「すべて終わらせる→全てやり直すに変えて」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け REXさんの映画レビュー(感想・評価)
すべて終わらせる→全てやり直すに変えて
場当たり的な制作陣たちによる一貫していない新シリーズの綻びを、なんとか修正した形。
レイの出生の秘密は明かされるも、前二作とのつながりから唐突感は否めず、また、その設定ならば、エピ7からいくらでも違う展開をみせられたはずなのでは?と思わざるを得ない。
期待したランドの登場も地味。エピ8のローズ(私は嫌いではない)は、まるでいないかのような扱い。新たなキャラ、ジャナもフィンに心寄せる。フィンってそんなもてキャラ?
全編、エピ8が必要だったのか?と思わせる慌ただしさ。
完結して思う。
キャッチコピーを「全てやり直せ」に変えたい。3作一貫したストーリーがないのなら、作るべきではなかった。各エピソードの納得できない部分を振り返ってみようと思う。
●エピ7
・エピ4の焼き直しのようなストーリー
・カイロ・レンの軟弱さ
・フィンが使いこなしてしまうことにより、ライトセーバーの扱いが軽くなってしまったこと
・戦いに勝った側が30年後に窮地に陥っていることで、エピ4~6(そしてローグワン)の出来事がまるで意味がなかったかのような喪失感
・政治を行う場面や交渉シーンが一切無いことで、レジスタンスの規模が非常に小さく感じ、それに伴い世界観の小ささも感じた。
●エピ8
・ルークの隠遁の酷すぎる動機。弟子を闇討ちするような性格に変えたことへの憤り
・レジスタンスの杜撰すぎる計画。冒頭の爆弾輸送船ののろさ。輸送船なら脱出がばれないからと旗艦船廃棄しておきながら、向かう星が丸見えなのでバレバレ。
・レイが何者でもなかったことへの憤り(この時点では)
●そして今回
・おしゃべり大好きパルパティーンは、レイをなぜ殺したがったのか?
古来、シスは弟子と行動するとされてきた。レイが孫であれば、最初からレイをダークサイドに取り込もうとしてもおかしくない。素材としてはレンよりレイのほうが勝っているのに、レイを諦めるのが早すぎる。それにより、レイに自分を殺させてレイを乗っ取るという計画が思いつきにしかみえない。
また、レンとレイをフォースコンタクトで結びつけておいて、自分が窮地に陥る間抜けっぷり。何のためにレイとレンを結びつけたのか。
・・・やはり、エピ7制作時にはそういう設定ではなかったのだろう。だから行動に一貫性が全くない。かつて最高議長だった頃の、用意周到なパルパティーンからは想像がつかない。
そしてパルパティーンはいったいいつ子供を作ったのか。理由はなぜか。最高議長の時代なのか。子供はフォースの片鱗も見せなかったのか。妻は誰か。
・フォースの拡大解釈・・・物の瞬間移動とか、傷を治すとか、命を与えるとか、エピ8から引き続きもはや何でもアリに。シスの「死を欺く術」が生命力を吸い込むことだと仮に設定するとしても、修行が足りずジェダイでもシスでもないレイやレンが、その応用術を使えてしまうことに、言葉がでない。行き当たりばったりの脚本といえよう。
また、幽体のルークがXウィングをフォースで持ち上げられるのなら、ジェダイ総出演でパルパティーンに立ち向かえばいいじゃない。フォースは魔法じゃないんだぞ!
●ぶれぶれのカイロ・レンを振り返る
・マスク修理したのにほぼ被らない
・レイにしつこくストーキング。挙げ句「おまえの力を試した」とかのたまう
・レイとの二戦目、腹刺され「殺せ」と開き直るも、「私はおまえとは違う」とフォースで傷を治してもらうという屈辱を受けた直後、今更のように母親と父親のことを想い改心する
・レイを助けにパルパティーンの元に向かうも、自分のライトセーバーを捨てたので、レン騎士団にリンチされる。
・・・どうしてもレイアのライトセーバーを使わせたかったのかもしれないが、皇帝に対して丸腰で乗り込むとかありえない。レン騎士団との戦いで落としてしまって、レイが渡すという流れでも良かったのでは。
・なんでレイに対して両親は酒のためにおまえを売ったと嘘をついたのか?→脚本変えたんだなという制作陣の裏側が透けて見えて興ざめ。
そもそもレンが憎んでたのは両親じゃなくてルークだけでしょ?そんなの母親を殺せなくて当然だし、ルークへの反発だけで帝国に寝返るとか幼稚すぎる。彼に目的や理想がなさすぎる。
あっさり星を破壊したり、カイロ・レン憎しで情報を反乱軍に渡していたハックス将軍の方が、よほど一貫した人間といえる。弱いけど。
「パルパティーンの孫」「ハン・ソロとレイアの息子」という最高の素材を手にしながら、発展性がなく、キャラクターの動機づけが不十分な脚本にしかできなかったのが、本当に謎であり、もうちょっと娯楽性に富んだものにできなかったのか残念を通り越して失望。
もちろん誰もが納得できる脚本にするのは無理だとは思う。だが、新三部作は、未知の話に誘われるワクワク感というものが全く無かった。うだうだしてるレンを延々と見せられた感じ。
レンとレイの恋愛が軸になるもはいいのだが、これだったらレイの両親を殺したのは共和国側で、レイは暗黒面に落ちてしまい、共和国側にいた自信過剰な青二才のベン・ソロがレイに恋してしまって、暗黒面に落ちたレイを命を賭してレンが助けるというロミオ&ジュリエット的な完全恋愛映画でも良かったのじゃないですかね。
また、コルサントやナブーや、他の星の様子や統率者たちがほぼ出てこなかったことが、STAR WARSの多様性や世界観を縮めている。グリーヴァスやドゥークーのような魅力的な悪役が皆無なのも、痛手。
エピ8の異質感が残って7、9はまるで心に残らなかった。本当に、何年も楽しみに待った挙げ句これか、と虚脱感に襲われた新三部作であった。