飢えたライオンのレビュー・感想・評価
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【無自覚なる多数の女子高生を追い込み殺した殺人者達の姿。短カットで追い込まれて行く女子高生の姿を映し出す手法が斬新でありながら恐ろしい。現代のSNS社会の邪悪さと闇を描いた作品である。】
■ある朝のホームルームで、高校生・瞳(松林うらら)のクラス担任が未成年への淫行容疑で警察に連行された。
担任と性的な関係を持った相手が瞳だという根拠なき噂が学校内で流れ、周囲の男たちは瞳を性の対象として見始める。
そして、徐々に精神的に追い詰められた彼女は、自ら死を選択し、列車に飛び込む。
◆感想
・非常に恐ろしい作品である。
今でもフェイクニュースは巷間に溢れているが、人間の哀しい性として、”他人の不幸は蜜の味”と言う習性に則ったが如く、瞳のフェイクニュースを笑いながら観て、彼女を阻害していく”仲の良い級友”達の姿。
・瞳の恋人ヒロキ(水石亜飛夢)も、瞳のフェイクニュースが流れた途端に、彼女との交流を断ち、別の女と付き合い始める。
ー その姿をプラットフォームで偶然見てしまった瞳が取った、哀しき行動。-
・ヒロキの先輩たちの、人間性の欠片もない瞳に対する行動も許しがたい。
・瞳の母(筒井真理子)も、マスコミの餌食になって行く姿。
ー 瞳たちが住んでいたマンションのガランとした寒々しい風景が、母に何が起こったかを雄弁に物語っている。ー
■最後半のベッドの上のヒロキが撮影したと思われる、瞳の映像はこの作品自体がフェイクである事を示唆しているのであろうか・・。
<SNSでの人権を侵害する書き込みは、今でも続いている。そしてそれにより、命を絶った人もいる。
個人的な意見であるが、無自覚なるSNSを介した殺人者に対しては、現行の刑法をもっと厳罰化して一罰百戒の法制度にするべきであると、思っている。
そうでもしないと、今作の瞳の様に、自殺した後でも心無い人達からの根拠なき噂を流されたりする風潮を止める事は出来ないのではないか、と残念ながら思わざるを得ないのである。>
snsの闇を明確に描写した作品
ある女子高生が自分とよく似たアダルトな動画が流れてしまってから、人生が一変してしまう
彼らは飢えたライオンではなく、ただの遊び半分だった
最後のこの言葉が、この物語を通して、監督が言いたかったことなんだろうなと感じた
snsで、間違えた情報が流れたら、それを止める術はない
例えば、間違ったガラケー女の顔が流出した時、いっせいに誹謗中傷の嵐になった
だからこそ、僕たちはその情報だけを受け止めるのではなく、よく考え、行動することが大切である
例え、自分が遊び半分の行為でも、
それはされた側に対しては、腹を空かせたライオンように感じてしまうのだから
デマ拡散により追い込まれていく少女
フェイクニュース全盛の現代社会の闇を描いている。ただワイドショーの再現VTRでもありそうな内容。このようなインディ系作品でありながら筒井真理子、菅原大吉、竹中直人ら一線級俳優陣が脇を囲んでいるのは素晴らしい。いつなんどき被害者になるかわからない。そんなことに備えるのはSNSやらないことなんだろうか?
題材は良かった
SNSと、高校生の感情の揺れや残酷さを題材にした映画で案外良かった。
さらーっと流れていく少し物足りない映像も
それなりに良かったかなぁ
これ、ピンポイントに映像にしちゃうと結構過激になる内容だもんね。
SNSや、報道での無責任発言
それがドンドン大きな問題へとなっていく様はこれからの課題かな。
それに踊らされる私たちも同罪か。
現在、コロナウィルスの報道。
トイレットペーパーまでの買い占めそれもデマによるパニック行動。
マスクに於いては転売が更なる品薄に拍車をかけ。
内容こそ違えど、群衆の動きは怖いと知らしめされた気がした。
最後にちょっと救いを入れたのはどうかな
少年たちが逮捕され、少女たちが補導(?)され、最後にちょっとだけ救いを入れて終わりにしていますが、これは無くして、全く救いの無いような終わりかたにしたほうが映画としては良かったのではないかと思います。でも、無理かな。
シーンの中にいろいろな小ネタ(仕掛け)があるような気がしますが、私には解読できませんでした。映画館のシーン、一瞬暗転するシーン、どのような意味があるか私には分かりませんでした。
映画の流れは秀逸で、短いカットを繋ぐ手法は見事です。無駄なカット、足りないカットがありません。ただ、ラストシーンだけは意図が分かりませんでした。
難しい映画です。機会があれば、もう一度見てみたいです。
今までで1番良くできている
この監督はデビュー作から追いかけてるが、今まではリアリティを独自の手法で追求するあまり、崩壊した作品という印象になってしまっていた。毎回賛否両意見がわかれ、日本では受け入れられないような作品だったが、海外では受け入れられてきていた。
今や海外に育てられた作品の監督という位置付け。
その緒方監督の作品がようやく日本で受け入れられるようになっただけでも、時代が追いついたのか、監督が追いついたのかは知らんが、新しい邦画の幕開けと言っても良いくらい。
不快感を描ける監督が日本には少ないので、不快感を追求していって欲しい監督の1人。
さて、作品はというと、とにかく胸糞悪くなる人は多いと思う。そのバツの悪さというか、気持ち悪さというか、それがリアリティに直結し、自分の居心地の悪さにつながる。ハネケにアルモドバルといったところを目指してるのかな?
独自のカメラワーク、採光設計、ワンシーン・ワンカット、ショット一つを見ただけで、この監督のセンスがわかる。今後が楽しみな監督だと思う。
全て自分に返ってくる
先生も友達も家族も彼氏も先輩も誰も助けなかったのに、死んだ途端にありきたりな演説垂らされてもね。
校長先生、竹中直人みたいな話し方するじゃんと思っていたら竹中直人だった。
瞳がどんどん追い詰められていくに連れて心がどんどん重くなっていく。
フラリと吸い込まれるような飛び込みに思わず目眩がしそうになった。
その後の報道合戦やメディアを見た一般人の言動はただただ怒りが湧いてくる。
感じる不快感は全て自分に返ってきて、それでも世も自分も変わることなく、たまに起こるセンセーショナルな事件をいいとこ取りで食い散らかして生きていくんだろうと思ってさらに嫌になる。
人の不幸は蜜の味とばかりに面白がり笑い集る人たちの顔が全部自分に見えた。
まあ誇張もあるし、マスをただ批判していればいいとも思わないけど。
本作は多方面への批判の意思が強く現れていると思ったけど、テンポ良くしっかり見せてくれるので面白かった。
自分も他人も色々受け入れて、これから何か感じ方だけでも変わればいいな。
一人がスマホのカメラ向けると何も言わずとも自然にみんな寄って入ってくるのがリアルで好き。
シーンごとの定点カメラのぶつ切りと切り貼りでほぼ構成されていて、ちょっとしつこいなと思ったけど段々癖になってくる。
日常感が強く、瞳の生活を覗き見しているような作品の中に投げ込まれたような感覚になった。
先生の逮捕を受けて教室中が色めき立つ中ずっと机に伏せてる人がいたり、仲良しグループでもチクリと刺すものがあったり、家の中の散らかり具合、一つ一つの会話のテンションなど徹底的にリアリティを追求しているのが伝わってきた。
救いも何も無いけど、机の落書きを消す場面での友達の反応の速さはグッと来て好き。
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