「不美人中年必見のラブファンタジー」シェイプ・オブ・ウォーター だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
不美人中年必見のラブファンタジー
美女と野獣は大好きですが、結局美男美女やんか、とは思ってました。ちょっとね。
ダサい女たちや、冴えない女が見初められる的な恋愛ものにしたって、アンハサウェイ(プリティプリンセス、プラダを着た悪魔)やらサンドラブロック(デンジャラスビューティ)がダサくてガサツなモテない女として頑張っても、やっぱ結局中の人、美人やん?
ちょろっと眉毛抜いてお化粧したら絶世の美女ってさ。
美人すぎない役者が美に頼らず、愛し愛される物語を欲していました。ひそかに。
そんな私にうってつけっぽいシェイプオブウォーターです。楽しみにしていました。うん、ほんと良かったです。
わたしの仲間(不美人中年ひとりもの)はみんな見たほうがいいと思いました。
サリーホーキンスは最近とてもよいなぁと思っていて、ブルージャスミンのジンジャーが良かったし、パディントンでもとっても良かったし、僕と世界の方程式も大好きで、シェイプオブウォーターでもよかったです。モードルイスの幸せの絵の具もみようと思っています。
監督が美人を主役にせえという映画会社の圧力を受けないために、結構自腹で映画作った話、かっこええなと思いました。
ギレルモデルトロさんの映画は初です。パシフィックリムとかは絶対見ない類のジャンルなので私に関係ないと思っていましたが、ジャンルで切り捨てちゃダメですね…今回見られてよかったです。グロいらしいけどパンズラビリンスみよっか、な?
結構ユーモラスで、そしてグロテスクで、幻想的でうっとりしました。
イライザの自慰シーンが何度もでると聞いていて、非婚中年女性の性を普通のものとして描いてくれてるなら嬉しいけどどんな風に?と思って注目してしていましたが、卵タイマーの後ろでピンぼけ、という描写で、うーん…と思いました。
がっつり正面から映してくれってことではないですが、ただあれじゃ察しの悪い人には何だかわからない。
でもあれが限界なのかもとも。
1962年がどんな時代かはあまりわかってません。
冷戦真っ只中なのはわかる。
キューバ危機前?後?くらいな感じですが大丈夫です。
精神的に抑圧が強い時代だという認識で良いかと思います。
ロシアのスパイの研究員の人が、多分君の名前で僕を呼んでのエリオのパパ役の人じゃないかな?最近よく見ます。
彼もなんだか切なかったです。
イライザは声が出ないけど、辛いこともいっぱいあるだろうけど、毎日に楽しみを見出して生きています。窓を走る雫をうっとり眺めたり、ミュージカルの主人公になった想像で楽しんだり。ああいう空想が支えになるんだよね。わかる。
そしてイライザは強い。マイケルシャノンにどやされても負けないし、手話でFワードでやり返すし、大好きな彼を助けようと大冒険するし、めちゃかっこいい。
女で、孤児で(イライザは孤児の苗字をもっているそうです)、障がいがあって、黒人で、老人で、ゲイで、少数派、という人たちが、
男で、強くて、白人で、体制側の人たちに、立ち向かって、「人間」である彼を助ける訳です。
やー、興奮しないでいられようか。わたしもイライザだし、ゼルダだからさ、みんなの戦いを応援しましたよ。
そして人間の定義について、今も考えています。
イライザにとって、あのふしぎな生物は人間のなのです。
彼を助けないなら私たちは人間と言えるのかという旨の発言をします。人間としての境界に否が応でも立たされてきたイライザのこの言葉は、ずんと心に突き刺さりました。
彼は、最初はヌメヌメ感にギョッとしましたが、外見は見慣れるます。最後には可愛く見えました。つか美しい目にわたしもメロメロに。
イライザと彼とのラブシーンは、とてもロマンチックに思いました。うっとりです。
はみだしっ子たちが傷を癒し合う様に寄り添い、やがて愛し合うというプロットは、たぶんわたしが自分に訪れることをずっと待っている筋書きなんだと思います。
なので、そういう流れにはもう、だいぶやばいです。
ラストシーン、首の怪我がエラに変わったイライザは、あのまま彼の住む世界で幸せに過ごしたと思っていていいのでしょうか?
そこが確信が持てなかったのだけど、そう信じていようと思います。たぶん隣人のかつらの画家さんもそう思っているはず。
イライザの性的日常をもっと踏み込んで!ってところと、猫の首バッサーが辛かったので4.5です。