劇場公開日 2018年3月1日

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「真に美しい愛の物語。これが本当の『美女と野獣』」シェイプ・オブ・ウォーター ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0真に美しい愛の物語。これが本当の『美女と野獣』

2018年3月3日
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素晴らしい!これこそ俺が本当に観たかった『美女と野獣』!野獣がハンサムな王子なんかに変身したりしない真に美しい愛の物語。「物語」が過酷な現実に救いをもたらすことを描いてきたギレルモ・デル・トロの到達点!あまりにも甘美な結末に冗談じゃなく心が震えた!

オープニングから流麗なカメラと水中を漂うような音楽で一気に世界に引き込まれる。演出的にもモノクロ映画やサイレント映画からミュージカル映画に至るまでのあらゆる映画的技巧を総動員してこのおとぎ話を絶妙なバランスで成立させていると思う。アカデミー賞13部門ノミネートも納得の完成度!

主演のサリー・ホーキンスが最高。美女ではないという設定やけどあのチャーミングなこと!「彼」と抱き合った状態でリチャード・ジェンキンスに微笑んだあの顔はやられる!マチズモの権化(『美女と野獣』でいうガストン)を演じたマイケル・シャノンも流石。モンスターはお前の方だと誰もが心で叫ぶはず

「彼」もとい「不思議な生きもの」がキリストを思わせるあたりは『E.T.』(それでいて結末は真逆の『未知との遭遇』)。というか「不思議な生きもの」とE.T.はほぼ同一人物といっても過言ではない。『E.T.』が好きな人にも絶対オススメ!これは「この子は悪くないのに!」モノの新たなマスターピース!

『シェイプ・オブ・ウォーター』は「つらい時代のためのおとぎ話」として構想が練られ始めたらしい。出演者のマイケル・スタールバーグは「冷たい世界の美しい物語」と本作を表現した。物語は過酷な現実に救いをもたらしてくれる。平たく言うとしんどい時でも元気が出る。映画を観る意味はそこにある

『シェイプ・オブ・ウォーター』の"The others"に対する優しさを知ってしまった後では『グレイテスト・ショーマン』のそれが浅薄なものだったと感じてしまう。確かに"This Is Me"と力強く歌い上げる様は素晴らしかったけど逆に言うとそれしか言わせてもらえてないというか…

『シェイプ・オブ・ウォーター』と『パンズ・ラビリンス』は姉妹のようなもの。どっちも最高

ヒートこけし