「見られたものではないので見てはいけません!」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
見られたものではないので見てはいけません!
そう言われると逆に見に行きたくなっちゃうんですよね、それが人間ってもんです。
自分もそう、まぁそうじゃなくてもスターウォーズってだけで無条件に見に行くんです。
でもこの映画、スターウォーズにはあったはずの"魂"が感じられませんでした。
だからルーカスの過去作を模倣した"コピー"にしか見えない。
そこが1つの作品として、自分には決定的に合いませんでした。
⚠️以下レビューとなります。思い入れの強いシリーズ故、かなり辛口な上に感情的になってしまい客観性に欠けたレビューです。それでも長文に付き合っていただけたら幸いです。
初日レイトで観てまいりました。客の入りは8割、男女比はちょうど半々といったところ。
当方スターウォーズのファンを25年ほどやっています。ルーカス6部作はもはや血肉と言って良いほどの作品であり、映画人生の原点と言って良いほど思い入れが強くあります。
ただしエピソード7以降は次第に違和感が強まっていき、前作8でそれは決定的な物に。
今回の9も期待値低めで見に行きました。
ですがその期待値をも下回る作品だったので非常に残念と言わざるを得ません。
過去作を数値化して比較するとこんな感じです。一つの参考にして下さい。
Ep1〜6.★★★★★
Ep7.★★★
Ep8.★
Ep9. ★☆
あの劣悪なエピソード8と比較して相対的にマシなので良いレビューが多いのかもしれません。が、それは感覚が麻痺してるんじゃないかとさえ思えてしまいます。
以下問題点を列挙していきます。
①劣悪な脚本
前作で壊滅的になったストーリーをつなぎ止める為に、あろう事か全ては過去のキャラクター(ネタバレのため伏せます)の暗躍による物だったと後付けで統括。
そしてその誘惑を断ち切る終盤の展開は、ジェダイの帰還と全く同じです。新しい要素が一切ないし、取ってつけた展開でこれまでの伏線をねじ伏せています。
基本的なストーリー進行もEP8から殆ど解消されていません。
惑星に飛ぶ→アクシデントが起こる→捕まる→"偶然"出会った仲間に救われる→
基本的にこの繰り返しなんで、ストーリーがどう進もうがご都合主義にしか感じられず、ドラマの厚みも全くない。
だから何か大変な事態に陥っても
「奇跡が起こってどうにかなる」と思えてしまう。
そして実際その通りどうにかなる。
つまりこの"奇跡"とは、"偶然"や"脚本家の都合"の読み替えに他なりません。
故にハラハラもドキドキもしない、全ては予定調和。2時間40分この調子なんで眠くなります。
②過去の遺産に縋ったガジェット
本作では過去のガジェットが多数登場します。スターデストロイヤーにXウイング、TIEファイター、終盤に登場するこれらビークルは多くが過去のサーガの物。新サーガ用にデザインされた物ではありません。
エピソード8でこれまでのサーガを否定した事に対するネガティブ評を意識したのでしょうが、オールドファンに対する目配せばかりでは新鮮味がまるでありません。
遂に新サーガは3部作を経てフレッシュなデザインのビークルが登場する事はありませんでした。
ビークルのみならず、ロケーションや衣装、ストーリーに至るまでフレッシュさに欠けています。
全て過去の優れたデザインからの"流用"や"亜種"に過ぎず、一次創作とは言い難い物になっています。
全てデッドコピーなのです。
③肥大化するフォース描写
Ep8ではレイアが宇宙空間を宇宙服なしで飛んだり、ルークが幽体離脱してライトセーバー戦を挑んだりと、これまでの設定を逸脱した演出が不評でした。
本作でもこれらのフォース描写は健在。
瀕死のクリーチャーや人間を"手かざし"で治癒し、飛び交うタイファイターをセーバーで切断し、更には飛んでいる輸送船を止めたりと何でもありです。
いくつかのフォースの描写は過去にも断片的にありましたが、これをロクに訓練を受けていないレイがやってのけるのが問題。
彼女は全方位的にフォースを使いこなすので、相対的にこれまでの歴代ジェダイ達が凡人に見えて仕方ありません。
あるキャラクターに至っては宇宙艦隊そのものを単独で壊滅寸前まで追い詰めています。
フォース描写がインフレ起こし過ぎて、ジェダイ最盛期のフォース戦がなんだっのか、もはや分からないことになってしまっています。
④ダークサイドの拒絶
本作ではレイの出自が明かされ、彼女のルーツが見えてきます。その過程でこんなエピソードがありました。
流砂から地下に転落してしまったレイ一行。そこは巣であり、大型のクリーチャーが牙を向いてきました。これまでのスターウォーズならライトセーバーで無効化する所。
…ですが、レイはそうはせずにクリーチャーに向き合うのです。そして怯えるクリーチャーの傷を見つけるやフォースで治癒し、道を譲ってもらいます。
例えるならジブリにおけるナウシカのような共生の象徴として描かれます。
その後の伏線でも分かりますが、レイはジェダイとシス、正義と悪、それらを決めつけずに双方の心情を汲み取ろうとする姿が見られます。
ですが本作終盤では、それらを切り捨てるのです。彼女の生まれた環境や出自、そして伏線かと思わせたエピソードで匂わせながら、結局はシスを悪と断罪し切り捨てる。
これではレイというキャラクターが活きないだけでなく、過去のサーガの否定にも繋がりかねません。
⑤過去のサーガの否定
最大の問題はこの作品そのものが「アナキンの人生の否定」になってしまっているという点です。
エピソードⅠ〜Ⅲを経てシスになってしまったアナキン。彼がエピソードⅥでジェダイとしてパルパティーンを打ち倒し、予言通り「フォースの調和をもたらす」。
これがルーカスによるスターウォーズサーガです。
が、これを本作は真っ向から否定しています。なにせ打ち倒したはずのキャラクターを復活させ、フォースのバランスの均衡が再び崩れるわけですから。しかも、あろう事かエピソード8からの辻褄合わせの為に。
これはディズニーによるスターウォーズの"私物化"の際たる例と言えるんじゃないでしょうか。本作はサーガのあり方を歪ませてしまいました。
まだまだ語り足りないですが、ひとまずこの辺りでまとめたいと思います。
スターウォーズの何を愛するかは人それぞれです。私は少なくともジョージ・ルーカスの"作家性"込みで作品を愛している事を改めて実感しました。
その為、この後も続くスターウォーズユニバースの拡張に懐疑的な姿勢は変わりません。
ローグワンやハン・ソロのようなスピンオフならともかく、ディズニー資本でルーカス以外の監督が本伝たるサーガを作るのはここらへんでやめて欲しいのが本音です。
ルーカスが作った神話を読み替えた時点で、それはオリジンではないのですから。
共感してくれる方がいて嬉しいです😃 やはりルーカスありきのスターウォーズ、表層なぞってサーガを語らないで欲しいですね。ネタバレ変更しておきました。
いやぉもうおっしゃる通り!としか言いようがありません。このレビューを読んで私もルーカスの作家性が好きでスターウォーズを愛していたんだということが分かりました。結構ネタバレを含んでいますのでネタバレ注意に変更された方が良いかと。