劇場公開日 2018年3月1日

「変幻自在の水と、外見を覆う緑、あらゆる生き物が流す血の赤が際立つ」シェイプ・オブ・ウォーター ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0変幻自在の水と、外見を覆う緑、あらゆる生き物が流す血の赤が際立つ

2018年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

水には形などない。変幻自在で、私たちはそこにどんな想像力も、感情さえも投影できる。だが今の世の中、水を見つめるように人の内面を見通すことがどれほど可能なのだろう?肌の色、宗教、国、外見、服装、貧富の差。我々を取り巻く色眼鏡は数多い。その点、半魚人と、声を失った女性とのラブストーリーは、まるで互いの中の「水」を見つめ合うかのように、あらゆる衣を脱ぎ去った無垢なる姿に満ちていた。

本作は「緑」で満ちている。研究所の薄暗い明かり、清掃係の制服、パイ、新車、噛み砕かれるキャンディ、それから絵描きは「もっと緑を足せ」と要求される。半魚人の体も緑、だがイライザはその奥を見通す。

それでいて誰もが等しく赤色に染まるのも印象的だ。何かに目覚めたヒロインの服装も赤。さらにその全てを飲み込んでいくのはまた水。人々はそういった揺り戻しを寄せては返す波間のように繰り返しながら、歴史を重ねているのかもしれない。

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牛津厚信