「ジョージ・ルーカスは言っていた」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョージ・ルーカスは言っていた
ジョージ・ルーカスは言っていた。
「スター・ウォーズ」はスカイウォーカー家の物語なのだ、と。
そう、1〜6はその通りで「血統」の物語であった(フォースはある程度遺伝する、というミディ=クロリアンの設定もあり)。
しかし、そうだとするならば、人は「生まれ」によって人生が決まる、ということにならないか。
本作におけるレイの葛藤は、「生まれ」か「自分の意思か」にある。
カイロ・レンは彼女に「運命に身を委ねよ」と呼びかけたが、レイはこれを拒んだ。
困難があっても、彼女は意思を持って自分の人生を選んだのだ。
そしてラスト、「スカイウォーカー」を名乗って「生まれ」をも超越した。
これこそ、本作が伝えたかったメッセージではないか。
本作で登場したスターデストロイヤーは惑星を破壊するほどの威力を持つ巨大なレーザー砲を、艦の底部に装備している。
これは男根の象徴ではないか。
シスによる支配は、まさしく世界を力づくで蹂躙するレイプのような行為であり、これに対して最後、女性のジェダイであるレイが勝つ、という点にもメッセージを感じる。
勝利に沸く反乱軍の群衆シーンでは女性同士のキスシーンがあったし、ポーとフィンの関係にも単なる友情ではない、もう少し複雑な感情があるように感じた。
トランプ政権後、人種(生まれ)差別やジェンダー、セクシャリティの問題が、明らかな排除やヘイトを伴って取り上げられることが目立っていると思う。
いくらテクノロジーが発達しても、人類はこうした問題を解決出来ていない。いや、インターネットというテクノロジーは、差別を助長することにも使われてしまっている。
「スター・ウォーズ」の世界もしかり。強大なパワーやテクノロジーを手にした「帝国」は、どういう社会を作るのか。
ラスト、エクサゴルの空に次々と出現した反乱軍への援軍。これは作り手の、作中の帝国支配や現実社会の人種や宗教、ジェンダーなどの差別に対する強烈な拒否感を表していると感じた。
第1作「新たなる希望」の公開から42年もの年月を経て完成した完結編。
上記のようなメッセージは極めて現代的であり、「スター・ウォーズ」もまた、時代とは無縁ではないのだという感慨を持った。
イウォークが出てきたり、ラストシーンがタトゥイーンだったり、水中から浮かび上がるXウィング、廃墟のデス・スターなど旧作へのオマージュも悪くない。
この3部作では、オリジナル3部作の主要キャラクターが1人ずつ命を落としていくことになったのだが、レイアの死を知ったチューバッカの、1人残された悲しみは胸に迫るものがあった。
細かい点ではツッコミどころはあるものの、「スター・ウォーズ」サーガの完結編としては(あの前作を受けて、ここまで話を収束に持っていったという点も含めて)概ね満足。