「ペプシコーラをがぶ飲みした思い出」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け アストロ温泉さんの映画レビュー(感想・評価)
ペプシコーラをがぶ飲みした思い出
マズ・カナタはなぜルークのライトセーバーを持ってたんだろう?とか、8のラストでフォースでほうきを引き寄せた少年は……?とか、スノークがクローンなのはいいとして、なぜそいつが最高指導者にまでなれたのか?とか、結局フィンはレイともローズとも中途半端な関係のままだな、とか、とか、とか……。
全体的に足りてないと感じる部分がかなりたくさんあったんですが、たぶん問題はそこでは無いんだと思う。
今より長大な上映時間を使ってそれらをすべていちいち細かく説明して、完璧な整合が取れていたとしても、『スカイウォーカーの夜明け』がいま以上におもしろい映画になったとは思えない。問題はそこでは無いんだ。
なにか、昔の思い出のビデオとかアルバムを見ているような気持ちになってしまった。
予想していた訳でも知っていた訳でもないのに、レイがパルパティーンの孫だと聞いても驚けなかった。
ランド・カルリシアンの登場にしても、ランド・カルリシアンが出てきそうだな、という場面でランド・カルリシアンが出てきて、うん、なるほどね、と感じるだけだった。
なにか「なるほど。」「うんうん。」「納得ですね。」が続くばかりで、「うわ!まじかよ!!」「えっ!すげぇ!!」「ひぇー!そう来るか!!」みたいに激しく心が動くことがあまりなかった。
「最終回」だからしょうがないのかもしれないけど。
私は4、5、6が公開された頃には生まれておらず、1997年の《特別篇》で初めて『スター・ウォーズ』に触れた世代です。
人生でいちばんスター・ウォーズへの情熱が燃え上がったのは『エピソード1』公開直前で、当時はボトルキャップフィギュア欲しさに友だちと競いあってなけなしのおこづかいのすべてをつぎ込んで、げぼ吐きそうになるまでペプシコーラを飲みまくりました。
今、いい歳をしてはるか彼方の銀河系の物語に一喜一憂している人々には、多かれ少なかれこういった思い出があるんじゃないでしょうか。
人によっては集めたのがコカコーラの王冠だったり、Tシャツだったり、おもちゃのライトセーバーを振りまわしたり……、何も集めてはなくてもドキドキしながら映画館に通ったり……、「おもしろい映画だった」とか「好きな映画のひとつだ」とかでは言い表し足りない、なにか特別な気持ちがあるからこそ、この『スター・ウォーズ』というシリーズの新作の出来に笑ったり泣いたりしてしまうんじゃないでしょうか。
そして、スタッフとしてこの映画に係わった人たちのそれもまた、凄まじいものがあったのだろうと想像します。
J・J・エイブラムス監督はこの映画を作ってて楽しかったのかな。
2015年の『フォースの覚醒』の予告を初めて観て、砂漠を猛スピードで転がるBB-8を初めて見たときに私は、ペプシコーラをがぶ飲みしたあの夏を確かに思い出しました。
一介のストームトルーパーがヘルメットを取り、「フィン」という名前を得た時。反乱軍パイロットのポーが「1度操縦してみたかったんだ!」とTIEファイターを飛ばした時。レイが何十年もガラクタになっていたミレニアム・ファルコンを見事な腕前で飛ばし、宙返りを決めた時、私はスクリーンを通してJ・J・エイブラムス監督からの強い「フォース」を感じました。
しかし、『スカイウォーカーの夜明け』からはあまりそれを感じられなかった。「ぜんぜん面白くなかった」とかではないんですが……。
「チューバッカが死んだ!」という瞬間にも「ドッキリでした〜!」という時にも、アイハブアバッドフィーリングアバウトディスするだけで、それをあまり面白いとは感じられなかった。
ただ、私はこの映画を批判したくはないです。
ハン・ソロに、ルークに、レイアに、そして「スター・ウォーズってほんとは9部作だったらしいよ」っていつまでもウワサし続けるファンに、ファンメイドの同人誌であれ、ちゃんと「帰る家」をあたえ、終わらせてくれたことには感謝したいです。
それだけで、いやそれも含めた『スター・ウォーズシリーズ』という一本の映画として星は5つあげたいです。ありがとうございました。
(ディズニー社がいくら「公式だ」と言ったところでディズニー社自体がスター・ウォーズにとって公式じゃないんだから「ファンメイドの同人誌」に過ぎないとは思う。)
(あと、私はキャリー・フィッシャーが亡くなっている事を知っていたからか、『スカイウォーカーの夜明け』のレイアにすごく違和感を覚えてしまったんだけど、亡くなった事を知らなかったら普通に観れていたんだろうか?)
(あ、あとラストにイウォーク出すならジャー・ジャー・ビンクスも出してよ!どんなに不評だったとしてもアレも「おれたちの世代のスター・ウォーズ」なんだよ!)
この『続3部作』が作られた事はまったく無駄ではなかったと思うし、私はこれはこれでよかったんだと思ってもいるんですが、うーん、映画として面白くなくてもいいから、やっぱりジョージ・ルーカス皇帝が作ったエピソード7・8・9を観たいな……。あのお方はきっとまだ死んでないし。