが、家族との違和感やぎこちなさ、男の冴えない表情の原因です。罪悪感は物語の進行とともに増大、エスカレートして不穏な雰囲気は悲劇の結末へと滑り落ちていきます。

 罪悪感の原因については、心臓外科医の男と父を亡くした一人の少年との不可解な交流とともに紐解かれていきます。男が秘める罪悪感に対して、少年が求める代償は生贄です。命の等価交換ですが、そこには奇妙なネジレがあります。単純な仇討ちではなく、罪悪感をさらに深めて生き続けることを強いる復讐。

 少年が求めていたのは、父親を失った喪失感を埋め合わせ、自分だけに降り注がれる父性かもしれません。悩み深く自己嫌悪に陥りつつ、少年を畏怖しながら守り続ける父性。勝手な後日談としては、娘と少年が結ばれて、再び父親を得ることとなる姿です。

 聖なる鹿殺し、収束しない物語。罪を被せられないように、明日は奈良名物の早起きです。

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私の右手は左利き

3.0聖なる鹿

2023年11月26日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

難しい

殺し。
英語を直訳するとこうなる。鹿を殺すことが聖なる行為なのではなく、”聖なる鹿”を殺してしまう、というとニュアンス全然違う。ポスターの字の色変えないとよー。

心臓外科医のスティーブンは手術の腕前は一流、美しい奥さんのアナと二人の子供との完ぺきな生活を送っていたが、スティーブンが度々会っている謎の少年マーティンを家に招いたことから始まる、家族を襲う謎の症状。程なくしてマーティンが口にした謎の症状の秘密とそれを回避するための条件とは?というお話。

カンヌ映画祭で絶賛、というところでもうお察しなんだけど非常に難解。謎が謎のまま終わる部分も多し、だけどこの映画で語りたかったのはそう言う事ではないと思う。
症状が何で起きるの?とかではなくて、純粋に人間が究極の選択を迫られたときに、選ぶ側、選ばれる側になった人間がどう感じ、どう行動するのか、これが主題なのだと思う。

その対象は3人。それぞれ性別、年齢、関係性が違う。しかもそれぞれが必死に考えて道を模索している。それも綺麗ごとなど言っていられない状況なら、打てる手は全て打つし、なんならゲスい発言も飛び出してくる。

それを審判する側の人間はどう捉えるか。審判側の人間もまた完ぺきな人間ではなく、情もあれば気の迷いもあればいろんなファクターが入り乱れて、判断なんかできるか!ってなる。
しまいに取った手段が…あのねぇ。
でも、聖なる鹿って何なのかな。すごく清らかで純粋なイメージなんだけど。
となると、聖なる鹿殺しはあんな手段を取りつつも、実はその前に決まっていたりして。

エンタメ度低め。私はモヤーんとする映画は嫌いではないと思っていたけど、最近あんまり得意じゃないのかも。映画ぐらいはスキっとして欲しいと思う、ストレスMax.インド生活なのです。

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ハルクマール

4.5怖いよう。みんな怖いけどラストのお姉ちゃんがいちばん怖いっつーの。

2023年11月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖いよう。みんな怖いけどラストのお姉ちゃんがいちばん怖いっつーの。

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まるぼに

4.0人間非讃歌。

2023年11月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

どんな内容なのか全く知らなくて、コリン・ファレル主演だから「ロブスター」みたいなちょっと意識高いっぽい映画なんじゃないか?とか冗談で話していたら、まさかの「ロブスター」と同じランティモス監督の作品だった。
観る直前にこの情報を仕入れられたので、覚悟は決まったというか、作品のトーンの方向性だけはわかったのですんなり入ることが出来た。終始テンション低いだろうなと。

ランティモス監督は、非現実的な雰囲気の中で、教科書に書かれているような人間味のないセリフと静けさで、愛ってこうだよねとか人間ってこうだよねとか、そういうことを表現する監督かなと思うんだけど、まあこれが少々極端な演出をする人で、彼の伝えたい「人間」ってものに対して、なんかどっか違うんじゃないかという気持ちが芽生えるし、怖さとか不気味さが先に来ちゃうのはモヤモヤするものがある。
本作「聖なる鹿殺し」は明らかに恐怖を煽るような、効果音ともBGMともいえないような奇っ怪な音を使っているのでホラーのようにしたかったのだろうとは思うけど。
それで、サスペンスというよりは、人間の内面をえぐるオカルトホラー的な作品で面白く観れたのだけど、やっぱり心の奥にある引っ掛かりは残ってしまうんだよな。それが良さなのかもしれないけどね。

もしかして監督は、人間とは怖いものだと考えているのだろうか?ああ、なんかそんな気がしてきた。間違いない。
私はそうは思わないから、作品との共感度がやけに低いんだな。多分そう。
面白かったけどモヤる原因がわかったな。

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つとみ