「名も無きレイが、名前を勝ち取る物語」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
名も無きレイが、名前を勝ち取る物語
公開日に観ました。
むっちゃ夜が明けました。
納得できない部分もありますが、総合的には新3部作、全9部作の完結編として、満足しました。
以下に4つに分けて感想を書きます。
1. 血と伝承と絆の物語
2. マザコンだった(?)カイロ・レン
3. 前作の無かった事感
4. やっぱり John Williams
1. 血と伝承と絆の物語
Star Wars は血の物語。
宿敵が父と明かされた Episode 5 の終盤で、幕を開けたスカイウォーカー家の物語。
Episode 6 のラストでは、朋友が妹に。
Episode 1-3 も、スカイウォーカー家の始まりを告げる前日譚。
しかし Episode 7 からは、スカイウォーカーの血を継ぐレンは宿敵に。
加えて、新たな主人公のレイは、素性知れず。
Episode 8 では、宿敵に "取るに足らない(insignificant)親の子" と断言される。
しかし、本作で真の素性が明かされる。
レイは、ジェダイの真の宿敵パルパティーンの孫だった。
ただ、精神は必ずしも血統に支配されない。
"親に捨てられた" レイが出会ったのは、レジスタンスの仲間達。
反目したまま袂を分ったが、ルークの遺志もレイを "最後のジェダイ" として成熟させた。
一方、ライトサイドを選ぶことは、(ハリポタ終盤のヴォルデモートみたく)生気を取り戻したパルパティーンと対峙するには不利。
何故って、相手が巨悪であっても、憎しみと殺意に満たされると、ジェダイも暗黒面に堕ちてしまう。
パルパティーンの勝利は、相手を殺すことではなく、相手に自分を殺したいと思わせること。
殺意に殺意で立ち向かえない無理問答。
それでも、霊魂として宇宙に満ちるジェダイのフォース(理力)が、レイを奮い立たせる(ジェダイ的元気玉)。
そして、パルパティーンの殺意を跳ね返し続けることで立ち向かう。
正直、ジェダイの勝利も、レジスタンスに大援軍が駆けつける大団円も、予定調和。
真のラストはそこではなかった。
ルークの故郷タトゥイーン(太陽が2つ)を訪れたレイは、名を尋ねられ"レイ・スカイウォーカー"と応える。
それは、血統の呪縛から逃れ、自ら選んで勝ち取った名前。
血統も伝承も、最終的には個人の選択次第。
人生に大きな影響を与えるのは、やはり絆。
2. マザコンだった(?)カイロ・レン
と、レイを主軸にした物語は良かったんですが、宿敵レン君の変節には困惑しました。
無論、ライトサイドへの復帰という展開自体は、予想の範囲内だし、過程さえ丁寧に描かれれば、有りよりの有り。
ただそのキッカケが、死に際の母が送った念というは...。
念の中身も語られないし、母の死自体がショックだったとしても、闘いのさなかに剣を落とすものでしょうか?
レイに命を救われたせいなのか、そもそもレイへの執着が恋心だったのかもしれなけど、もうちょっと納得いく形の過程を描いて欲しかったです。
勿論、レンはそもそも誰にも従いたくなく、パルパティーンでさえ亡き者にして、乗っ取るつもりでいたでしょう。
とは言え、記号的にもライトセーバーは青に変わりました。
やはり、ライトサイドに復帰という設定なのでしょう。
その最大のキッカケが、本当に母レイアからのメッセージだとしたら、結局マザコンだったん?と思っちゃいました。
3. 前作の無かった事感
一部のファンからだけでなく、制作したDisneyからも黒歴史扱いされてる前作 Episode 8。
公式イベントでも、前作は言及されず、無かった事にされる始末。
個人的には、終盤でルークが結構活躍したので、合格点のつもりでした。
でも本作を観た後では、J.J. Abramsが監督した Episode 8 も観てみたかったというのが本心ですね。
とは言え、前作で描かれたフィンとローズの恋の芽生えが、本作では完全無視ってのはいかがなものでしょうか?
合格点と言いつつ、自分が前作で納得できなかったのが、レイの素性の扱い。
Episode 7 では意味ありげに描かれていたのに、Episode 8 では "取るに足らない親の子" の一言で片付けられていました。
その発言も、本作ではパルパティーンの告白で完全否定。
ただ、レイの両親もパルパティーンを疎み、辺境での名も無き生活を選んだことも同時に明かされたので、一見矛盾しそうな前作の台詞を、上手く受けた形になっていました。
レイも、両親に捨てられたのではなく、両親に守られたのだと、確信できる展開になっていました。
4. やっぱり John Williams
Star Wars の劇伴は、全シリーズを通じて John Williams。
なので本作だけのことじゃない筈なんですが、今回特に聞き惚れちゃいました。
サントラファンで日常的に聞いてもいるのですが、オープニングのテーマ曲でめっちゃ高揚。
要所要所で流れる聞き覚えのある劇伴も、とことん快適。
エンドロールのテーマに再度胸アツ。
途中、ダース・ベイダーのテーマが挟まれるのも愉しく、本当の最後の最後まで、堪能しまくりでした。
2022年から新3部作が始まるという発表にも、期待してます。
"Game of Thrones"チームが制作するシリーズは、泥々した権力闘争が描かれそうで楽しみです。
戦犯扱いっぽい Rian Johnson の企画も死んだわけじゃないみたいですが、本当に実現するのかは、良く分かりません。
ただ、どんな作品でも確実に観に行きます。
新たな黒歴史になるかどうかは、目撃してから見極めたいです。