「古き良き時代 差別社会の中で見た愛 最高のファンタジー」シェイプ・オブ・ウォーター R41さんの映画レビュー(感想・評価)
古き良き時代 差別社会の中で見た愛 最高のファンタジー
ファンタジーを当時のアメリカ音楽と合わせて紡いだ美しい物語。
タイトルに誰もが首をかしげるが、最後にその答えがわかったとき胸が熱くなる。
ロッキーに出てきたエイドリアン風なイライザ。幼い時のけが、トラウマで声が出せない。
当時の欧米では相当数存在した孤児の一人だ。
身寄りも声もない彼女は、心優しい友人らによって細々と暮らしていた。
隣の部屋に暮らすのは、売れない絵描き。彼のための食事を賄っている。少なくとも、彼女の周囲では差別的な行為はないものの、一旦外に出れば、店でもカフェでも差別の応酬、そういう時代があったのだ。
UMAである半魚人をモチーフに、彼との心の触れ合いを描いている。
彼女に与えられる仕事が掃除。その舞台が航空宇宙局という特殊な場所。そこに運び込まれてきたのが得体のしれない生物だった。
イライザには他人の心がよくわかる。特に自分に対して差別的な言動はすぐにキャッチできる。その彼女は、人間が傷つけようとしている半魚人の心を読み、彼女自身心を寄せる。
「声も出ないし、美人でもないし、貧しい私を、彼は何の偏見もなく観てくれている」
これが彼女が感じたことで、彼を解剖しようとする局から逃がす決心をした理由だ。
選択は2つ 助けるのか、知らぬ顔をするのか?
そしてこのような選択を迫るシーンがいくつか出てくる。
絵描きの男は彼女の協力を拒んで、再就職のチャンスへと向かうが、冷たい言葉であしらわれていつものカフェに行く。絵を誉められうれしくなったが、黒人は座るなという彼の二面性、そして男の手に触った行為が誤解され、席を立つ。
そういう社会を改めて突きつけられた絵描きは、彼女の申し出に力を貸すことに。
冷戦時代宇宙が先進国の証とされ、アメリカとソ連がしのぎあいをしていたが、ソ連のスパイが航空宇宙局にもいた。
彼らは経緯でイライザと利害が一致。これによってイライザは目的を達成した。
映画は様々な謎が散らばっていて、その謎を紐解いていくと、イライザとはいったい何者だったのかというものが見えてくるような気がする。
これは監督らの設定が巧みで、だから様々なアイテムや登場人物たちの言動に矛盾がない。
しかしこの美しい物語はそんなことを気にして見る必要もない。
主人公である彼女が撃たれ、半魚人は彼女と海に飛び込む。その後は絵描きがナレーションを務めることで、その後の物語は彼の想像になる。という見方もできる。
彼女が川で助かった過去、首の傷がエラに変化したこと、見えないものを感じる心、本当に大切なものは目には見えない…
エライザがもし人間世界にやってきていた人魚姫なら、あの冷戦時代に、目に見えない美しいものが人間世界から消えたのかもしれない。
このような作品が、我々に何か大切なことを伝えてくれているのだろう。
論理的に深く考察されるのですね。
私もとても好きな作品で、茹で卵を半魚人に分けてあげるシーンとか、
ユーモラスの感じられました。
ラストは究極のハッピーエンドに思えました。
(言葉足らずですみません)